──差ではなく“差を生む構造”をつくるための意思決定論──
1. 戦略とは、「勝てる構造」を選び、つくるための意思決定である
戦略とは単なる“目的の達成手段”ではない。
限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を、どこで、誰に、どのように使えば相対的な優位が得られるかを決める意思決定の論理体系である。
その本質は、競争の中で自社が勝ち続ける構造をつくることにある。
2. 差別化とは、優劣ではなく“違い”を生み出すことである
差別化とは、自社が一方的に打ち出す“違い”ではなく、顧客にとって価値があり、かつ競合が持ち得ない相対的優位性を伴った違いでなければならない。すなわち強みとは、「顧客から選ばれる理由」として、競合との比較の中で初めて成立する概念である。そしてその違いが競争優位として機能するためには、他社が簡単に模倣できない“自社固有の資源”に根ざしていなければならない。つまり、差別化とは外に向けた装飾ではなく、内に宿る強みの延長線上にある独自性である。
そして重要なのは、いかに巧みな差別化も、競合に模倣されればすぐに一般化・陳腐化してしまうという事実である。差別化とは、競争を一時的に回避する方法にはなっても、それ自体が持続的競争優位性を保証するものではない。
3. 差別化だけでは持続的優位にはならない
競争優位の最も純粋な原理は“量で勝る構造”にある
どれほど独自の価値を生み出しても、それが競合に模倣されれば優位性は失われる。
最も再現が難しいのは“戦力量(投入資源量)での圧倒”である。
競争においては、互角ならば最終的に勝敗を分けるのは「どちらがどれだけ多くの戦力を投じられるか」であり、優劣ではなく物量差が結果を支配する。
4. 戦力量とは、経営資源の量と配分構造そのものである
戦力量とは、単に“経営資源”という表面的な量ではなく、「どの市場・どの対象に、どのような形で、どれだけの経営資源を投下しているか」という配分構造そのものである。
戦略とは、この“戦力量の差を意図的に発生させる構造設計”でもある。
5. 圧倒的な戦力差を“築く”のではない
「どうやって戦力差を築くか?」という問いは本質を外している。限られた経営資源では、戦力差を築こうとしても限界がある。保有する経営資源が戦力差をもたらしやすい市場・対象を見極めることが戦略の本質である。
戦力差とは、競争構造を見極め、自社資源を把握し、適切な市場と対象を選ぶことによって、意図的かつ必然的に設計されるべき結果である。
勝てない場所で戦うのではなく、自社が“強者”になれる場所に資源を集中させることが最も合理的な戦略である。
6. STP戦略は「戦力差を生むための選択装置」である
Segmentation(市場の分割)、Targeting(標的の選定)、Positioning(相対的優位の確保)は、競争における“差”を生む構造をつくるための原則論である。
STPを、環境や競合の変化に応じて相対的に更新することが、戦力差を維持・強化し持続性をもたらす。
7. 持続的競争優位とは、「選び・集中し・差を生む構造を維持すること」である
戦略とは、“すべてに手を出すこと”ではなく、勝てる場所にだけ戦力を集中させる選択の論理である。
それにより、他社を上回る水準の戦力量を、局地的に実現する。
そして“圧倒的な戦力差をもたらせる市場・対象の選択”と、“動的なSTP最適化”によって初めて実現される。
8. 戦略は定量的・再現可能な構造設計であるべき
戦略が組織に浸透し、継続的に機能するためには、再現性・説明可能性・数値による検証性が必要である。そのためには戦力量、競争構造、相対優位性などを定量的に可視化・検証できる仕組みが、戦略実行において不可欠である。しかし戦略を実行するのは人であり、経験や感覚といった定性的な属人的発想を排除してはいけない。
✅ 総括
戦略とは、戦術とは異なり、単なる“目的の達成手段”ではない。
外部環境と競争構造を前提に、相対的な戦力差が最大化される市場と対象を選び、
そこに資源を集中させて“勝てる構造”をつくるための合理的意思決定である。
