日本ベーリンガーインゲルハイムのSGLT2阻害薬・ジャディアンスが、CKDの適応を取得しました。同様の適応を持つSGLT2阻害薬にはフォシーガがあります。
(CKD:「慢性腎臓病。ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く」)

SLT2阻害薬は、長年糖尿病治療薬の主役であったDPP-4阻害薬を抜き、急速に市場を拡大しています。中でも6製品が競合するSGLT2阻害薬の市場は、「フォシーガ」(アストラゼネカ/小野薬品工業)と「ジャディアンス」(日本ベーリンガーインゲルハイム/日本イーライリリー)の2強型競争市場を形成しています。

ジャディアンスが、CKDの適応を追加取得することで競争優位性にどのような変化が起きるのか、戦力量分析を用いて試算してみました。

正確なデータソースを持たないため、試算は以下の条件としており、考察は参考程度にとどめてください。
 糖尿病市場:約6760億円
 SGLT2阻害薬市場:約2300億円
 フォシーガ売上:約565億円
 ジャディアンス売上:450億円
 ジャディアンスファミリー売上:約685億円

以下は、フォシーガの推定シェア値を24%、ジャディアンス19%、ジャディアンスファミリー29%と仮定し、CKD適応追加の寄与係数を+0.5ポイントとした場合の、対フォシーガに必要な戦力量の分析結果です。
1.ジャディアンス単体:現在の2.8倍のリソース投入が必要
2.ジャディアンス+CKD:現在の1.8倍のリソース投入が必要
3.ジャディアンスファミリー:現在の1.2倍のリソース投入が必要
4.ジャディアンスファミリー+CKD:現在の0.8倍のリソース投入が必要

戦力量分析の結果から、SGLT2全体市場での競合の場合には、ジャディアンスファミリー+CKDの総力戦であればフォシーガの牙城を崩すことが可能です。

例えばSTPを設定するなら、セグメント設定:今後増加する高齢者市場、ターゲット設定:加齢とともに増加する心腎疾患患者、ポジション設定:高齢者での心腎連関疾患の基準薬などです。

その他の戦略としては、市場細分化によりフォシーガの戦力量を上回る市場でドミナント的にシェアを積み重ねることになるでしょう。

*これらの数字は市場調査や過去のデータに基づく推定であり、将来の市場動向を保証するものではありません

*戦力量:製品力、MR数、経営資源、ブランド力、ロジスティックなど