「ランチェスターの法則」を応用することで、薬剤の採用状況(シェア構造)を定量的に分析し、戦略的なフォーミュラリ選定が可能になると考えられます。以下にその考え方を整理し、実務での応用可能性を提示します。

ランチェスター分類による薬剤ポートフォリオの再評価フレーム

ランチェスター分類では、競争の構造(=シェア分布)を以下の4つの型に分類し、それぞれの市場構造に適した戦略(採用・維持・削減)を導き出します。

市場構造特徴課題と示唆対応策の検討
分散型上位製剤のシェアが小さく、接戦が多数選定根拠の曖昧さ、過剰採用の可能性絞り込み・統合を検討
三強型上位3製剤で6~8割のシェアを占有市場に均衡があるが、最下位製剤は不要な可能性採用薬を3つ以内に絞る余地
二強型上位2製剤が圧倒的なシェア明確な寡占構造3位以下の採用を見直し検討
一強型1製剤が7割以上のシェアを占有実質的な独占市場他剤は在庫圧迫要因、原則として削除を検討

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活用方法の例(病院薬剤部視点)

  1. 同効薬群ごとの処方実績データ収集・分析:
    • 施設内の同効薬群における処方実績(件数・日数)を集計します。
    • 各製剤のシェア(%)を算出します。
    • 算出されたシェアに基づき、ランチェスターの分類ルールに従って市場構造を判定します。
  2. 市場構造に応じた採用妥当性の判断:
    • 分散型: 「標準薬が不在」である可能性を検討します。
    • 一強型: 「その他の薬剤は本当に必要か?」という観点で見直しを行います。
  3. 薬剤選定見直し提案の薬事委員会提出:
    • 見直しの根拠として、「重複採用」「在庫管理の煩雑さ」「費用対効果」などの観点を整理します。
    • 必要に応じて、DXS Stratify®などのツールを活用し、他施設との比較データを示すことも有効です。

【3】DXS Stratify®との連携

DXS Stratify®を用いてランチェスター分類による市場構造分析の結果をマトリクス化することで、以下の点が明確になります。

  • 競争構造の可視化: 自施設の薬剤シェアが競合施設と比較してどのような位置にあるかを視覚的に把握できます。
  • フォーミュラリ再編の戦略的根拠: 定量的なデータに基づいた、より客観的な薬剤採用・削除の判断が可能になります。
  • 医療現場への説明責任: 薬剤の採用・維持・削除の判断について、客観的なデータを示すことで医療従事者の理解と協力を得やすくなります。

さらに、製薬企業側の競争強度やリソース集中状況といった外部要因を併せて検討することで、より客観的かつ論理的な意思決定が可能になります。

メリット

  • 属人的な判断に依らない、定量的な選定理由の提示が可能になります。
  • フォーミュラリの明文化と、その根拠に対する説明責任が強化されます。
  • 医師への提案においても、「使われていない薬」を数字で示すことができるため、高い納得感が得られます。

補足:一部例外の考慮

以下の領域においては、定量評価に加えて臨床的な必要性を総合的に判断する必要があります。

  • 治療指針やレジメンにより多剤選択が求められる領域(例:抗がん剤)。
  • 副作用・禁忌の回避のために複数の選択肢を残すべき疾患群。

結論

「どの薬剤を残し、どれを減らすべきか」という、これまで現場依存・属人的な側面が強かった課題に対し、ランチェスターの法則という競争理論の視点を導入することで、治療の質、経営効率、供給リスクのバランスを科学的に評価する基盤が確立されます。 これはまさに、フォーミュラリを「戦略として設計する」時代と言えるでしょう。