— 仮説駆動が現実を歪めるとき —
フレームワークは強力です。短時間で議論を整理し、意思決定を前に進める。ところが、ある瞬間から急に機能しなくなることがあります。議論は整っているのに、現場が動かない。提案は美しいのに、成果が出ない。私はこの瞬間を何度も見てきました。
フレームワークが機能しないのは、フレームが間違っているからではありません。現実の方が「フレームの前提条件」から外れているからです。たとえば、分布が厚い(ばらつきが大きい)世界、因果が循環しやすい世界、選択バイアスが常態化している世界では、仮説駆動が強いほど“見たいものだけを見る”力学が働きます。
仮説は、必要なものです。ただし仮説は、現実を照らすライトにもなれば、現実を切り捨てるナイフにもなります。とくに意思決定が急がれる局面では、整合性のあるストーリーが勝ってしまう。異質性(例外)が「ノイズ」として退場させられる。これが、後から効いてきます。
ではどうするか。私は答えを一つにしません。ただ、問いは明確です。
「このフレームは、現実のどの部分を“見ないこと”にしているのか?」
この問いが入った瞬間、フレームワークは“思考停止”の道具から、“監査可能な意思決定”の道具に変わります。
