中小企業の倒産件数が、過去最高を更新し続けています。
その主な原因は、資金繰りの悪化でも人材不足でもなく、「販売不振」。つまり売れない、儲からないことが理由です。
私が支援現場で目の当たりにするのは、ある典型的なパターンです。
ビジネスアイディアがひらめいた瞬間、「これは売れそうだ!」と期待に胸をふくらませ、市場調査や事業計画をしないまま、いきなり製品開発に突入する、以下の図で言えば、①から⑤へと高揚感で“スキップ”してしまうのです。
「売れそう」と「売れる」は別物
「これは売れそう」という直感そのものを否定するわけではありません。しかし問題は、その直感が「いくら売れそうか」という具体的な数字を伴っていないことです。
- 市場は成長しているか?(成長率)
- 自社が優位に立てるポジションはあるか?(競争優位性)
- そもそも、十分な市場規模が存在するか?(TAM・SAM・SOM)
このような問いに答えるための市場調査やその結果に基づいて事業計画書を作成しなければ、ビジネスは“夢”のままで終わってしまいます。
製品を作ってから販路を探すのでは遅い
アイディアが形になっていく過程はワクワクするものです。ですが、販路も顧客も見えていない状態で製品開発を進めてしまうと、リリースの段階になって初めて「売り方がわからない」ことに気づくことになります。
これは、開発者と経営判断者が同一人物であることの多い中小・零細企業に特有の落とし穴とも言えるでしょう。
しかも、製品開発〜リリースまでの期間は外注費などもかさむ“他者を儲けさせる期間”でもあります。収益化されなければ、結局、自社だけが赤字を背負い、他社にだけ利益をもたらすことになります。設けるための事業が自分が損をするのでは何のためやっているのかと言いたくなります。
大企業も同じ罠にはまる
この構造は中小企業だけの問題ではありません。
大企業でも「現場の声なき戦略」が上層部から降りてきて、営業現場では腹落ちせず、結果的に売れない、ということが起こります。特に近年は「営業は古い」とばかりにDXに置き換えようとする動きもありますが、収益を生み出している唯一の部門は営業である、という事実は変わりません。
営業現場の理解や納得がなければ、いくら本社で知恵を絞っても利益は生まれないのです。大企業に勤める多くの方は起業経験はないでしょうから、サラリーの意識はあっても企業利益の意識は持ちにくと思います。
すべてのマイルストーンを明確にしてからスタートせよ
「事業をスタートさせた時点で、すべてのマイルストーンが明確になっている必要がある」
「入口(アイディア)」だけでなく、「出口(収益化)」までの道筋を描くこと。
それができなければ、成長市場であっても生き残ることはできません。
【まとめ】
✅ アイディアだけで走らない。市場調査と事業計画を経て収益化までの戦略を立てる
✅ TAM/SAM/SOMを把握し、現実的な売上見込みを立てる
✅ 製品開発よりも先に「誰に」「どう売るか」を描く
✅ 営業部門の納得なくして、収益化はありえない
