営業戦略においてMRの意見はどの程度、尊重され、重要視され、反映されているでしょうか?

新型コロナウイルスによる影響が沈静化した現在のMR活動は、コロナ以前の対面による営業活動中心に戻っているそうです。

医療機関の訪問自粛要請などから顧客への対面営業が困難であったここ2年間はデジタルによる情報提供への転換を余儀なくされ、メールやWebの活用を積極的に行ってきました。

本社としては既に推進しているデジタルを中心とした情報提供に注力したいでしょうが、営業現場ではその意向に反して堰を切ったようにコロナ以前の活動に逆戻りしており、本社と営業との間ではギャップが生じています。

この急速な揺れ戻し現象は、デジタル化を推進してはいたものの定着まではしていなかったということかもしれません。

では本社と営業現場、どちらの顧客アプローチが正解なのでしょうか?

医薬品は市場のニーズを反映しているとはいえ、その開発の経緯からプロダクトアウトの形で市場にロンチされることが多いはずです。

その場合、まだまだ市場/顧客におけるニーズは十分に顕在化しておらず、MRによる潜在的な市場の掘り起しが重要な役割を果たしています。

そしてその対象者は必ずしのデジタルの親和性が高い顧客ばかりではありません。

また医療機関は労働集約型であるため、リモート化が進む現在においてもワークプレイスは必ず医療機関です。

在宅ワークでパソコンの前に座っているわけではないのです。

重要顧客ほど忙しいものです。アポイントの取得は難しく、そのために出待ちなどで面会機会を得る必要もあります。

さらに医薬品は高度な情報を伴う製品のため、必要な情報を顧客自ら見つけ出すことは、忙しい顧客ほど難しくなります。

また限定的な情報よりも周辺の情報も合わせて取得したいと考える顧客は少なくありません。

対面営業はデジタルに比べて効率の面では劣りますが、受注確率の面では高くなります。

「メラビアンの法則」では、言語情報は、メールやチャットなどのコミュニケーション代替ツールによって十分代用は可能であると言われており、対面によるコミュニケーションより事実を過不足なく伝えられるメリットがある場合もあります。

ただし、メールやチャットなどのオンラインに依存した言語コミュニケーションツールなど、オンラインで使用される語彙数は、日本人が日常的に話したり、聞いたりする語彙数の5分の1にしかならないという研究結果もあり、対面の場合に比べてかなり少なくなります。

つまり対面コミュニケーションで得られる情報量のうち7%が言語情報であり、そのうちの5分の1の1.4%程度の情報量しかオンライン言語ツールからは得られない可能性があるということです。

デジタルの活用とデジタル化の推進は当然進むべき方向かとは思いますが、デジタルを推進する方々はもう少し顧客に最も近く理解しているMRの声に耳を傾けても良いのではないでしょうか。