「顕在市場を対象とする業界では先ずは市場占有率を決める」
予め対象市場が顕在化しており、市場占有率が重要な戦略となる業界には、医療用医薬品や医療機器、公共インフラ、教育業界、ウェディング業界、住宅建設業、自動車販売業、教育玩具業界、人材派遣業界などがあります。
これらの業界は人口統計、経済成長率、購買力、法規制や政府の政策などから、市場の規模が比較的明確で、需要が予測しやすいため、事業計画や戦略、マーケティングプランが立てやすいという特性があります。
例えば、医療用医薬品の使用は、定められた適応症を持つ患者に限定されており、これらの製品は医師の処方が必要です。そのため、市場は事前に顕在化しています。
反面、予め市場が潜在化しているために、複数の競合参入により、激しい競争が特徴的なビジネスモデルとなります。さらに、特有の規制と保護により同一化を余儀なくされることで、差別化が困難な、いわゆるレッドオーシャン市場です。
医薬品ビジネスは特定の患者層に限定されるため、消費財ビジネスのように広範な潜在顧客を対象とした、売上の積み重ねを目的する戦略とは根本的に異なります。消費財市場では売上の増加が主な目標であるのに対し、医薬品ビジネスでは顕在市場におけるシェアの拡大戦略が重要です。
市場シェアの獲得は、顧客のニーズや競合との関係によって直接的な影響を受けるため、戦略の選定はこれらの要素に基づいて相対的に行う必要があります。
そのため、市場占有戦略を立てる際には、市場規模だけでなく、自社の競争地位や競争優位性を理解することが不可欠です。
競争の激しい市場での戦略を設計では、市場規模と成長性から、製品のライフサイクルごとに、競争優位性による実現可能なターゲットシェア値を定め、ドミナント戦略で最終的な市場占有率を達成することになります。
すなわち、事業戦略ではターゲットシェア値を定め、事業計画ではターゲットシェア値を達成するための手段を定めます。
DXS Stratify®は実現可能なターゲットシェア値を競争地位および競争優位性から算出することが出来ます。
「顧客ターゲティングの3つのケースとその精度」
顧客ターゲティングは、製品やサービスを最も求めている見込み顧客に効果的にリーチするための戦略です。顧客ターゲティングの方法について、3つのケースを想定してみました。
①:顧客情報のみで行う
②:①に自社の要因を加味する
③:①と②に競合他社の要因を加味する。
①:顧客情報のみで行うケース
このケースでは、顧客の基本的なデモグラフィック情報(年齢、性別、居住地など)や過去の購買履歴、行動データを基にターゲティングを行います。この方法の利点は、顧客の基本的な傾向やニーズを把握しやすいことです。しかし、このアプローチでは、自社の製品やサービスがどのように顧客の特定のニーズを満たすか、また、競合と比較してどのような優位性を持つかを考慮していません。そのため、ターゲティングの精度は基本的なレベルに留まり、より細分化されたニーズや特定の顧客グループを見逃す可能性があります。
②:①に自社の要因を加味するケース
このケースでは、顧客情報に加えて、自社の製品やサービスの特徴、価格設定、ブランドのポジショニング、利益率などの要因を考慮します。これにより、自社の強みや弱みを踏まえた上で、最も適切な顧客セグメントにターゲットを絞ることができます。自社の資源を最も有効に活用し、ROI(投資対効果)を最大化する顧客グループを特定できるため、ターゲティングの精度は大幅に向上します。このアプローチでは、自社の提供価値を最も必要とする顧客セグメントを明確に特定できます。
③:①と②に競合他社の要因を加味するケース
このケースでは、顧客情報と自社の要因に加えて、競合他社の戦略、製品/サービスの特徴、価格設定、市場でのポジショニングなどを考慮に入れます。競合分析を行うことで、自社の相対的な強みや弱みを客観的に評価し、市場の隙間や競合が満たしていない顧客ニーズを見つけ出すことが可能になります。この全面的なアプローチにより、ターゲティングの精度はさらに高まり、競争上の優位性を確立するために必須の戦略的な意思決定が可能になります。市場全体の動向を把握し、競合に対する有効な差別化戦略を立てることができるため、最も効果的なターゲティングが可能になります。
結論
顧客情報のみに基づくターゲティングは基本的なレベルで有効ですが、自社の要因や競合他社の要因を加味することで、ターゲティングの精度は大幅に向上します。特に、自社と競合他社の要因を両方考慮することで、市場の深い洞察を得て、競争上の優位性を確立するための戦略を立てることができます。各ケースでの精度向上は、市場の理解を深め、より効果的に顧客にアプローチするための重要なステップです。
「ランチェスター戦略を概念から実践へ」
ランチェスター戦略の代表的な事例の一つに、対馬における陶山訥庵先生のイノシシ退治があります。
1700年、対馬の人口2万人に対し、イノシシが8万頭もいたといわれています。農民たちは毎年、必死で育てた作物をイノシシに荒らされて困っていました。退治しようとしても、イノシシの方が数で勝っており、さらに退治する数より毎年増える数の方が多く、問題解決は困難でした。
そこで立ち上がったのが、奉行である陶山訥庵です。
イノシシによる農業被害に悩む農民を助けるため、陶山訥庵によって「猪鹿追詰覚書」が実施されました。彼はまず、島のエリアを9分割し、大きな柵を立ててエリア間でイノシシが移動できないようにしました。
そして、全島民の勢力を1つのエリアに集中させ、1年かけてそのエリアのイノシシを全滅させました。その際、残りの8/9のエリアには一切手をつけませんでした。
翌年には次のエリア、その翌年にはまた別のエリアのイノシシを全滅させ、9年間で問題を解決しました。
これは、戦力量で劣る中小企業(人間)が、戦力量で勝る大企業(イノシシ)に対抗するための、弱者の戦略の例です。
例えば、戦力量に劣る中小企業であっても、市場を細分化し、戦力量を集中させることで、局所的に大企業の戦力量を上回り、市場を拡大するドミナント戦略としています。
しかし、この有名なランチェスター戦略の弱者の戦略は、実際に用いるには少し概念的過ぎるかもしれません。
DXS Stratify®は、独自のアルゴリズムを用いて市場を12のマトリックスに細分化し、優先順位と必要な戦力量を定量化および可視化することが可能です。
製薬企業では外資系を中心に早期退職やポジションクローズを実施し、9年連続でMR数が減少しており、23年3月末のMR数は前年同期比2166人の減少となりました。
デジタルマーケティングがもたらすMQL(Marketing Qualified Lead、マーケティングにより資質が確認された見込み顧客)からSQL(Sales Qualified Lead、販売に繋がる資質が確認された見込み顧客)への受け渡しは、人的資源に依存するプロセスです。MRの数が減少する中で、デジタルツールを活用した顧客開拓が進むと、購買に結びつけるための人的リソースが不足する可能性があります。
MRの数が1/3に減少した場合のリソースアロケーションを演習問題としてご用意しました。
選択肢は3つです。①欠員の担当顧客を残った人員が全てカバーする、②欠員の担当顧客は当面担当者不在とする、③市場規模の大きな顧客を再ターゲティングし優先顧客とする
①ではリソースが分散してしまいますし、②では担当者不在の間に顧客が離れてしまうでしょう。③は一見合理的なようですが、様々な市場環境の顧客が混雑することになるため、短期間でのリカバリーは困難なため、①~③には正解がありません。
先ずは現在の売上実績を崩さないために必要な顧客と、その上で売上実績を向上させるべき顧客を特定することです。そのためには、顧客を「維持」、「強化」、「撤退」と、状況とリソース量により判断する「検討」に分類する必要があります。これは担当交代による引継ぎでも同様です。
マトリクス分析を用いれば、市場規模と競争地位および競争優位性の2軸から、顧客を「維持」、「強化」、「撤退」、「検討」に分類することが出来ます。さらにカバー率とそれに対する売上寄与率を定量および可視化することで意思決定を支援します。
Demoでは36.59%の顧客をカバーすれば、現在の売上の80.03%を維持することが出来ることが分かります。極端に言えば60%くらいの人員を削減しても、8割の売上を維持することが出来るというわけです。
さらに「戦力量分析」と「活動量分析」の機能により、より詳細なリソース配分を算出することが可能です。
分散市場における不特定の潜在顧客のニーズを把握する消費財ビジネスとは異なり、医薬品ビジネスにおいて営業担当者が知りたい顧客情報は、自社医薬品の処方につながる治療方針や処方傾向です。
趣味や嗜好性、休日の過ごし方は、顧客とのコミュニケーションを深めるためには必要な情報ですが、処方獲得のための優先情報ではありません。
医薬品販売データベースによるシェア類型を用いることで、顧客である医師の治療方針や処方傾向を知ることが出来ます。
顧客タイプを知ることで処方獲得の糸口を見つけることが出来るでしょう。
兵法における戦略とは、「必ず勝つ、絶対に負けない」方法を意味します。同様に、ビジネスにおけるSTP分析においても、自社の強みによって競争優位性を得ることが出来るセグメント、ターゲット、ポジションを決める方法です。
演習問題から、自社および競合他社AとBの製品売上推移からどのような戦略をとるべきか考えてみましょう。
自社製品のシェア値が17%、競合製品Aのシェア値が30%、競合製品Bのシェア値が15%です。自社製品は当初こそ、最も高いシェア値を獲得していましたが、競合製品Aに抜かれダウントレンドとなっています。
再度、市場内シェア値1位に返り咲くためには、競合製品Aあるいは競合製品Bのどちらを対象とした戦略が必要になるでしょうか?
現状では競合製品Aを攻略するためには、現在の自社製品にかけているリソース量の5.4倍を必要とする射程距離圏外です。一方で、競合製品Bは辛うじてシェア値で上回るものの拮抗しており、勝つか負けるかの瀬戸際であり、必ず競り勝つ必要があります。
競合製品Bには、現在の自社製品にかけているリソース量の1.3倍で攻略が可能です。競合製品Bのシェアを5%奪えばその差は10%となり、攻略に必要なリソース量は0.4倍と大幅に減少します。さらに競合製品Bからシェアを奪うことに成功すれば、ようやく競合製品Aが射程距離圏内となります。
自社製品のシェア値を27%まで向上させても、依然として競合製品Aが優位であり、その攻略には、2倍のリソース量を必要としますが、現実的に攻略の可能性が見えてきました。
実際に戦略を立てる場合には、リソース量の総量と相談しながら配分可能かどうかを判断する必要があります。
DXS Stratify®の戦力量分析を用いれば必要なリソース量を定量および可視化することが出来ます。
MR(営業担当者)の評価に、単に目標の進捗率だけではなく、シェア値を取り入れるべきとの議論はい以前からされています。それは、担当するエリアの市場規模やその成長性、さらに競合他社との競争環境が異なるからです。
MOVEでは、①進捗率、②進捗率+市場規模、③進捗率+市場規模+シェア値の、3段階でどのようにターゲット施設の優先順位が変化していくのかをお示ししています。4軒の医療機関を担当するMRを事例として、Totalでは進捗率100%ではあるものの施設ごとには100%に達していないモデルケースを仮定しています。
①進捗率のみを追うことで、全ての施設が100%を上回る必要があると考えてしまいますが、それでは適切なリソース配分が出来ず、無駄なリソース、あるいはリソースが不足する施設が生じます。
②進捗率+市場規模の例ではその優先順位が変化し、100%達成しているIS病院の優先順位が上位になりました。
③進捗率+市場規模+シェア値では、IS病院の優先順位がさらにあがり、優先度No,1になっています。これは競争環境の中では非常に脆弱であり、インハウスの評価では100%達成している優良施設だとしても、外部環境からみれば、いつ口座を失ってもおかしくない状況にあります。
一方で、シェア値が1位のT大医学部附属病院では、シェア値が下位の競合製品が口座を失うことでさらにシェア値を高めることが出来る可能性があります。
このように内部環境要因は常に外部環境要因の影響を受けているため、進捗率などインハウスの情報のみで戦略を立てることは非常に危険な行為であると言えます。さらに目標の設定が不適切であった可能もあります。
製薬業界には、このような外部環境要因を知るための素晴らしい医薬品販売データベースが存在します。医薬品販売データベースは、どの製薬企業でも入手することが出来るため透明性が高く、それによって戦略的な動きを予測されやすくなるというリスクが生じます。
医薬品販売データベースを正しく使うことが競争市場においては重要です。
どちらを優先するかには、市場環境の分析が必要です。特に最近のように人員削減により戦力量が低下している状況では、適切なリソース配分が非常に重要です。
DXS Stratify®は、医薬品販売データベースを利用した低次元統計データ分析アプリケーションです。顧客ターゲティングとリソース配分を定量化し、可視化することができます。
適切なリソース量を定量化することでマルチチャンネルの最大活用につながります。
現在、S.I LabではDXS Stratify®のPoV(価値の証明)、PoC(概念実証)に協力していただける製薬企業様を探しています。
ご興味がございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。
戦後の高度経済成長期以前の体験を記憶している現役の方は、現在のビジネスの現場にはおられないと思います。
「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」をVUCAと言いますが、我々は誰も経験をしたことがないビジネス環境に立っています。
この10年間の世界の不確実性指数は、実に3.5倍に高まっています。
その大きな要因は世界的な景気後退による市場の縮小です。
そのため、より競争の厳しい市場環境になりました。
私たちが用いているビジネスモデルの多くは、市場が拡大する時期に提唱されたものが殆どであり、競争市場には必ずしも合致していません。
未来を予測するよりも、現状を把握し、変化に柔軟で俊敏に対応することが求められています。
“Embracing the Unpredictable Future in the Present”
Those who remember the era before the post-war period of rapid economic growth are likely not actively engaged in today’s business landscape.
Referred to as VUCA, an acronym for “Volatility, Uncertainty, Complexity, and Ambiguity,” the concept describes a state of affairs where the future is opaque and predicting outcomes becomes challenging. We find ourselves standing in a business environment that none of us have experienced before.
The global uncertainty index over the past decade has escalated by a staggering 3.5 times.
A significant contributing factor to this shift is the contraction of markets due to worldwide economic downturns.
Consequently, our operating within a more fiercely competitive market has become the new norm.
Many of the business models we employ were conceptualized during periods of market expansion and might not align seamlessly with the landscape of competitive markets.
Rather than attempting to predict the future, the emphasis is on understanding the present circumstances and swiftly adapting to changes with flexibility and agility.
