私は、これまでに3件の特許を取得し、現在は4件目の申請準備を進めています。しかし、もともと自分が特許を保有するようになるとは考えもしませんでした。特定の専門領域で研究を重ねた成果でもありません。日々の実務や状況に向き合うなかで、「なぜだろう」「もっと良くできるのではないか」という疑問が芽生え、その問いを形にしていった結果が特許という形に結実して、申請してみたら取れちゃったという感覚です。

 一方で、そのアイデアを広め、理解を得る過程では大きな壁があります。私は専門家ではないため、既存の理論や知識体系をベースにした言語で説明することが難しく、結果として相手に伝わりにくい場面が少なくありません。特に「既存のものと何が違うのか」「どこに新規性や有用性があるのか」を示すことは、専門外の立場だからこそ高いハードルになります。

 専門家の多くは、既存の知識を正しく理解し、身につけ、応用することを基本とします。体系を守り、その中で精度を高めていくことが使命です。一方で私のように、枠組みの外から「そもそもなぜ?」と問いかける姿勢は、時に違和感を与え、時に衝突を生みます。しかし振り返れば、まさにこのアプローチの違いこそがイノベーションを生み出す原動力なのではないか、と感じます。

 イノベーションは必ずしも専門性から出発するものではありません。むしろ「素人の疑問」や「現場での違和感」が、既存の体系にはない新しい視点をもたらすことがあるのではないかと思います。そして、その価値を社会に届けるためには、専門家の言語に“翻訳”して伝える力が必要になります。

理想は専門家が通訳者となり、一緒に世の中を変えていくパートナーになってくれることです。

 知識を積み重ねることと、疑問を持ち続けること。この二つのアプローチの違いが交わるところにこそ、未来を変えるイノベーションの種があるのだと思います。