RWDは確実に増えました。データ基盤も整い、BIも高度化し、AIも導入されつつあります。にもかかわらず、意思決定の質、特に「戦略の質」は必ずしも上がっていない。むしろ、データが増えた分だけ“判断が遅くなる”現象すら起きています。

理由はシンプルで、データ量の増加が自動的に「解像度の上昇」にはならないからです。多くの分析は、相関を強化し、予測精度を上げます。しかし戦略に必要なのは、相関ではなく「なぜそれが起きているか」の説明可能性です。相関は意思決定を前に進めるように見えて、最後に“責任の置き場”を失わせます。

さらに、RWDは現実の混線をそのまま含みます。適応、併用、施設特性、患者背景、選択バイアス。これらは「データが豊富である」ほど強く混ざり合います。つまり、データが増えるほど、因果の設計が曖昧なままでは結論が揺れやすくなります。

結果として、現場はこうなります。
「見える化は進んだが、決め手がない」
「説明ができず、合意形成ができない」
「結局、過去踏襲に戻る」

データを増やす時代から、現実の“構造”を掴む時代へ。RWDの次のボトルネックは、データ収集ではなく「構造を歪めずに扱う意思決定技術」なのだと思います。