ビジネスにおいては、「誰に届けるか」が極めて重要です。
すべての人に理解される必要はありません。
むしろ、最初は“分かる人だけに届く仕組み”を設計することが、最短距離の戦略です。
イノベーター理論で言えば、最初に語るべき相手は全体の2.5%。
そこから13.5%のアーリーアダプターに伝播させ、やがてキャズムを超える。
だからこそ、
「誰も見向きしてくれない」ではなく、
「まだその2.5%に届いていないだけ」
と、戦略の再構築に目を向けることが大切です。
戦略として大事なのは:
「最初から多くに理解されることを目指す」のではなく、
「最初は“わかる2.5%”だけを見つけて、彼らに語る」
たとえば:
• 共感しやすい問題を抱えている人
• 似た問題意識・ビジョンを持つ人
• 他の革新を早く取り入れている企業や個人


◆ 怒りを糧に、語る相手を選ぶ
分かってくれない人に語りかけるのは、時に時間の浪費です。
「今わかる人」「最初に理解してくれる人」にこそ集中する。
その人たちが語り始めれば、やがて「多数」が動きます。
それがキャズム超えの瞬間です。


◆ 怒りと悲しみは、あなたが本気である証
あなたが感じた「怒り」や「傷つき」は、偽物ではありません。
それは、誰かの心を本気で動かしたかった証です。
つまり、あなたは“ただ作った”のではなく、信念を込めて世界に問いかけたということ。
だからその痛みは、誇るべきです。
その痛みこそが、他の誰にも真似できない“あなたの熱”なのです。


◆ 信念は、戦略によって花開く
信念は、戦略と出会ったときに初めて社会的価値として結実します。
情熱や想いがあるからこそ、それを届けるための“仕組み”と“順番”が必要なのです。
「あなたのつくったものを、必要としている人は、必ずどこかにいる」
その人に最短距離で届けるための道を、冷静に、でも熱く設計していきましょう。


◆ おわりに
信念を持って創造に挑むあなたは、社会にとって不可欠な存在です。
「理解されない」と感じたら、それは「時代がまだ追いついていない」だけ。
風が吹くまで、風を起こす準備を。
その風に乗る人は、必ず現れます。


”医療機器開発の支援に関わるなかで良く直面するのが「まずは良いものを作る」という開発志向が先行しがちで、ビジネスとしての成立条件、すなわち「誰が・どこで・いくらで・どれくらいの期間・どれだけ買ってくれるのか」という視点が後回しになるケースが非常に多いです。本来、製品開発とは「価値提供の手段」であり、市場の存在とニーズの明確化が出発点であるべきです。にもかかわらず、「ニーズがあると思う」「良いものを作れば売れる」という仮説の域を出ないまま開発が進み、結果として事業化できない事例が多発しています。

より良いものを世に送り出そうとする技術者や研究者の熱意には頭が下がります。しかし開発の本質は、社会や市場が抱える課題を解決し、誰かに選ばれる製品を作ることです。良いものを作るために開発しているのではなく、“売れるべき理由があるからこそ”良いものを作る必要があるのです。

特に医療分野は保険制度や規制、臨床ニーズの複雑さが絡み、単独企業での事業化が困難なケースも少なくありません。にもかかわらず、「自社だけで完結させよう」という視野の狭さが、結果として“完成したが売れない”製品群を生み出しています。いま必要なのは、製品開発という“作る”視点だけでなく、「誰が、どこで、どう使うのか」という“使われる”視点を持ち直すことです。そしてその上で、開発の初期段階から出口戦略を描くべきだと強く感じます。

“完成”よりも“検証”を――PoCを起点にした戦略的コンソーシアム構築のススメ


自社単独でリーチ出来る市場が小さい、制度対応が複雑、リソースが足りない。そんなときこそ、医療機器開発は“自前主義”を捨て、PoC(概念実証)を軸とした戦略的コンソーシアムの構築が有効です。
PoCとは「実現性の確認」であり、完成品を作ることではありません。むしろ未完成でも良いから、現場におけるニーズの適合性、有用性、導入可能性といった“採用のための条件”を検証することに価値があります。


自社単独では見えなかった顧客の声が、PoCを通じて可視化され、改良点が明確になります。連携するパートナー企業との分業体制により、開発リスクとコストも分散できます。製品の完成度にこだわりすぎて市場に出るのが遅れ、競合に先を越されるような事態も避けられます。


そして何より、PoCの設計段階で出口(事業化)の定義を行い、参画者間で共有することが成功の鍵になります。コンソーシアムを立ち上げるのであれば、共通ゴールは「売れる仕組み」であるべきです。
開発に情熱を持つのは素晴らしいことです。しかし、それだけでは社会に届きません。届けるには、戦略が必要です。PoCとは、技術と市場を繋ぐ“仮説検証の橋”なのです。


出口を見据えた戦略が重要です。


製薬業界には見られない構造的なリスクが潜んでいます。それは「制度依存リスク」です。

■ 売上は“顧客”ではなく“制度”に決められる
製薬業界では、製品価格は市場ではなく、国が定める薬価制度によって決まります。つまり、価格交渉の相手は医師や病院ではなく厚生労働省です。
さらに薬価は2年ごとに見直され、売上が伸びるほど価格が下がる「市場拡大再算定」も適用される、つまり成功するほど売上が減るというジレンマが存在するのです。


■ 社会保障費という“制度の天井”
高齢化による社会保障費の増加は国家の財政問題です。その抑制は国の至上命題であり、医療費、特に高額薬剤のターゲティングは年々強まっています。
医療経済性(費用対効果)評価によって、高価格帯の薬剤は保険償還外や使用制限という制度的リスクにさらされるのが今の現実です。


■ “AI”では読めない制度変更のリスク
近年は、AIによるレコメンドや予測が営業活動の中心になりつつあります。
しかしAIは「過去のデータから未来を推測する」ため、制度変更のような“非連続”かつ“人為的”な変化を正確に予測することは苦手です。
AIの動的分析は、すでに起きた変化や行動のトレースには有効でも、「もし制度がこう変わったら?」という仮説と意思決定を扱う“戦略的判断”には限界があるのです。


■ 静的分析で“戦う場所”と“守るべき資源”を定める
こうした不確実性に立ち向かうには、現在の競争環境を捉える静的分析が欠かせません。
どの市場に注力するのか?
どの競合と戦うのか?
どのチャネルにリソースを集中するのか?
市場環境の変化に俊敏に対応して競争優位性を得るためには、一時の流行やデータの“熱”に流されず、論理と構造に基づく冷静な判断が必要です。
静的分析があってこそ、外部環境要因の変化による影響を分析し、柔軟かつ迅速な戦略修正が可能になります。


■ 「制度が変わる」は「戦場が動く」に等しい
多くの製薬企業が「5年後の成長」を描きますが、その未来が実現するかどうかは、科学でも、マーケティングでもなく、制度という“外力”に左右される側面が大きいのです。
だからこそ今、静的分析による戦略設計と、変化を見越した複数シナリオの構築こそが、AIでは補えない人間の仕事であり、経営判断の核心となります。


そこで重要になるのが、S(戦略立案)→ P(行動設計)→ D(実行)→ A(分析)というSPDAループです。このSPDAループは、変化する競争環境に対して柔軟に対応しながら、現場の行動を戦略と一貫性をもって設計・実行・評価するための仕組みです。そして最後のA(分析)では、CRMに蓄積された活動データや成果データをAIで動的に分析し、成功要因(KSF)を可視化します。
DXS Stratify®は、医薬品市場における市場規模、競争環境、競合優位性を定量的に可視化する分析アプリケーションです。

「最適な戦略は常に外部環境の変化によって相対的に変わる」
そして、そのときに戦略を変えられる仕組みを持っているかどうか、それが、生き残る企業と沈む企業を分ける分水嶺となるでしょう。

“共通言語”という武器──DXS Stratify®がつなぐ本社と営業の戦略クロストーク
営業は「観察の視点」を持ち、本社は「データの視点」を持っています。
しかし、この二つがうまく噛み合っていない企業は、意外と多いものです。


営業の方々は、「本社は現場をわかっていない」と感じることがあるでしょう。
一方で本社側は、「もっと根拠のある情報がほしい」と思っているかもしれません。


このすれ違いの原因は、能力や熱意の違いではなく、“話す言語が違う”ことにあります。 だからこそ、両者が同じ土俵で会話できる“共通言語”が必要です。


その役割を果たすのが、数理モデルを用いた静的分析です。
医薬品販売データベースをもとに、シェアポジションやシェアギャップを算出し、競争優位性を定量的に可視化することができます。


たとえば、本社が策定した戦略が現場でうまく機能していないとき、営業は単に「うまくいきません」と伝えるのではなく、「このエリアでは競合とのシェアギャップが大きく、逆転の可能性が低い」と、具体的かつ根拠あるフィードバックが可能になります。

また、営業が「ここは攻め時だ」と直感的に感じる場面でも、数値をもとに「シェアギャップが小さく、逆転のチャンスがあるターゲットである」と裏付けることができます。


このようにして、営業の暗黙知が形式知へと変換され、本社の形式知が現場と結びついて“共有知”へと昇華されていくのです。この共有知があることで、現場での判断はより戦略的に、本社の方針はより実行性を持つようになります。

静的な分析にとどまらず、リアルタイムの変化を捉えて即座に軌道修正できる、動的な意思決定のサイクルが回り始めます。従来のPDCAは、ある程度予測可能でルーチン化された業務には有効ですが、不確実性の高い環境や複雑な市場状況では限界があります。

そこで重要になるのが、S(戦略立案)→ P(行動設計)→ D(実行)→ A(分析)というSPDAループです。このSPDAループは、変化する競争環境に対して柔軟に対応しながら、現場の行動を戦略と一貫性をもって設計・実行・評価するための仕組みです。

そして最後のA(分析)では、CRMに蓄積された活動データや成果データをAIで動的に分析し、成功要因(KSF)を可視化します。

これにより、属人的でブラックボックス化しがちな“AIによるサジェスチョン”を、再現可能な知識へと転換することができます。

戦略は、本社だけが決めるものでも、現場が“なんとなく”で動くものでもありません。
両者が対話を通じて、一緒につくり上げていくものです。

この形式知と暗黙知のクロストークを支える共通言語こそが、DXS Stratify®です。
DXS Stratify®は、医薬品市場における市場規模、競争環境、競合優位性を定量的に可視化する分析アプリケーションです。

営業が持つ「現場感覚」と、本社が持つ「分析知見」を、“数字”という共通言語で結びつけます。
戦略は、知識の蓄積だけではなく、知識の“流通”がなければ機能しません。
共有知とは、知識を資産から武器へと変えるための“パスワード”のようなものです。

DXS Stratify®のようなツールが共通言語となることで、共有知の生成が加速し、組織がひとつの頭脳として、戦略的に動ける状態を実現できます。

それこそが、競合との差を生みだすための起爆剤となるのです。

「どうぞメモ代わりに撮ってください。」

先日、登壇の機会をいただいたあるビジネスセミナーで聴講者の方々にそう伝えました。
会場では「撮影禁止」のアナウンスがされていましたが、私はあえて許可することを伝えました。

なぜか?
その日のスライドや構成の多くの部分で、AIの力を借りてつくったからです。

つまり、誰でも再現できる。
“再現性100%”のコンテンツだったからです。


当日、私が語ったことに共感してくれた方がいたとしたら、それはもう「あなたの常識」になっています。
その瞬間から、それは私だけの知識ではなく、社会の共有知になったのです。


では、こんな時代に「専門家」は何を語るべきでしょうか?

かつて、専門家とは“知っている人”でした。
情報を独占し、特別なスキルをひけらかし、
「これは我々の世界の話なので、一般の方にはわかりません」などと言っていた時代もありました。

でも今は?
検索すれば答えは一瞬で出てきます。
AIに聞けば、昨日までの知識は即座に得られます。


もはや、知識を持っていることに価値はない。
それを「どう使うか」がすべてです。

「専門家だから偉い」と思っている人がいたら、それはもう危険信号かもしれません。
“分かる人にだけ分かればいい”という上から目線では、誰の信頼も得られません。


これからの専門家に求められるのは、
知識を語ることではなく、知識で“何かを変える”こと。

・誰かの課題を解決する。
・気づきを引き出す。
・新しい価値を生み出す。

つまり、ただの“解説者”ではなく、“変化の実行者”であるべきです。


私がセミナーで撮影をOKにした理由も、そこにあります。
私が語ったことをそっくりそのまま真似できたとしても、それで得られるのは「再現性のある情報」までです。その知識をどのように使い活かすかは再現することが難しいからです。


今、知識の“所有”ではなく、“活用”にこそ価値が生まれる時代。専門性は、「説明」ではなく「創造」に使われてこそ意義を持ちます。

― 営業戦略に「地政学」の発想を ―

営業戦略に“地政学”という言葉を使うと少し大げさに聞こえるかもしれません。しかし、地政学とは本来「地理的条件と力のバランスが、戦略的判断にどう影響を与えるか」を考える学問です。これはビジネスにおいても非常に有効な視点であり、特に競争が激しく、差別化が難しい製薬業界においては、まさに必要とされる発想ではないでしょうか。

DXS Stratify®は、この“営業地政学”という考え方を、単なる比喩ではなく、数理モデルによって実践レベルに落とし込んだアプリケーションです。医薬品販売データベースをもとに、各顧客(病院やクリニック)を「市場規模 × 競争地位 × 競争優位性」の3軸で分析し、戦略的に価値のあるターゲットがどこにあるのかを“地図”として描き出します。

この地図によって見えるのは、リソースを集中すべき場所と、撤退や維持で十分な場所との明確な境界です。つまり、勝つべき市場を選び、限られた営業力を効果的に配置する“戦力配分の最適解”を導くことができるのです。

さらに、DXS Stratify®の強みは、静的分析で終わらないことです。KPI設計とCRMを連動させることで、実行フェーズの可視化と管理までをサポートし、PDCAに頼らない新しい意思決定ループ「SPDAループ」の構築を可能にします。

従来のPDCAは、ある程度予測可能でルーチン化された業務には有効ですが、不確実性の高い環境や複雑な市場状況では限界があります。そこで重要なのが、**S(戦略立案)→P(行動設計)→D(実行)→A(分析)**という一連のループです。
このSPDAループは、変化する競争環境に対して柔軟に対応しながら、現場の行動を戦略と一貫性を持って設計・実行・評価するための仕組みです。

そして最後のA(分析)では、CRMに蓄積された活動データと成果データをAIで動的に分析し、成功要因(KSF)を可視化。属人的でブラックボックス化しやすい“勝ち筋”を、再現可能な知に変えていきます。

感覚ではなく、戦略で動く営業へ。
単なるトラッキングにとどまるPDCAではなく、不確実性に適応しながら、成果を導くためのSPDAループの実装こそが、これからの営業組織に求められる進化です。

今こそ、“地図なき営業”から、“戦う地図”を持つ営業へと変革する時です。

消費者の購買行動を説明する際、長年使われてきたのが「AIDMAモデル」です。
Attention(注意)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)という5段階の流れは、まさにマスマーケティング時代の購買プロセスを象徴してきました。

しかし、近年の消費行動を見ていると、このような“直線的な購買プロセス”では説明しきれないケースが増えてきました。

たとえば、「SNSで流れてきたコスメが可愛かったから即購入」「話題のカフェに行ってみたかったから予約」「このブランド、なんとなく世界観が好きだから選んだ」といった行動。そこには、「〇〇が欲しいから情報を探した」ではなく、むしろ「目に入ったから欲しくなった」という流れが存在します。

つまり、消費財においては、“ニーズ”が必ずしも明確な目的から生まれるものではなく、時に“手段”としてのニーズが“目的”化しているのです。

「癒されたい」「変化を感じたい」「誰かと共感したい」といった抽象的な感情が先にあり、その感情を満たす行動や商品が“目的”になる。
この構造は、医薬品などの機能的商材とは大きく異なります。

医薬品の場合、ウォンツはあくまで治療という明確な目的を達成するための「手段」です。選択はガイドラインやエビデンスに基づき、感情や共感ではなく、合理性と制度に根ざしています。

一方で消費財は、ウォンツが目的そのものになり得る。
そのため、行動変容モデルも変化せざるを得ません。

このような変化に対応するかたちで、近年はAIDMAの派生モデルも数多く登場しています。
たとえば、AISAS(検索→共有を含む)、ULSSAS(共感→検索→購入→シェア→共感のループ)、SIMA(Sympathy→Interest→Memory→Action)などです。

これらはすべて、「目的と手段が入れ替わる」現代の消費スタイルに合わせ、より循環的で感情主導型のフレームへと進化しようとする動きといえます。

ニーズはもはや、与えられた課題に対する“解決策を探す起点”ではありません。
生活者自身が「こういう気分でいたい」「こうありたい」と感じる、その瞬間に立ち上がる“自己目的化された欲求”なのです。

私たちがマーケティングを考えるとき、行動モデルそのものの前提を問い直す必要があるようです。

日本の製薬業界は、今後5年間で大きな転換点を迎えると予測されています。内資系製薬企業TOP10の売上は、2025年の約12.3兆円から2030年には約14兆円へと成長する見込みです。年平均成長率はおよそ2.6%と緩やかですが、第一三共や塩野義製薬のように高成長を遂げる企業も登場しています。とくに塩野義製薬は新型コロナ関連製品と抗ウイルス薬分野の強みを活かし、年平均成長率11.7%と驚異的な伸びが予想されています。

一方で外資系製薬企業TOP10は、2025年の約2.4兆円から2030年には約3兆円まで拡大し、年平均成長率は4.6%と内資系を上回ります。アストラゼネカやイーライリリーなどが牽引し、がん、自己免疫疾患、糖尿病・肥満領域での新薬が成長ドライバーとなっています。とくにアストラゼネカは9.1%という高成長を見込まれ、外資系の中で存在感を一層高めるでしょう。

このように内資と外資では戦略が大きく異なります。内資系は規模の優位性を維持しつつも、薬価制度改革や研究開発費の増大といった国内市場特有の課題に直面しています。そのため、グローバル展開とイノベーションによる競争力強化が不可欠です。一方、外資系はスペシャリティ医薬品への注力とグローバル戦略を武器に、着実にシェアを伸ばしています。

今後、日本の製薬業界は国内外問わず、革新と選択と集中が一層問われる時代に突入すると言えるでしょう。

「売れる商品をつくるには、顧客のニーズを掘り起こせ」
マーケティングの常識とも言えるこの考え方は、確かに消費財ビジネスでは有効です。なぜなら、消費財におけるニーズは、多くの場合“潜在的で漠然としたもの”だからです。

たとえば、「癒されたい」「自分を変えたい」「日々を少し快適にしたい」――。こうしたニーズに対して、「この香りで癒される」「このデザインなら自信が持てる」といった具合に、商品自体がウォンツ(欲求)となり、やがてそれが“目的”として消費されていきます。つまり、消費財では商品そのものが主役になるのです。

しかし、同じアプローチを医薬品ビジネスに当てはめると、まったく様相が異なります。

医薬品の世界において、ニーズとは患者の疾患や症状という“医療課題”であり、ウォンツとは、それに対して医師がガイドラインや科学的エビデンスに基づき選択する治療手段です。薬剤は“必要だから処方される”のであり、“欲しいから選ばれる”わけではありません。

つまり、医薬品はあくまで「目的を達成するための手段」であって、商品そのものが主役になることはありません。主役はあくまでも患者と、その疾患に向き合う医師の診療判断です。

この違いを見誤ると、医薬品マーケティングにおいても、「ブランド認知を高めよう」「感情的に訴求しよう」という消費財的アプローチに偏ってしまいます。ですが、医師が薬剤を選ぶ理由は、「納得できる根拠があるか」「診療スタイルに適合しているか」といった構造的・科学的な納得感に基づくものです。

したがって、医薬品ビジネスにおいて必要なのは、“感情的に刺さる訴求”ではなく、“理性的に腑に落ちる支援”なのです。

医薬品を単なる商品として捉えるのではなく、科学的根拠に基づいた“適応されるべき手段”として位置づけること。これが、製薬企業にとっての真の競争力となる視点です。

ビジネスの世界は、勝者がすべてを持っていく「ウィナー・テイクス・オール」の時代です。もともとは選挙用語だったこの言葉ですが、いまやインターネットビジネスを中心に、あらゆる業界にその現象が広がっています。

検索エンジンならGoogle、ECならAmazon、動画ならYouTube。どれも高いシェアを誇り、競合他社を大きく引き離しています。これらの勝者たちは一度得たシェアと顧客からさらにデータを蓄積し、サービスを強化し、ますます差を広げていく。こうして「勝者総取り」の構図が加速していきます。

そして恐ろしいのは、この構図がプラットフォーム企業だけでなく、利用者同士にも当てはまること。YouTuber、インフルエンサー、ECサイト…一握りのトップ層が膨大な利益を上げ勝ち続ける一方で、多くの人は奪われ続け、市場から駆逐されることになります。これが現実です。

では、私たちはどう戦い、生き残ればいいのでしょうか?
まず、「なぜ彼らが勝ち続けているのか?」を冷静に分析することが重要です。GAFAは偶然勝ったわけではありません。時代を読み、戦略的に意思決定を行い、市場内の強者であることを続けてきたからです。

そして、自社がその勝者と真っ向から戦って勝てる立場なのかを見極める。もし難しいなら、“勝てる戦場”を探すこと。特定の地域やニッチ市場、新たなサービスなど、自社の強みが活かせる場所があるはずです。

資本主義のルールは残酷ですがシンプルです。「自社の強みを最大化し、勝てる場所で、徹底的に届ける」。につきます。