お米券の支給をめぐる議論が活発化していますが、論点の多くは「現金支給のほうが合理的ではないか」という方向に流れています。しかし、この議論は手段以前に目的設定を見失っているように見受けられます。

この問題を整理するうえで有効なのが、STP(Segmentation・Targeting・Positioning)の視点です。
まずセグメンテーションは、物価高という広範な社会課題です。そのうえで、今回の政策が本来狙うべきターゲティングは、「高止まりが続くコメ価格」という極めて具体的かつ限定的な政策課題であるはずです。
そしてポジショニングは明快です。対象は「米を食べたいにもかかわらず、価格上昇によって我慢を強いられている国民」です。

ここで重要なのは、コメ価格対策は象徴政策ではないという点です。特定の商品、特定の支出行動に対してピンポイントに介入する、きわめて具体的な施策領域です。したがって、手段は目的と強く結びついている必要があります。

現金支給は確かに汎用性が高く、生活全般を下支えする手段です。しかしそれは「米価対策」ではなく、「物価上昇全体に対する生活支援策」です。STPの観点で言えば、ターゲットを意図的にぼかす手段であり、目的が異なります。

さらに注目すべきは政治的な文脈です。現金支給を前面に出したこれまでの対応については、直近の選挙において与党が議席数を減らす結果となり、事実上、国民の審判が下されています。「現金を配れば理解される」という発想そのものが、必ずしも支持されなかったという現実です。

それにもかかわらず、再び現金支給に議論が回帰していく様子は、戦略不在の状態に酷似しています。目的が曖昧なまま手段論に入れば、議論は拡散し、評価軸も成果指標も定まりません。これは政策に限らず、企業経営や事業戦略でも同様です。 戦略とは、限られた資源を誰に、何のために、どのように使うかを決めることです。STPを欠いた意思決定は、善意であっても成果を生まない。
お米券か現金かという問いの前に、いま改めて問うべきなのは、「この政策は何を解決するためのものなのか」という一点ではないでしょうか。

生成AIは、もはや「使っているか・いないか」を問う段階を終えました。2025年現在、もはや大切な問いは、AIをどう分類し、どう使い分けているかです。にもかかわらず、多くの企業ではChatGPTに代表されるチャット型AIを「万能AI」と誤解し、その延長線上で投資判断をしてしまっています。

しかしAIは、役割の異なる複数の層から成り立つ“システム”です。これを整理しないまま活用すると、「考えてはくれるが、何も終わらないAI」に振り回されることになります。

まず押さえるべき、AIの3分類

現在のAIは、大きく以下の3タイプに分けると理解しやすくなります。

基盤モデルは、言語処理や推論の基礎体力です。これ単体では価値を生みませんが、すべてのAIの土台になります。
チャット型AIは、思考を補助し、壁打ち相手として優秀です。しかし主導権は常に人にあり、指示を止めれば動きも止まります。

一方、AIエージェントは根本的に異なります。目標を与えると、必要な情報を探し、手順を組み立て、外部ツールを使いながらタスクを完遂します。ここでは人は「操作する存在」ではなく、「目的を定義する存在」になります。

なぜ多くのAI活用が失敗するのか

失敗の最大要因は、「思考支援」と「実行」を同一視している点です。チャット型AIにどれだけ高度な指示を与えても、最終的な判断・操作・実行は人間が担う必要があります。その結果、業務は速く“考えられる”ようになっても、業務量そのものは減らないのです。

AIエージェントの価値は、単なる効率化ではありません。
業務構造そのものを再設計できる点にあります。

経営に求められる新しい問い

これからのAI戦略で問われるのは、

  • 人が考えるべき領域はどこか
  • AIに任せきるべき領域はどこか
  • その境界を誰がどう設計するのか

という、極めて経営的な問いです。

AI時代の競争力とは、最新ツールの有無ではありません。
AIを役割で分解し、組織と業務にどう配置するかという設計力です。
「AIを導入した企業」ではなく、「AIを構造的に使い分けている企業」だけが、次の段階に進めるでしょう。