人事評価におけるハイパフォーマー、ミドルパフォーマー、ローパフォーマーの構成は、しばしば「2:6:2の法則」として説明されます。これはまさに正規分布を前提にした考え方であり、組織の人材が平均的に分布しているという仮定に基づいています。
しかし、現場を観察すると必ずしもこの構造が当てはまるわけではありません。標準的なミドル層が中心ではなく、むしろ外れ値に近い存在がチームを牽引しているケースが少なくありません。突出した専門性、独自の問題解決力、強い影響力を持つ人物など、統計的には例外とされる人材が、実際には組織全体の成果や方向性を大きく左右しています。
さらに、自社が業界内で下位に位置している場合には、自社内の標準偏差や平均値を基準に評価しても、業界全体に対する競争優位性は得られないという問題もあります。内部の相対評価だけで満足してしまうと、外部競争環境における自社の立ち位置や必要な成長幅を見誤り、戦略的な人材育成につながらないリスクがあります。
このように、正規分布を前提とした評価モデルは、平均から外れた重要人材の価値を過小評価しやすく、また外部競争に直結しない指標に依存してしまう危険性があります。評価制度を設計する際には、「平均的な分布」という前提を絶対視せず、外れ値的な存在の貢献と業界基準での実力を正しく可視化する視点が欠かせません。
1. 正規分布前提の人事評価の問題点
- 評価をあらかじめ上位・中位・下位に割り振る(強制分布法)ことで、実際の能力や成果とは関係なく序列が決まる。
- 本来は全員が高い成果を出していても、制度上は一定割合を「ローパフォーマー」にしなければならない。
- 評価基準が“横並びの平均からの偏差”になるため、突出した成果やユニークな能力が適切に評価されにくい。
2. 「能力は複合的」なのに一軸評価
実際のパフォーマンスは以下のように複合的に構成されます。
- 専門知識・スキル
- 問題解決力
- チーム貢献度
- イノベーション力
- 顧客対応力
しかし多くの評価制度は、これらを単一スコアに集約し、さらに分布型(正規分布)に当てはめてしまうため、
複合的な強みが“平均化”され、多様性を殺す構造になります。
3. 矛盾の構造
- 理念:多様性の尊重 → 個人の強みや特性を活かす
- 制度:正規分布ベースの相対評価 → 平均値からの偏差で上下を決定
→ 結果:多様性が組織評価の枠組みに吸収され、画一化される
これは臨床で「正常値」だけで診断することと似ています。
見えないリスクや個性を切り捨てる構造です。
人と違うという、最大の強みは見過ごされる構造。
4. 分布型分析を人事に応用すると
- 成果や能力の分布形状そのものを可視化
- 複合的指標を分解してどの領域で差が出ているかを把握
- 個別の成長戦略(パーソナライズド育成計画)に直結
→ これにより「制度上の正規分布」ではなく、現実の多様性に基づく評価と育成が可能になります。
S.I Lab株式会社では分布構造からの可視化を行っています。
