因果推論においてRCTは強力です。ApixabanとRivaroxabanの比較試験のように、「どちらの出血リスクが低いか」を平均的に示すには非常に有効です。しかし、現場の意思決定は本来それだけでは足りません。私たちが本当に知りたいのは、「なぜ差が出たのか」「誰にその差が成立するのか」「何を変えれば結果が変わるのか」という問いだからです。
従来の統計やRCTが主に示すのは、確率としての差です。つまり「平均的にはこちらが良い」という答えです。けれども医療もビジネスも、現実は平均では動きません。患者背景、併用薬、腎機能、行動、運用条件などが複雑に絡み合い、特定の条件でだけリスクが跳ね上がったり、逆に効果が強く出たりします。平均値だけでは、その構造は見えません。
ここで必要になるのがDSA+DAGです。DSAは、全体平均の裏に埋もれた分布の偏りや異質性を捉えます。どの層にリスクが集中しているのか、どこに見えない脆弱性があるのかを可視化します。DAGは、変数間の関係を単なる相関ではなく、因果仮説として整理します。つまり「結果が起きている確率」を見るのではなく、「結果を生んでいる構造」を捉えるための道具です。
重要なのは、これが分析の精緻化ではなく、意思決定の発想転換だということです。確率の高い選択肢を選ぶ時代から、因果構造を理解し、介入によって結果を変える時代へ。DSA+DAGは、そのための基盤になり得ます。これから必要なのは、有意差の有無ではなく、構造を読み、因果として判断する力です。
