PEST分析やパレート分析など、今でもビジネススクールやセミナーで学ぶことの多い手法の多くが、戦後の高度経済成長期に提唱されたものです。そのために市場の拡大を前提としたものとなっています。

STP分析は、ビジネス戦略を立てる際に有用なフレームワークです。市場分析やターゲット顧客を識別から、セグメント設定、ターゲット設定、ポジション設定を行うことで、製品やサービスの市場における位置づけを明確にします。

STP分析は、1970年代にアメリカの経済学者フィリップ・コトラーによって提唱された、マーケティング戦略における基礎的なフレームワークであり、ブルーオーシャンを探索する、すなわち市場の拡大を前提としています。

人口減少や景気後退のような厳しいビジネス環境では、市場が縮小する中で競争優位を確立することが特に重要です。従来の「セグメンテーション → ターゲティング → ポジショニング」(STP)のプロセスを逆転させ、ポジショニングを先行させるアプローチは、特定の状況下で有効な戦略となり得ます。この逆転したアプローチには以下のようなメリットがあります。

  1. 強みを活かした市場の特定
    自社の製品やサービスの強みと独自性を先に明確にし、それに基づいて市場ニーズを特定します。この方法では、自社の能力や資源を最大限に活用し、競合との差別化を図りやすくなります。
  2. 効率的なリソース配分
    市場ニーズと自社製品の強みを先に特定することで、リソースをより効率的に配分できます。市場の可能性が限られている場合、リソースを最も有効に活用するセグメントに集中することができます。
  3. 適応性と柔軟性
    市場が縮小または変化している状況では、柔軟性と適応性が重要です。ポジショニングを先に設定することで、市場の変化に応じてセグメンテーションやターゲティング戦略を迅速に調整できます。

アプローチの実装
①ポジショニングの確立
自社製品の強み、独自性、競合との差別化ポイントを特定します。

②市場ニーズの分析
強みを活かせる市場ニーズを探索します。このステップでは、市場調査やトレンド分析が役立ちます。

③セグメンテーション
強みと市場ニーズに基づいて、最も有望な顧客セグメントを特定します。

④ターゲティング
特定されたセグメントに対して、製品やサービスのマーケティング戦略をカスタマイズします。

このアプローチは、特に新規事業や革新的な製品を市場に投入する際に有効です。市場のニーズや顧客のセグメントよりも、自社の強みと独自性を先に考えることで、新たな市場機会を見出すことができるからです。しかし、市場の理解を怠ると、顧客ニーズと製品のミスマッチが生じるリスクもありますので、この戦略を用いる際には、市場と顧客の深い理解が引き続き重要になります。