イノベーター理論は、1962年にエベレット・M・ロジャースによって提唱された有名な理論です。新商品やサービスの普及を、消費者を5つのタイプ、①イノベーター、②アーリーアダプター、③アーリーマジョリティ、④レイトマジョリティ、⑤ラガードに分類して分析するこの枠組みは、戦後の高度経済成長期における市場拡大を前提としたものです。

しかし今、日本は大きく異なる局面にあります。人口減少、少子高齢化、そして経済の長期停滞。市場はもはや自然に拡大するものではなく、限られたパイを奪い合うゼロサム競争の場となっています。こうした状況においては、かつて有効とされた「様子を見てから参入する」フォロワー型戦略が通用しなくなってきています。イノベーター理論は、その歴史的意義を認めつつも、根本的な⾒直しが必要な段階に達しています。

実際、現代の市場構造は、もはや正規分布ではなく、パレートの法則やべき乗分布といった“勝者総取り”の形をとっています。ごく一部の企業や商品に人気・収益・信頼が集中し、それ以外は淘汰されていく。このような環境では、従来の「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」に該当する層をターゲットとする戦略は、もはや市場に余白がないのです。

特に重要なのは、フォロワー戦略の機能不全です。「状況を⾒てから動く」という慎重なアプローチは、もはや合理的な戦略選択ではなく、市場からの排除を意味するようになっています。 現代において求められるのは:

1. 先⾏者優位の戦略的活⽤:初期段階での差別化と市場⽀配⼒の構築

2. 計算されたリスクテイク:不確実性を機会として捉える能⼒

3. 継続的イノベーション:⼀度の成功に依存しない持続的⾰新⼒

4. エコシステム思考:単⼀製品ではなく、相互連携する価値提案

この構造変化を前提とした新たな理論的枠組みの構築と、それに基づく戦略策定が、現代企業 の⽣存と成⻑にとって不可⽋です。

求められるのは、リスクを恐れず、誰よりも早く、誰よりも明確に差別化ポイントを示し、先行優位を築く戦略です。特に中小企業や新規参入者にとっては、出遅れた瞬間に勝負が終わっていることも少なくありません。もはや“様子見”は戦略ではなく敗北の予兆と言えるでしょう。

時代は、「待つ者」から「創る者」へとシフトしています。イノベーター理論が通用しない今、我々は新たな理論と行動様式を模索する必要があるのです。

現代の⽇本市場において、エベレット·ロジャースの市場縮⼩、デジタル化による勝者総取り構造、べき乗分布による極端な集中という三つの構造 変化により、従来の「段階的普及」モデルは現実との整合性を失っています。今後のマーケティング理論と実践の発展において中核的な課題であり、パラダイムシフトの必要性の根拠となるでしょう。


近年、日本の製薬企業は「国内赤字・海外黒字」という二層構造で生き延びてきました。国内市場は薬価改定やジェネリック促進で採算が取れず、海外、とりわけ高価格が維持できる米国市場での収益が、国内事業を支えてきたのです。しかし、トランプ前大統領が打ち出す政策は、この構造に根本的な揺さぶりをかける可能性があります。

最悪シナリオを想定すると、米国での薬価が「最恵国価格政策」により30%引き下げられ、さらに米国向け輸出には20%の高関税が課される。加えて市場多角化や効率化による改善効果が得られなければ、海外利益は現在の800億円から560億円へと大幅減少します。国内赤字200億円を差し引けば、全社利益はわずか360億円にまで縮小し、現行の利益構造の約半分に落ち込む計算です。


内資系企業への影響

内資系企業の多くは、米国市場を中心とした海外収益で国内赤字を補っています。そのため、薬価引き下げと関税のダブルパンチは利益構造そのものの崩壊につながりかねません。さらに、米国に自社製造拠点を持たないケースが多く、高関税の影響を直接受けやすい構造です。対応策として米国内での生産や提携を進めれば、巨額の初期投資が必要になり、短期的には財務負担が急増します。


外資系企業への影響

一方、米国本社を持つ外資系は、すでに米国内製造拠点や販売網を整えている場合が多く、高関税の影響は限定的です。しかし、日本子会社にとっては別の懸念があります。米国本社がグローバルでの薬価引き下げに伴い、日本市場でも価格引き上げ交渉や販売方針の見直しを迫る可能性が高まるため、日本国内での販売戦略が本社主導で変更されるリスクがあります。結果として、日本市場における製品ラインナップや営業体制の縮小が進む可能性も否めません。


構造変革の契機

この打撃は単なる減益では終わりません。米国市場依存の高さがリスクとして顕在化し、海外黒字で国内赤字を補填するモデルは維持困難になります。高関税は米国内製造移管や現地パートナーシップ締結といった追加投資を迫り、資金負担を増やします。そして収益源の細りは、研究開発費や営業基盤への投資削減につながり、中長期的な競争力を削ぐ危険性を孕みます。

一方で、このシナリオは逆説的に「経営構造を抜本的に変えるチャンス」でもあります。市場の多角化、製品ポートフォリオの高付加価値化、国内事業のデジタル・効率化など、これまで後回しにされてきた施策を前倒しで実行する契機になり得ます。トランプ政策は、日本の製薬企業にとって試練であると同時に、依存から脱却し、競争力の再構築を迫る“最後通牒”かもしれません。

──差ではなく“差を生む構造”をつくるための意思決定論──


1. 戦略とは、「勝てる構造」を選び、つくるための意思決定である

戦略とは単なる“目的の達成手段”ではない。
限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を、どこで、誰に、どのように使えば相対的な優位が得られるかを決める意思決定の論理体系である。
その本質は、競争の中で自社が勝ち続ける構造をつくることにある。


2. 差別化とは、優劣ではなく“違い”を生み出すことである

差別化とは、自社が一方的に打ち出す“違い”ではなく、顧客にとって価値があり、かつ競合が持ち得ない相対的優位性を伴った違いでなければならない。すなわち強みとは、「顧客から選ばれる理由」として、競合との比較の中で初めて成立する概念である。そしてその違いが競争優位として機能するためには、他社が簡単に模倣できない“自社固有の資源”に根ざしていなければならない。つまり、差別化とは外に向けた装飾ではなく、内に宿る強みの延長線上にある独自性である。

そして重要なのは、いかに巧みな差別化も、競合に模倣されればすぐに一般化・陳腐化してしまうという事実である。差別化とは、競争を一時的に回避する方法にはなっても、それ自体が持続的競争優位性を保証するものではない。


3. 差別化だけでは持続的優位にはならない

 競争優位の最も純粋な原理は“量で勝る構造”にある

どれほど独自の価値を生み出しても、それが競合に模倣されれば優位性は失われる。
最も再現が難しいのは“戦力量(投入資源量)での圧倒”である。
競争においては、互角ならば最終的に勝敗を分けるのは「どちらがどれだけ多くの戦力を投じられるか」であり、優劣ではなく物量差が結果を支配する。


4. 戦力量とは、経営資源の量と配分構造そのものである

戦力量とは、単に“経営資源”という表面的な量ではなく、「どの市場・どの対象に、どのような形で、どれだけの経営資源を投下しているか」という配分構造そのものである。
戦略とは、この“戦力量の差を意図的に発生させる構造設計”でもある。


5. 圧倒的な戦力差を“築く”のではない

「どうやって戦力差を築くか?」という問いは本質を外している。限られた経営資源では、戦力差を築こうとしても限界がある。保有する経営資源が戦力差をもたらしやすい市場・対象を見極めることが戦略の本質である。
戦力差とは、競争構造を見極め、自社資源を把握し、適切な市場と対象を選ぶことによって、意図的かつ必然的に設計されるべき結果である。
勝てない場所で戦うのではなく、自社が“強者”になれる場所に資源を集中させることが最も合理的な戦略である。


6. STP戦略は「戦力差を生むための選択装置」である

Segmentation(市場の分割)、Targeting(標的の選定)、Positioning(相対的優位の確保)は、競争における“差”を生む構造をつくるための原則論である。
STPを、環境や競合の変化に応じて相対的に更新することが、戦力差を維持・強化し持続性をもたらす。


7. 持続的競争優位とは、「選び・集中し・差を生む構造を維持すること」である

戦略とは、“すべてに手を出すこと”ではなく、勝てる場所にだけ戦力を集中させる選択の論理である。

それにより、他社を上回る水準の戦力量を、局地的に実現する。

そして“圧倒的な戦力差をもたらせる市場・対象の選択”と、“動的なSTP最適化”によって初めて実現される。


8. 戦略は定量的・再現可能な構造設計であるべき

戦略が組織に浸透し、継続的に機能するためには、再現性・説明可能性・数値による検証性が必要である。そのためには戦力量、競争構造、相対優位性などを定量的に可視化・検証できる仕組みが、戦略実行において不可欠である。しかし戦略を実行するのは人であり、経験や感覚といった定性的な属人的発想を排除してはいけない。


総括

戦略とは、戦術とは異なり、単なる“目的の達成手段”ではない。
外部環境と競争構造を前提に、相対的な戦力差が最大化される市場と対象を選び、
そこに資源を集中させて“勝てる構造”をつくるための合理的意思決定である。

現代のビジネス環境において、多くの企業が共通して抱える深刻な課題があります。それは、本来戦略を司るべき本社機能が、知らず知らずのうちに「管理」という名のもとに監視業務に偏り、戦略的思考を手放してしまっているという事実です。

この傾向は、業界や企業規模を問わず広がっており、製造業、サービス業、IT、さらには老舗の商社に至るまで例外ではありません。営業会議では数字の進捗確認ばかりが繰り返され、マーケティング部門は競合分析よりもKPIトレースに追われ、経営陣は戦略立案よりも株主対応に時間を費やしてしまっています。


戦略と管理の混同がもたらす停滞

戦略とは本来、「どこで、誰に、どう勝つか」を明確にし、限られた経営資源をいかに集中投下するかを意思決定する営みです。STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)という基本フレームのもと、勝つための選択と集中が求められるのです。

戦略にはリスクを伴う意思決定が不可欠です。一方、管理は既定の方針を守らせる作業にすぎず、そこに創造性や先見性は求められません。にもかかわらず、戦略と管理を混同している組織は、競争優位を築くどころか、硬直したマネジメントに終始してしまいます。

計画管理は戦略の代用品ではない

多くの企業では「売上達成のための計画管理」が、あたかも最優先事項であるかのように扱われています。予実差異の確認、月次・週次レビュー、行動計画の精緻な管理。こうした活動は確かに重要ですが、それは戦略的思考の代替にはなり得ません。

背景にある市場環境の変化や競合との違いを理解せず、単に数値目標だけを押し付けるこのやり方は、現場にとってノルマの強制としか映りません。最も深刻なのは、成果が出なかった際の責任が曖昧になる点です。本社は「管理していた」と主張し、失敗の責任を「指示通りにやらなかった」と現場に押しつけてしまう構造が常態化しています。

なぜ本社は管理を選ぶのか

このような構造は、企業のヒエラルキー文化に深く根差しています。戦略立案には市場変化を読む眼力や意思決定の責任が求められ、失敗のリスクも伴います。一方、管理業務はそのリスクを回避でき、しかも「部下を監視している」という心理的優越感も得られるのです。

これは、かつての「考える本社、動く現場」という構図の延長にあります。しかし今日、このような上下構造は、もはや現代のビジネスに適応できなくなっているのです。


デジタル時代が変える情報と価値の構造

デジタル化が進んだ今、最も重要な情報源は現場にあります。顧客のリアルな反応、市場の微細な動き、競合の一手。これらはすべて、現場の最前線から発生しています。

VUCAの時代では「情報は本社に集約され、命令として現場に流れる」という一方向の流れは、すでに過去のものとなりました。今や、顧客との接点を持つ現場こそが、最も価値ある情報を創出し、意思決定における重要な役割を果たす存在になっています。

現場主導が競争優位をつくる

実際、先進的な企業ではこの構造変化をいち早く察知し、組織の重心を現場に移しています。小売店では現場スタッフの提案がヒット商品を生み、製造業では現場技術者の観察が新事業につながり、サービス業ではフロント対応がサービス革新を導いています。

これらの成功事例に共通するのは、本社が「管理者」ではなく「支援者」として機能していることです。本社は現場からの情報を受け取り、戦略に活かし、現場がより創造的に動ける環境を整える。これこそが現代的な本社のあるべき姿です。


共創型組織への進化をどう実現するか

組織を変革する第一歩は、本社機能の再定義です。本社は「管理者」ではなく「戦略パートナー」として、以下の4つの役割を担うべきです。

  1. 戦略的意思決定:どの市場で、どのように勝つかを決める。
  2. 経営資源の最適配分:ヒト・モノ・カネ・情報を全社視点で再配置する。
  3. 現場支援の仕組みづくり:効果的なツール整備とターゲット戦略の構築。
  4. 仮説検証と学習促進:成功・失敗から学び、改善を続けるサイクル運営。

いずれも「判断」と「意思決定」を伴う本来の戦略業務です。

KPIからKSFへ

「何を、どれだけやったか」ではなく、「何が勝敗を分けるのか」にフォーカスする必要があります。つまり、従来のKPI(成果指標)ではなく、KSF(成功要因)を重視する管理へと転換するのです。

たとえば、「月間売上額」ではなく、「顧客の行動変容フェーズの変化」や「市場の競争優位性」など、勝つために重要な行動に着目します。これにより、現場の意識は数値の追求から「勝つための行動」へと変化します。

情報共有と権限委譲の設計

現場が自律的に判断できるようにするためには、必要な情報と権限をセットで与えることが不可欠です。情報については「最小限から、必要なものすべて」へと転換し、戦略的判断に使えるデータを開示します。

また、顧客対応や商品構成など、現場判断が有利な領域では、明確なルールのもとで権限を委譲し、安心して動ける環境を整備することが重要です。

階層から共闘へ

もはや、上下関係による支配ではなく、水平的な共闘関係こそが持続可能な組織の鍵です。意思決定、情報、責任を適切に分かち合うことで、組織全体の力を最大化し、競争優位を築くことができます。

内向きの力の力学ではなく、市場で勝つための合理的な組織運営が求められているのです。


戦略こそが未来をつくる

管理から戦略へ、支配から共創へ。この転換は、単なる制度や組織構造の変更ではありません。顧客価値の創造と競争優位の構築という、ビジネスの本質に立ち返るための根本的な変革です。

従来のやり方にしがみつく企業は、市場において徐々に競争力を失っていくでしょう。一方で、共創を実現した組織は、どんな変化の時代でも持続的に成長し続けるはずです。

管理か戦略か、支配か共創か、選択は明白です。

経営者や企業担当者と話をしていると、議論が平行線をたどることがあります。
こちらがいくら論理的に説明しても伝わらず、手応えがないまま終わってしまうことがあります。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

それは、お互いに見ている“ピクチャー”が違うからです。
私は戦略の話をしていますが、相手は戦術の話を期待しています。
このズレは、話の内容だけでなく、会話全体の構造にも影響を与えます。

概念の混同: 「戦略」と「戦術」の区別がついていないため、「戦略」は、漠然とした「きれいごと」や「理想論」に聞こえてしまう。具体的な「戦術」の話がなければ、「現実的な話」ではないと感じる。

期待値のミスマッチ:「明日から使える具体的な解決策」を得たい。「総論」から入ることで、「各論」になかなか到達しないと感じ、フラストレーションを感じる。

戦略とは、どこを主戦場とするのか、誰と戦うのか、そして限られたリソースをどう配分するのかといった総論的としての全体設計の話です。
一方で戦術とは、その戦略を実行するための手段、つまり具体的な施策の選択にあたる各論です。
つまり「何をやればいいか?」という手法の答えを欲しがっているわけですが、戦略が曖昧なまま戦術を議論しても、目的地の無い旅の予定を立てるようなものです。

とくに、人口減少や市場の縮小が進む現代のビジネス環境では、曖昧な戦略は命取りになります
限られた人員や予算を、どこに集中させるか。誰を優先し、どこを切り離すか。
その意思決定こそが、戦略の核心です。

ところが実際の現場では、「この施策は効いているのか?」「販促費用の効果はどうか?」といった話が中心になります。
つまり、“なぜやるか”という問いを置き去りにして、手段の最適化ばかりが進んでいるのです。

戦略と戦術の違いは“目的と前提”にある

  • 戦略(Strategy)は、目的を達成するためのターゲット設定と資源配分の意思決定です
     → 誰に、何を、どれだけ、どう届けるかを決めるレイヤー
  • 戦術(Tactics)は、戦略で定めた方向に沿って具体的な施策を実行するレイヤーです
     → 広告を打つか、営業を強化するか、どのチャネルを使うかなどの手段

👉 戦略がなければ、戦術は“当たるか外れるか”のギャンブルになる

こうした構造的な誤解を解きほぐすために、「戦略と戦術を見分けるクイズ」を作成しました。
一見シンプルに見えるクイズですが、実際にやってみると多くの人が混乱します。
それだけ、戦略と戦術の違いは認識しにくいということです。

しかし、この区別ができるかどうかは、マーケティング活動が成果に結びつくかどうかを分ける分岐点になります。

同じ地図を見ているようでも、拡大率が違えば到達する場所も異なります。
まずは、見ているスケールを合わせること。
戦略とは何かを正しく理解することが、勝てる組織をつくる第一歩です。

🧠 戦略 or 戦術? クイズ(全10問)

Q1.「20〜30代の女性を主要ターゲットに設定する」

👉 戦略 or 戦術?

答え:戦略 🎓 解説:誰を狙うかというターゲティングは、戦略の中心要素です(STPのT)。


Q2.「販促用の店頭ポップを設置する」

👉 戦略 or 戦術?

答え:戦術 🎓 解説:店頭施策は、設定されたターゲットに対して“どう届けるか”という手段です。


Q3.「競合A社のシェアを奪取するために地方都市Bを重点市場とする」

👉 戦略 or 戦術?

答え:戦略 🎓 解説:ポジショニング(誰とどこで戦うか)を決める行動。リソース配分の方向性なので戦略です。


Q4.「毎月SNS広告に50回投稿する」

👉 戦略 or 戦術?

答え:戦術 🎓 解説:広告手段の選択は、戦略に基づく実行レベルのアクションです。


Q5.「自社商品の顧客を3タイプに分類し優先度を設定する」

👉 戦略 or 戦術?

答え:戦略 🎓 解説:市場のセグメンテーションは、STPにおける「S」であり、戦略立案の前提です。


Q6.「テレビCMを“朝の情報番組”に集中させる」

👉 戦略 or 戦術?

答え:戦術 🎓 解説:媒体選定は施策レベルの話。ターゲットに届く手段の最適化に該当します。


Q7.「価格を競争軸に据え、業界最安値を維持する方針を取る」

👉 戦略 or 戦術?

答え:戦略 🎓 解説:価格競争戦略の一環。自社の優位性をどこでつくるかという設計の話です。


Q8.「営業マンに週3回、重点店舗を訪問させる」

👉 戦略 or 戦術?

答え:戦術 🎓 答え:戦術(競合の訪問回数を上回るとする相対的なら戦略)


Q9.「価格ではなく“品質重視”で市場に挑む」

👉 戦略 or 戦術?

答え:戦略 🎓 解説:差別化の方向性(競争軸)を決めているため、競争戦略に該当します。


Q10.「売上上位10施設を“重点顧客”としてCRM強化する」

👉 戦略 or 戦術?

答え:戦術 🎓 解説:エンゲージメントを高めるという目的のためのCRMという手段です。

分散型社会の幻想と、ベキ分布化する市場の現実―

SNSで話題の商品を買い、レビュー評価の高いレストランを予約し、検索結果の上位に表示されたサービスを選ぶ。こうした日常的な購買行動は、一見すると「自分の意思で選んでいる」ように感じられます。しかし、実際には私たちの選択肢は、目にする情報によって巧妙に誘導されていることが少なくありません。

本来であれば、顧客がそれぞれの価値観やニーズに基づいて判断していれば、企業の売上やシェアの分布はランダムに近く、特定の企業に売上が集中することは起こりにくいはずです。しかし現実の市場では、一部の企業に売上が極端に集中する「ベキ分布」的な構造が支配的です。

このような集中が生まれる背景には、「情報の非対称性」と「ネットワーク効果」に加え、企業の持つ経営資源の格差が大きく影響しています。

検索エンジンのアルゴリズム対策、広告の大量出稿、レビュー管理、SNSでの話題化、インフルエンサー施策など、顧客の選択を形成する要素は非常に多岐にわたります。こうした施策を戦略的に、かつ継続的に実施するには、多くのリソースが不可欠です。

結果的に、これらを実行できるのは人材・資金・情報・時間という経営資源に恵まれた大企業が中心となり、情報環境そのものが大手企業に有利に構築されていきます。そして一度認知・注目を集めた企業や商品は、「人気が人気を呼ぶ」構造の中でさらに売上を伸ばしていきます。

このようにして、顧客が自由に選んでいるように見えて、実際には資源格差によって形成された情報の中から選ばされているという状況が生まれます。こうして市場は「勝者総取り(winner-takes-all)」の構造へと傾き、上位企業がより強く、下位企業が淘汰されやすい非対称な構造が加速していきます。

一方で、どれだけ優れた製品やサービスであっても、資源が限られていて情報として届かなければ、顧客に“選ばれる機会”すら与えられません。私たちの目の前には多様な選択肢が存在しているように見えて、実際にはレコメンドや広告が設計した“限定された自由”の中で選んでいるにすぎないのです。

今後、こうした構造はさらに進行していきます。AIやレコメンドは、私たちの過去の選好や行動を学習し、どんどん“私らしい選択”を代行してくれます。ですが、それは裏を返せば、「思考の余白」や「未知の出会い」を失っていくことでもあります。

消費者が主体性を失い、選択を自動化していけば、市場は効率化され、企業側にとっては「読みやすい消費者」が増えるという意味で都合の良い未来がやってきます。しかしそれは、文化や多様性、創造性を蝕む未来でもあるのです。

企業は、選ばれる仕組みをつくると同時に、「選ぶ力」を育てる環境づくりにも責任を持つべきです。そして私たち一人ひとりも、「自分で選ぶこと」を放棄せず、時に不便や迷いを引き受けながら、あえて立ち止まって考えることの価値を見直す必要があるのではないでしょうか。


ビッグデータにはノイズがつきものです。大量の行動ログ、購買履歴、位置情報、クリックデータなどには、意味のない情報や偶然の変動が常に混在します。解析が難しくなることもあれば、誤った結論を導くリスクもあります。

しかし、だからといって「データは少ない方がよい」とはなりません。むしろ現実には、「ノイズを含んでもなお、データ量が勝る」という力学が支配的です。なぜなら、ノイズを含んでも統計的には「数の暴力」が傾向を浮かび上がらせてしまうからです。

これが、現代のビジネス環境を特徴づける「winner takes all(勝者総取り)」の構造を生み出しています。

もしあなたがYoutuberで、チャネル視聴回数が10回だったとします。でもその10回のデータを分析するよりも、他の1万回再生をしているYoutuberのデータを分析する方が意味があるでしょう。

たとえば、Amazon、Google、YouTubeなどのプラットフォーマーは、ユーザー数が桁違いに多く、日々蓄積される行動データも圧倒的です。このデータを使ってレコメンドの精度を高め、さらに利用が集中し、またデータが増える──という正の循環に入っています。いわば、“精度の限界を、量で突破している”のです。

一方で、スタートアップや中小企業が扱えるデータはどうしても少量で、どれだけ丁寧に扱っても「相関」は見えても「構造」までは把握できません。そしてそれが、精度差、スピード差、再現性の差となって蓄積され、ますます大手が有利になります。

もちろん、少ないデータでも高解像度のセグメント分析を行い、局所的なニーズに応える戦い方は存在します。しかし、それは“質で勝つニッチ戦略”であって、主戦場での総取りにはなり得ません。

ビッグデータ+AIや顧客中心マーケティング、これらのバズワードに飛びつく前に、自社は市場内強者のポジションなのか弱者なのかを見極める必要があります。

ブランディングは“ひとつの時代”を終えつつある

かつて、日本のカルチャーシーンでは小室ファミリーが音楽界を席巻し、安室奈美恵は、ニーハイブーツにミニスカートを身にまとったアムラーと呼ばれるコギャル孫ギャルを生み出し、渋谷109でセシルマクビーの服を買い、サマンサタバサのバッグを誇らしげにぶら下げ、大量発生した読者モデルはタレント化し、みんなで同じ振り付けでパラパラを踊り、ブランドアイテムは若者にとっての自己表現であり、ステータスシンボルでもありました。

しかし今、街を見渡してもロゴの大きなバッグや服を身に着けた若者の姿はほとんど見かけません。代わって目にするのは、ユニクロやGU、無印良品といったシンプルかつ実用性重視の「量産型」ブランドです。

装飾的なブランドから、実用性と機能性へ。

グッチやルイビトンに象徴されるような「ブランドであること自体が価値だった時代」は息をひそめ、サマンサタバサはスーツ専門店のコナカの子会社として新たなフェーズに移行しています。

このような変化の背景には、消費における価値観の多様化、SNSによる情報取得の多チャンネル化、そして「所有」から「共感」や「体験」への志向の変化が挙げられます。ブランドが提供する“アイコン的価値”は、今やそれ単体では力を持たず、「自分の価値観やライフスタイルと響き合うかどうか」がブランド選びの決定要因になっているのです。


個別最適化がもたらす、ブランド物語の断片化

ブランディングとは本来、マスメディアを通じて「このブランドは○○である」という価値や世界観を社会全体に浸透させる企業戦略でした。多くの人々に一貫したメッセージを届けることで、「共通のブランドイメージ」や「象徴的な存在感」を育てる、伝統的な“マス・ブランディング”の在り方です。

しかし今日では、AIとビッグデータによって、顧客から個客一人ひとりに最適化された情報提供が当たり前となっています。タイミングも表現もチャネルもカスタマイズされ、同じブランドであっても、顧客価値は十人十色となるのです。

この“個別最適化”が進むことで、以下のような課題が生じています。

  • ブランド体験の断片化:顧客ごとに異なる接点・メッセージに触れることで、「ブランド全体」としての物語が希薄化する
  • 象徴性の喪失:かつての「Mac book」や「六本木ヒルズ」のように、誰もが共有できるブランド記号が成立しにくくなる
  • 矛盾する期待:価格、品質、社会貢献など、顧客の多様な要求がしばしば相反し、すべてに応えることが困難になる

つまり、多様性に応えるほどにブランドの軸が揺らぎ、「何者なのか」が曖昧になっていくというジレンマに直面しているのです。


トレンドが生まれにくくなった理由

マーケティングやブランディングにおいて、「トレンド」は人々の関心や行動が同じ方向へ動く“社会的なうねり”を意味します。かつてはテレビCM、雑誌、店頭プロモーションが同時多発的に機能し、「皆が知っていて、話題にし、同じ行動をとる」という状況が自然と生まれていました。

しかし、現代の情報環境では一人ひとりが異なるコンテンツ、異なるタイミング、異なる文脈でブランドに触れています。共通の文脈が形成されにくくなり、「いま、これが流行ってるらしいよ」と言っても、隣の人はまったく知らない――という状況が日常です。

つまり、トレンドが生まれる前提条件自体が崩れつつあり、ブランドが“語られる力”を持ちにくくなっているのです。


そして、べき乗化する市場:「勝者総取り」が加速する

このような分散型の消費環境が行き着く先が、べき乗分布(パワー・ロー)です。これは、「ごく一部のブランドが売上・人気・シェアの大部分を占め、その他多数は存在すら認識されない」という、非常に偏った構造です。

AIアルゴリズムによるレコメンドもこの構造を加速させます。なぜなら、人気のあるものほど表示され、さらに売れることで、“人気のあるものがより人気になる”スパイラルが起きるからです。

  • トップブランドが市場の大半を占める
  • 2位以下は急速にシェアを失う
  • 中小ブランドはそもそも“見つけてもらえない”

個別最適化が進むほど、皮肉にも市場は“集中”していきます。これは矛盾ではなく、アルゴリズムと人間心理の合理的な帰結だといえるでしょう。


経営資源の差が、そのまま競争構造の差になる

このようなWinner Takes All構造のなかで、全体市場をターゲットにできるのは、広告費、データインフラ、商品開発、流通チャネルなどすべての経営資源を網羅できる“大企業=市場内強者”のみです。

一方、中小企業や新興ブランドは:

  • 全体市場を狙えば確実に資源が分散し
  • トレンドを起こすほどの影響力もなく
  • 個別最適化だけではブランドの「象徴性」が築けない

という“三重苦”に直面します。つまり、経営資源の差が、そのまま勝者と敗者の明暗を分ける時代に入っているのです。


「応える価値を選ぶ」ことがブランド戦略の核心に

このように、従来型のマス・ブランディングが機能しにくくなった現代において、ブランド戦略の本質はこう変わりつつあります。

誰にでも同じことを言う”のではなく、“誰にでも意味のある価値を語れるブランド”であること。

そして、その価値を「どの顧客に、どの文脈で、どのように伝えるか」という文脈対応力=翻訳力が、これからのブランドの生命線になります。

そのためには、

  • 自社がどの市場で戦うのか
  • どの顧客に勝つべきか
  • どこに経営資源を集中すべきか

といった判断を、定量的かつ戦略的に行えるフレームワークが不可欠です。まさにそのニーズに応えるのが、DXS Stratify®のような「競争力とポジショニングを可視化する分析ツール」です。


「すべてに応える時代」だからこそ、「応える価値を選ぶこと」が、ブランドにとって最大の戦略的意思決定となる。
そして、それに気付き、いち早く競争優位を築いた者が勝ち残るでしょう。


表面的な演出はブランディングの本質ではありません

「ブランディング」という言葉を聞くと、多くの方がロゴの刷新やパッケージデザイン、広告コピーなどを思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、これらはあくまでブランドの“象徴”にすぎず、ブランディングの本質ではありません。

本来のブランディングとは、

「顧客の心の中に、自社がどのように位置づけられているのか」

というブランドの“実態”を把握し、それを自社の“ありたい姿”に近づけていくための戦略的な取り組みです。


一人よがりのペルソナは、ブランド構築を誤らせます

近年、多くの企業がペルソナやカスタマージャーニーといったフレームワークを活用して、顧客理解に取り組んでいます。それ自体は有益な手法ですが、問題は「自社にとって都合のよい理想像」をペルソナとして描いてしまうことです。

たとえば、「SNSに強く、自己投資意欲が高い30代女性」といったペルソナと自社のブランドイメージがマッチングしているかどうかの検証がないまま戦略に組み込まれると、マーケティング活動が“現実”から乖離してしまいます。

このように、企業の内側だけで完結してしまう「理想の顧客像」に基づいたブランディングは、戦略ではなく幻想です。


顧客の中にある“真のブランドイメージ”を知るには

それでは、どのようにして顧客の中にある“リアルなブランドイメージ”を把握すればよいのでしょうか。

ここで有効なのが、DXS Stratify®を用いたマトリクス分析です。

たとえば、一般用医薬品領域であれば、横軸に自社および競合他社、縦軸にセグメント(目薬・スキンケア・内服薬など)を設定し、各カテゴリにおけるロイヤルカスタマー比率を比較します。すると次のような知見が得られます。

  • 自社が最も支持されている「コアブランド領域」(守るべきブランドイメージ)
  • 潜在性はあるがまだ浸透していない「サブブランド領域」(育てるべきブランドイメージ)
  • 他社に明確に優位性を取られているカテゴリ(差別化や撤退の検討対象)

このように、実際の購買行動をベースとした定量的分析により、企業視点ではなく顧客視点でブランドの実像を把握することが可能になります。

分析概要:DXS Stratify®を用いたブランドイメージの可視化

【マトリクス分析に用いるデータイメージ】

セグメント自社競合A競合B
目薬・アイケア
スキンケア
外皮薬
内服薬
検査薬
鼻・口腔ケア
食品・サプリ

各セルに「売上高」や「顧客数」を入力


ブランディングとは、幻想ではなく現実との対話です

ブランドは企業が一方的につくるものではなく、顧客の心の中に形成される「認識」の結果です。
だからこそ、ブランド戦略は「現実」を直視し、そのうえで「ありたい姿」とのギャップを埋めるための活動であるべきです。

その意味で、DXS Stratify®は、“幻想としてのブランディング”から“戦略としてのブランディング”へと進化させるための実践的ツールといえるでしょう。

得られるインサイト

項目内容
コアブランドイメージ(守るべき領域)ロイヤルカスタマー比率が高く、競合より優位に立つカテゴリ。
⇒ 現状の競争力が強く、ブランド価値の核。絶対に崩してはいけない領域。
サブブランドイメージ(育てるべき領域)潜在的需要があり、シェアやロイヤリティがまだ低いカテゴリ。
⇒ 育成対象として戦略的投資や差別化メッセージが有効。
競合のコアブランド領域自社が劣勢で、競合がロイヤル顧客を握っているカテゴリ。
⇒ 安易に真っ向勝負せず、差別化か撤退の判断が必要。

おわりに

ブランディングとは、一言でいえば「顧客の心の中に、望ましい自社像を意図的・戦略的に築く活動」です。つまり自社のイメージと顧客のイメージを結びつける営みです。その結び目に必要なのは、「理想」ではなく「現実」から始める姿勢です。

現実を正しく知ることで、初めて私たちは「本当に守るべきブランド」と「これから育てるべきブランド」の輪郭を描くことが出来るのです。

活用例:戦略と紐づける

活用領域意図する戦略
マーケティング守るべきブランドイメージには一貫したコミュニケーションを、育てる領域には教育・啓発・新規接点の創出を
商品開発ブランドコアに沿ったラインアップの強化、イメージ形成に沿った商品拡張
流通戦略各カテゴリでロイヤルカスタマーが多いチャネルを重点展開
広報・PR顧客が“すでに抱いているイメージ”を強調することで、無理のない印象強化が可能

製薬業界は一見すると成長産業に見えます。2024年度の日本市場は薬価ベースで11.5兆円と過去最高を記録し、グローバル市場も年平均7.5%の成長が見込まれています。外資系企業の日本法人は堅調な売上を維持し、新規モダリティへの研究開発投資も活発に行われています。こうしたデータを見ると、業界はむしろ活況にあるように思われがちです。

しかし、その裏側では、日本の製薬業界は明確な「二重構造」を呈しています。グローバル事業が成熟期を維持している一方で、国内事業は衰退の一途をたどっているのです。主要企業の多くで国内売上は減少傾向にあり、2024年4~6月期には大手8社すべてが前年同期比マイナスとなりました。薬価制度による収益圧迫や、営業部門(MR)を中心とした大規模な早期退職の常態化も見られます。

このような状況は、単なる景気循環ではなく、産業構造そのものの変質を示しています。1980年代に1,000社を超えていた製薬企業は、現在では100社を切り、研究開発型企業は69社にまで減少しました。今や生き残るには、海外売上比率70%以上、年間R&D投資1,000億円以上といった新たな“生存条件”を満たす必要があります。

表向きの成長とは裏腹に、国内市場に依存する企業は極めて厳しい環境に置かれています。見た目よりもはるかに深刻なこの実態に、我々は冷静に目を向けなければなりません。