私が顧問を務める医療機関では介護保険外サービスの新規事業参入を進めています。

いわゆる多角化戦略です。

介護保険外サービスは医療機関にとっては近くて遠い領域です。

それ相応のリスクの高い試みです。

ではなぜ多角化を進めるのでしょうか?

多角化戦略のメリットは、①収益の拡大が期待できる、②企業環境の変化によるリスクを分散できる、③シナジー効果が期待できる、④範囲の経済性が得られる、⑤プロダクトライフサイクルに対応できる、⑥経営資源の有効活用ができる、などです。

一方で①コストがかかる、②経営が非効率になりやすい、③損失拡大の可能性、④ブランドイメージの不明瞭化、などのデメリットも存在します。

少子高齢化による市場減少の昨今のビジネス環境においては既存市場に対して既存製品による市場浸透戦略が最も手堅い戦略です。

多角化戦略、それも新領域への参入はリスクの高い挑戦です。

それでも尚且つ多角化戦略を進める理由は、持続的な成長のためには競合が参入するよりいち早く市場に参入し、出来るだけ占拠する必要があるからです。

とはいえやる気とガッツだけで勝てるほど甘くありません。

十分過ぎる程の市場調査と勝てると確信できる戦略が必須です。

消費者の購買決定行動を説明する基本的なモデルのことを購買意思決定プロセスといいます。

英語では「Buyer Decision Process」と呼ばれます。

他にも消費者の購買決定行動を説明するフレームワークとして「AIDMAの法則」「AIDAモデル」「AISAS(アイサス)」などがありますが、これらは「広告反応モデル」と呼ばれる異なるフレームワークです。

購買意思決定プロセス には5つのプロセスが存在していますが、消費者は必ずしも段階的にプロセスをたどるわけではありません。

段階の途中からスタートしたり、段階を進んだり戻ったり、段階の途中で諦めてしまったり途中の段階を飛ばしてしまうなどなど様々な消費者が存在します。

消費者に自社製品を選んでもらうためには、消費者がプロセスどの段階にいるのか?どの段階で止まっているのか?消費者の気持ちの動きを理解し、プロセスを刺激するためのプロモーション戦略を立てる必要があります。

消費者がどの段階で立ち止まり購入に至らなかったのかを把握することが出来ればプロモーションプランを改善することもできます。

KPIをモデル化する良い方法はないでしょうか?

KPIは顧客の行動変容を促し、処方獲得につなげ売上を向上させるための指標であり、KPIそのものがゴールではありません。

どれだけの量の活動をすれば、どれだけのリターンが得られるのか?

これを定量化することが出来ればモデル化が可能になります。

モデル化することが出来れば、どこがレバレッジポイントか?どこにボトルネックがあるのか明確に把握することが出来るはずです。

処方獲得フローのどのステージで、次のステージに移行する際の損出率が分かればモデル化が可能です。

まず仮説としての行動計画を実行し、定期的に検証することで算出すれば可能かもしれません。

顧客への情報提供のチャネルはMRを主体としたシングルチャンネルからマルチチャネル、そして現在ではオムニチャネルへと変化してきました。

皆さんの会社でも積極的に推進されていると思います。

ではオムニチャネル化によってMRの皆さんの仕事はしやすくなったでしょうか?

顧客による商品の認知、興味関心、比較検討、購買といった一連の購買プロセスが、顧客にとって快適であるよう、顧客目線で各チャネルがシームレスに構成される事がオムニチャネルのポイントです。

実店舗を持たないECサイトによるインターネット販売ビジネスなどでは、顧客の購買を促進するためにオムニチャネルはとても有用な手段です。

しかしオムニチャネルは分散市場の不特定多数の顧客へのマスマーケティングにはとても相性の良い手段だと思いますが、医薬品ビジネスのようにターゲティングマーケティングではどうでしょうか?

将来的にMRを不在にするため情報提供チャネルであれば別ですが、現時点ではMRの存在は営業という観点から、医薬品ビジネスにおいて不可欠です。

オムニチャネルの推進はMRの存在意義を薄め、その役割を機能しにくくしてはいないでしょうか? 

平成28年の総務省による社会生活基本調査結果では、社会人の1日あたりの平均勉強時間はわずか6分だそうです。

これはアンケートの回答者約20万人のうち、「主に仕事をしている」人の平均勉強時間であり、主婦の方や学生の方は集計対象外です。

6分というのは非常に短い結果ですが、その理由は95%以上の人が「勉強時間は0」と回答しているからです。

そのため平均勉強時間が極端に短く算出されたということです。

では残りの5%の人の勉強時間はどのくらいでしょうか?

勉強している人だけのデータでは、1日の勉強時間の平均は160分です。

このように該当する行動をしている人のみのデータを集計した平均の事を「行動者平均」と言います。

一方で、転職エージェントが実施したオンラインアンケートでは70%の社会人が勉強に取り組んだことがあると回答しています。

総務省の調査では95%が勉強時間0だったので2者の調査結果が異なっています。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

総務省の調査では現時点で勉強している人の割合を調査しています。

転職エージェントの調査では、過去も含めて勉強した経験を調査しており、また対象者も転職=キャリアアップに積極的だと考えられます。

このように調査結果を分析する場合には対象者の背景も考慮して判断する必要があります。

いずれにせよ、ワークライフバランス、副業OK、裁量労働制、終身雇用崩壊など社会環境は急速に変化しています。

大人の勉強の大切さが身に沁みます。

皆さんはモデル式を活用されているでしょうか?

売上を構成する要因をモデル化することで、どこにレバレッジをかければ効率良く売上を伸ばせるか、あるいはボトルネックがどこにあるのかを視覚化することが出来ます。

作り方は簡単です。

EXCELに要因をカスケードし、掛け算/足し算の計算式を埋め込むだけです。

要因のカスケードはトリートメントフローなどから抽出します。

例として糖尿病のモデル式を作成してみました。

糖尿病あるいはその予備軍は成人の16%、そのうち治療を受けている割合は45%、そして治療継続率は56%と報告があります。

これらを用いて算出することで市場規模(患者数)が予測出来ます。

自身の担当エリアの人口は自治体のホームページなどで確認できるはずです。

市場規模が分かれば自社製品のシェア値(PATDAY推奨)や薬価などの情報により売上を推定します。

モデル化により売上の構造が視覚化出来れば、どこがレバレッジポイントか見えてきます。

市場を拡大するための啓蒙活動や、市場を維持するためにドロップアウトの抑制、シェアアップを図る、高用量プロモーションを行うなど幾つかの実行計画が明確になるでしょう。

意思決定のためのディシジョンツリーとしても応用が出来るかと思いますので一度チャレンジしてみてください。

戦略プランのためのマーケティング・ミクスを実行するには、STPが明確になっていることが前提です。

市場をいくつかのセグメントに分け、自社に有利な環境を選びます。

市場細分化には幾つかの切り口で実施することが出来ます。

地理的変数や人口統計的変数、サイコグラフィクス変数、行動上の変数などを活用すると良いでしょう。

自社製品のシェア値が74%を超えたら、次なる戦略プランはどのようなものでしょうか。

未攻略の26%を攻略すべきでしょうか。

シェア理論においては市場シェア100%は目指しません。

クープマンモデルにおけるシェアの最大値は74%です。

なぜ100%ではないのか?詳細は改めての機会としますが、競合の存在や顧客の心理的などが要因です。

それでは74%を超えた後の戦略プランはどのようなものでしょうか?

それは市場拡大戦略です。

市場拡大戦略とは、新たなニーズを開拓し、既存製品による新市場へ参入する戦略です。

コロナワクチン接種をマーケティングプランに例えてみましょう。

全人口に占めるコロナワクチンの日本国内の2回目接種人数の割合は、76.9%です。

接種者数の推移では1回目接種は10月、2回目接種は11月以降頭打ちが見られます。

イノベーター理論におけるラガード(遅滞者)は16%存在します。

これらの対象者に接種することは困難であることが予想されます(体質、副反応の経験など)。

既存製品を最も効率よく増加させるには2回目まで接種を行った人に3回目の接種をさせることです。

そのためには新たなニーズを生み出す必要があります。

第6波やインフル・コロナの同時流行、最近では変異株オミクローンの出現などにより3回目接種のニーズが高まっています。

既に2回接種を終えている人にとっては受け入れやすい戦略プランです。

今後は新たなニーズを継続的に創出することが出来れば、4回、5回と季節接種のポジショニングを取得することも可能でしょう。

ワクチンは真に社会貢献に進められているものであり、営利を目的とするマーケティングではありませんが、参考となる部分が非常に多いCaseですね。

コロナワクチンに学ぶ 超強力な市場細分化戦略

新型コロナウイルスワクチン接種に学ぶ戦略ロードマップ

コロナワクチンに学ぶ 超強力な市場細分化戦略②

戦略においては「必ず勝てる、絶対に負けない」ことが重要です。

そのためには競合を見据えた市場細分化を行う必要があります。

任意の2軸を用いて、市場をセグメント分類してみましょう。

その上で競合をプロットし、全体像から自社が参入すべき市場を決定します。

競合を上回る戦力を投入し、競合を駆逐するのか。

それとも戦いを避け、着実にシェアを積み重ねるのか。

勝つための戦略を策定します。