サイコロを6回振ったときに「6」が少なくとも1回出る確率を考えてみましょう。感覚的には、「6回のうち1回、『6』が出るかどうか」というイメージで、なんとなく1/6の確率と捉えてしまいがちです。しかし、実際の計算では、この感覚と大きなズレがあることが分かります。
まず、1回のサイコロの振りで「6」が出ない確率は 5/6(約83.3%)です。これを6回連続で振っても「6」が1度も出ない確率は以下の式で求められます。
(5/6)6
この結果を1から引くことで、「少なくとも1回『6』が出る確率」がわかります。
1−(5/6)6≈0.6651
つまり、66.5%の確率で「6」が1回以上出るのです。このように、単純な1回の試行(1/6の確率)に基づいた感覚と、複数回の試行を通した結果の確率には大きなズレが生じます。これが、感覚値と期待値のズレです。
なぜズレが生じるのか?
このズレは、累積確率の考え方から生まれます。単発の確率は低くても、複数回試行を重ねることで、ある事象が少なくとも1回起こる確率が徐々に高くなります。例えば、1回ごとに「6」が出る確率が1/6でも、6回のうちどこかで「6」が出る可能性が積み重なるため、最終的に66.5%に達するわけです。
これは、宝くじを複数枚買うと当選確率が高まることにも似ています。1枚だけでは当選確率が低くても、複数枚買うことで当たる確率は徐々に上昇します。
感覚と数学のギャップを理解する
日常生活では、私たちはしばしば「感覚的な確率」に基づいて判断を下しますが、数学的な確率はそれと異なる場合が多々あります。サイコロやくじなどの確率に限らず、投資やリスク評価など、複数回試行される事象において、この感覚と期待値のギャップを理解しておくことは、より合理的な判断につながるでしょう。