ビジネスの現場で、「戦略を突き詰める前にマーケティングに走ってしまう」という現象が少なくありません。このような傾向には、即効性や短期的な成果が求められる現代のビジネス環境が影響していますが、全体像や方向性(本題)を明確にしないまま、個別の施策(各論)に取り組んでしまうことにはリスクが伴います。とりわけ、戦略が不明確なマーケティングが営業現場にどのような影響を及ぼすかは、見逃せないポイントです。
なぜマーケティングに走ってしまうのか?
企業がマーケティングに急ぐ理由には、短期的な成果を数値で確認できる点が挙げられます。戦略は抽象度が高く長期的な視点を伴うため、目に見える成果が即時に得られにくく、評価が難しい面があります。一方、マーケティング活動は、売上の増加やSNSのエンゲージメントといった形で迅速に効果を確認できるため、即効性を求める企業にとって魅力的です。これにより、企業は戦略の検討を後回しにして、まずは具体的なマーケティング活動に着手しがちです。
上位概念としての戦略の重要性
どれだけ巧みなマーケティング戦術も、全体の戦略が不明確であれば、企業の目指す方向性を欠いてしまいます。戦略は、企業のリソースをどう配分し、どの市場でどのように競争優位を築くかを決める「航海図」のようなものです。マーケティングや戦術は、この航海図に基づき、具体的にどのように進んでいくかを決める活動です。戦略があってこそマーケティングが方向性を持ち、リソースの最適な配分を通じて効果を最大化できるのです。
「誤った戦略は戦術では補えない」
「誤った戦略は戦術では補えない」という格言がある通り、戦略の方向性が誤っている場合、どれほど優れた戦術を駆使しても目的には到達しません。戦略が描くべきは「なぜ」その市場をターゲットとするのか、「何」が競争優位をもたらすのか、そして「どう」リソースを配分するのかです。これにより、マーケティング活動がバラバラに進むことなく、一貫性を持って組み立てられます。
本社部門の戦略不在が営業現場に与える影響
本社が戦略を明確にせずにマーケティングプランニングを行うと、現場での営業活動にさまざまな支障が生じます。まず、マーケティング施策の狙いや方向性が明確でないため、営業現場は一貫性のない指示を受けることになります。たとえば、活動量やターゲット顧客に関して具体的な根拠を持たずに施策が変更されると、現場は混乱し、顧客との信頼関係が損なわれるリスクが高まります。
さらに、戦略が不明確なため、営業担当者は自分たちの活動がどのように企業全体の成功に貢献しているのかを理解しづらくなり、モチベーションの低下につながります。マーケティング施策が短期的な成果を重視している場合、現場は顧客への説明や接点の確保に追われることになり、本来注力すべき長期的な関係構築が後回しになることもあります。
さらに、戦略が不在のままマーケティング活動が進むと、現場では過度に数値目標が重視され、営業担当者が短期的な目標達成だけに集中せざるを得なくなります。これにより、長期的な成果が見込める顧客へのリソース配分が減少し、持続的な成長が損なわれるリスクが増大します。
まとめ
戦略が不明確なままマーケティングに走ることは、本来の目的を失ったまま個別の施策(各論)に取り組むようなものです。本社部門が戦略を明確にしないままマーケティング活動を進めると、営業現場は混乱し、短期的な目標達成が優先される結果、顧客との関係が希薄になりかねません。戦略を確立し、本題としての方向性を共有することで、各論であるマーケティングや営業活動が一貫性を持って進められ、長期的な競争優位と持続的成長を支える基盤が整うのです。