ビッグデータにはノイズがつきものです。大量の行動ログ、購買履歴、位置情報、クリックデータなどには、意味のない情報や偶然の変動が常に混在します。解析が難しくなることもあれば、誤った結論を導くリスクもあります。
しかし、だからといって「データは少ない方がよい」とはなりません。むしろ現実には、「ノイズを含んでもなお、データ量が勝る」という力学が支配的です。なぜなら、ノイズを含んでも統計的には「数の暴力」が傾向を浮かび上がらせてしまうからです。
これが、現代のビジネス環境を特徴づける「winner takes all(勝者総取り)」の構造を生み出しています。
もしあなたがYoutuberで、チャネル視聴回数が10回だったとします。でもその10回のデータを分析するよりも、他の1万回再生をしているYoutuberのデータを分析する方が意味があるでしょう。
たとえば、Amazon、Google、YouTubeなどのプラットフォーマーは、ユーザー数が桁違いに多く、日々蓄積される行動データも圧倒的です。このデータを使ってレコメンドの精度を高め、さらに利用が集中し、またデータが増える──という正の循環に入っています。いわば、“精度の限界を、量で突破している”のです。
一方で、スタートアップや中小企業が扱えるデータはどうしても少量で、どれだけ丁寧に扱っても「相関」は見えても「構造」までは把握できません。そしてそれが、精度差、スピード差、再現性の差となって蓄積され、ますます大手が有利になります。
もちろん、少ないデータでも高解像度のセグメント分析を行い、局所的なニーズに応える戦い方は存在します。しかし、それは“質で勝つニッチ戦略”であって、主戦場での総取りにはなり得ません。
ビッグデータ+AIや顧客中心マーケティング、これらのバズワードに飛びつく前に、自社は市場内強者のポジションなのか弱者なのかを見極める必要があります。
