製薬業界は一見すると成長産業に見えます。2024年度の日本市場は薬価ベースで11.5兆円と過去最高を記録し、グローバル市場も年平均7.5%の成長が見込まれています。外資系企業の日本法人は堅調な売上を維持し、新規モダリティへの研究開発投資も活発に行われています。こうしたデータを見ると、業界はむしろ活況にあるように思われがちです。
しかし、その裏側では、日本の製薬業界は明確な「二重構造」を呈しています。グローバル事業が成熟期を維持している一方で、国内事業は衰退の一途をたどっているのです。主要企業の多くで国内売上は減少傾向にあり、2024年4~6月期には大手8社すべてが前年同期比マイナスとなりました。薬価制度による収益圧迫や、営業部門(MR)を中心とした大規模な早期退職の常態化も見られます。
このような状況は、単なる景気循環ではなく、産業構造そのものの変質を示しています。1980年代に1,000社を超えていた製薬企業は、現在では100社を切り、研究開発型企業は69社にまで減少しました。今や生き残るには、海外売上比率70%以上、年間R&D投資1,000億円以上といった新たな“生存条件”を満たす必要があります。
表向きの成長とは裏腹に、国内市場に依存する企業は極めて厳しい環境に置かれています。見た目よりもはるかに深刻なこの実態に、我々は冷静に目を向けなければなりません。

