昨今、地方自治体が地域課題の解決に向けて全国からアイディアを募る取り組みは珍しくなくなりました。行政による中小企業支援も活発で、必ずしも大企業でなくても、スタートアップやベンチャーが大企業にはできないソリューションを生み出す時代になっています。

問題は、その「評価の仕方」です。

多くの公募や審査では、提案を点数化し、平均点の高いものが採択されやすい傾向があります。しかし、イノベーションはそもそも全員に均一に理解されるものではありません。新しい提案ほど、理解できる人とできない人が分かれます。ここで平均点だけを基準にしてしまうと、尖った価値は「ノイズ」と見なされ、丸い提案だけが残りやすくなります。

たとえば10点満点で評価したとき、平均点が5を下回っていたとしても、10点をつける人が存在することが重要です。なぜなら、その10点をつけた人は「熱狂者」だからです。熱狂者が生まれる提案は、理解されにくい代わりに、課題を一気に動かす推進力になり得ます。一方、平均点が高い提案は、誰にでも理解できる範囲に収まっている可能性が高く、合意形成は容易でも、結局は既存の延長線上の改善に留まりがちです。

つまり、平均点が高いことは「安心」の指標にはなっても、「起爆剤」の指標にはなりにくいのです。地域課題の多くは構造的で、既存の枠内での小さな改善では突破しづらい場面が少なくありません。だからこそ、ローリスク・ローリターンな提案ばかりが選ばれる評価設計では、本質的な解決に届きにくくなります。

もちろん、平均が低ければ何でも良いという話ではありません。説明不足や実装不能な提案も混ざります。重要なのは「平均」ではなく「分布」を見ることです。評価が割れること自体を危険視するのではなく、むしろ新規性の兆候として捉え、次に実装条件(制度・予算・体制・KPI)でふるいにかける。一次で尖りを拾い、二次で実装可能性を見極める──この二段階の考え方が、イノベーションを殺さずに現実へ接続するための現実解だと思います。

地域課題に必要なのは「みんなが納得する案」だけではありません。「一部の人が強く支持し、推進者になって前に進める案」が必要です。平均点の高さではなく、熱狂者が生まれるかどうか。評価の重心をそこへ移せるかどうかが、自治体の公募や支援策の成果を大きく分けていくのではないでしょうか。