日本の医薬品市場は現在、構造的な変化のただ中にあります。薬価改定の繰り返しやジェネリック医薬品の浸透により、長期収載品の価値が低下し、市場規模は縮小傾向にあります。主要8社の国内売上高を見ると、多くの企業で前年割れとなっており、この傾向は今後も続くと予想されます。

一見すると、為替の変動や海外市場の成長によって企業業績が安定しているように見えるかもしれません。しかし、国内市場の縮小は、企業の収益基盤を揺るがしかねない深刻な問題です。各社は販管費の削減をはじめとするコスト圧縮策を加速させていますが、それだけでは根本的な解決にはなりません。

このような状況が続けば、国内売上高の構成比はさらに低下し、医薬情報担当者(MR)の配置見直しや削減、共同販促による固定費分担など、販売体制の再構築が避けられなくなるでしょう。その結果、販売カバレッジの維持コストは上昇し、国内市場向けのパイプラインの優先度が下がり、国内専用の製造ラインも整理・統合されると考えられます。中堅企業では、海外M&Aによる事業ポートフォリオの分散を進める動きがさらに活発になるかもしれません。

さらに、5年から10年後には、国内医薬品市場の成長率は停滞し、政府による供給確保策の検討や、受託製造・卸売業界の再編が進行する可能性もあります。このままでは、日本の医薬品市場は、研究・イノベーションの拠点としての重要性こそ維持されるものの、収益源としての地位は相対的に低下していくでしょう。

こうした中で製薬企業が生き残るためには、グローバルでの成長可能性が高い品目への集中投資、アセットライトな日本事業モデルの構築、薬価制度改革への積極的な提言、為替差益を活用した海外資産の取得、リージョナル製造ハブの最適化など、多角的な戦略が不可欠です。

また、こうした変化は製薬企業だけでなく、患者や医療従事者、卸・流通業界、政府・規制当局など、医薬品エコシステム全体に影響を及ぼします。たとえば、ドラッグラグの拡大や希少疾病薬の国内導入の遅れ、卸・流通業界の利幅縮小と再編、政府・規制当局における産業雇用の維持と医療費抑制の両立といった課題が顕在化する可能性があります。

企業には、変化のスピードに柔軟に対応し、主体的に事業規模を最適化するとともに、グローバルな視点に立った戦略の構築が求められています。

ニュースソース

市場縮小、人口減少、経済停滞。こうした環境が常態化する中で、私たちが立っている市場は、もはや成長を前提とした「競争なき空間」ではありません。顧客は自然には増えず、競合は寡占化し、ゼロサム型の奪い合いが当たり前となりました。


この現実を前に、従来の3C分析(Customer, Competitor, Company)もリブートする必要がありそうです。


なぜ従来の3Cが機能しなくなったのでしょうか。
まず、Customer(市場)についてはどうでしょうか?
かつては、顧客ニーズに対応すれば市場は自然と広がると考えられていました。しかし今は、ニーズの多様化と消費選別の進行により、単純な「顧客理解」だけでは売上拡大に結びつかなくなりました。さらに、人口減少により市場そのものが縮小し、顧客の獲得は「誰かから奪う」ことが前提となってきています。


次に、Competitor(競合)についてはどうでしょう?
従来は競合を把握し、差別化を図れば優位に立てるとされてきました。しかし現在は、競合の数が減る一方で、生き残った企業同士の競争が激化し、差別化だけでは十分にシェアを確保できません。競合のシェア動向や、どの領域で競争が激しくなるかまで精緻に読み解く必要があるのです。


そして、Company(自社)についてです。
これまでは、自社の強みやリソースを活かして成長戦略を描くことが基本でした。しかし現代では、自社努力だけでは拡大できる余地が小さくなり、どの市場区画で、どの競争構造を前提に戦うかを明確に定めなければ、資源が分散し、結果的に競争に飲み込まれてしまうリスクが高まっています。そのためオープンイノベーションやコンソーシアム型のビジネスモデルが見られるようになってきました。
このように、3Cをそれぞれ個別に眺めるだけでは、競争優位を築くことが難しい時代になりました。


これからの3Cリブートでは、
• Customerは単なる市場規模ではなく、「競合間のシェア分布」や「スイッチング要因」で捉えます。
• Competitorは競争市場であることを前提として、「競争地位」や「競争優位性」まで踏み込んで分析します。
• Companyは自社強みを「どこに集中配分すれば自社だけの強みとすることができるか」という観点で捉え直します。


つまり、市場・競合・自社を静的に整理するのではなく、動的な力学として読み解き、どこからシェアを奪い、どこを守るかを設計することが、これからの3Cの本質です。


市場が自然に拡大する時代は終わりました。これからは、「誰かの顧客を、いかに自社に引き寄せるか」が勝負になります。


競争構造力学を読み解き、適切にリソースを集中できる企業だけが、縮小市場においても確実に勝ち続けることができるのです。

2005年に登場し大きなインパクトを与えた『ブルーオーシャン戦略』は、競争の激しいレッドオーシャンから脱し、競争のない新たな価値空間=ブルーオーシャンを切り拓くことを提唱しました。成熟市場における差別化困難と価格競争から逃れる処方箋として、当時の企業戦略に革新をもたらしました。
しかし2020年代の現在、私たちは新たな局面に立たされています。かつてのブルーオーシャン戦略が前提としていたのは、「市場の広がり」や「未開拓な顧客層の存在」でした。しかし、今私たちが直面しているのは、人口減少、消費の選別化、業界間の垣根の解消による競争激化といった“市場そのものが縮小していく”状況です。
このような市場環境において、従来型の「ブルーオーシャンを探す」アプローチには限界が見えてきています。


■ 縮小市場下では“ブルー”の罠に陥る
現在、再び注目を集めているのが、ニッチ戦略やバーティカルなマーケット開拓です。狭く、深く、他社が入ってこない空間をブルーオーシャンと捉える考え方です。
しかし、ここには重大な落とし穴があります。市場が縮小する中で“誰もいない空間”を探すと、それはしばしば「顧客がいない市場」になってしまうリスクがあるのです。
つまり、ポジショニングとしては正しくても、ビジネスとしてスケールしない。顧客が少なすぎて採算が取れない。特にBtoB領域では、この傾向が顕著です。製品やサービスの設計、流通、マーケティングにかかる固定コストを回収できない“儲からないブルー”が量産されてしまう恐れがあります。


■ 「ブルーの質」が問われる時代へ
だからこそ今、求められるのは「誰もいない市場」ではなく、「誰もまだ仕組み化していない市場」への目線です。すでに顕在化しているが複数の業界が曖昧に関わっていて、明確な主役が不在な市場。たとえば医療×介護、製薬×デジタルヘルス、物流×エネルギーのような境界領域(インターフェース市場)です。
このような場面では、既存の資源や強みを組み合わせ直し、新たな「利用文脈」や「サービス設計」で市場構造自体を再構成することが求められます。まさに、競争回避ではなく「構造設計による価値創造」を志向したブルーオーシャン戦略の進化形です。


■ 市場縮小期の“ブルーオーシャン戦略Reboot”とは?
縮小市場における戦略の本質は、「広げること」ではなく、「焦点を絞って構造を変えること」にあります。ターゲットを狭めることは避けられませんが、それを“狭さ”ではなく“深さ”と捉える視点が必要です。
そのために有効なのは、
• 市場ではなく課題起点で考えること
• 隣接領域との境界に立ち、役割の再定義を行うこと
• 仕組みやルールを設計するプレイヤーを目指すこと

です。


つまり、これからのブルーオーシャンとは、“空白”を探すのではなく、“接点”をつなぎ直す戦略へと進化する必要があります。
競争のない市場を探すのではなく、競争の意味そのものを変える。そのための知恵と構想力こそ、ブルーオーシャン戦略の“リブート”に求められるのです。

DXS Stratify®は、製薬企業の売上拡大を目的とした販促支援ツールではありません。むしろ、製薬市場の構造が「拡大から縮小」「競争から淘汰」へと転じる中で、医薬品アクセスの持続可能性と公平性を守るための“構造最適化の手段”として設計されたツールです。


製薬企業の短期収益を最大化することが目的ではない

従来の営業支援ツールやCRM連携型のソリューションは、「訪問頻度を上げて成果を出す」「高シェア施設に集中する」といった、売上最大化ロジックに従って資源配分を偏らせる傾向があります。

結果として、

  • 情報提供が過度に重複する施設(営業過多)
  • 担当がつかない医療機関(営業空白)
    という構造的不均衡が発生し、アクセス格差が拡大してしまうケースも少なくありません。

❷ DXS Stratify®は「営業活動の最適化」ではなく「医薬品アクセスの最適化」

DXS Stratify®の設計思想は、企業の強みが発揮できる“最適戦場”を明確化することで、非効率な競争を避け、健全な棲み分けと供給安定性を実現することにあります。

これは、

  • 市場構造を可視化し、
  • 競合との相対優位を分析し、
  • リソースの配分を戦略的に再構築する
    というプロセスによって、個社の業績と社会的医薬品アクセスのバランスを両立させるものです。

❸ “勝てるところに集中する”ことは、供給継続性・地域医療体制の維持にもつながる

製薬企業の戦略的撤退が進みすぎれば、医療現場での製品選択肢が失われる事態も起こり得ます。
特に中堅・内資系企業が対応してきた領域(例:希少疾患、後発品、特定診療科)での退出は、地域医療や患者の選択権の消失=アクセス喪失に直結します。

DXS Stratify®は、企業が“無理な競争を避けて生き残る戦略”を描くためのインフラであり、これは結果的に、

  • 医薬品供給体制の多様性維持
  • 特定製品への依存リスクの回避
  • 医療現場での情報提供機会の確保
    といった社会的価値の維持に寄与するものです。

政策・行政・第三者機関との対話にもつながる「共通言語」

DXS Stratify®の分析結果は、

  • 地域ごとの営業格差
  • 疾患領域ごとの戦略的空白
  • 販売集中が引き起こす医療過密と医療空白

といったデータを可視化できるため、製薬企業内に留まらず、

  • 医療政策立案者
  • 規制当局
  • 医療経済研究機関
    との共通言語として機能します。

つまり、企業の意思決定と医療政策をつなぐ“インフラ型ソリューション”であると言えます。


結論:

DXS Stratify®は、「売上を増やすために営業先を選ぶ」ためのツールではありません。
「アクセスの偏在や供給の不安定化という社会課題に対して、戦略的視点から構造的にアプローチするための意思決定インフラ」です。

製薬企業の持続可能な競争力を支えながら、医薬品アクセスの公平性と質を守る。
そのバランスを実現するために、DXS Stratify®は開発されました。

DXS Stratify®のフォーミュラリ活用可能性と社会的意義について


1. はじめに

近年、我が国の医薬品市場はゼロサム型競争への転換や外資系企業による寡占化の進行、中堅・内資系企業の弱体化といった構造的変化を迎えており、それに伴い医薬品アクセスの持続性と公平性に対する懸念が高まっている。
こうした状況の中で注目されているのが、標準的薬剤の選定と供給を体系的に管理するフォーミュラリ(Formulary)の導入である。
本資料では、当社が提供する
市場構造および競争優位性の可視化ツール「DXS Stratify®」が、フォーミュラリの企画・運用においてどのように応用可能であり、いかに医薬品アクセスの最適化に貢献するかを示す。


2. DXS Stratify®の概要

DXS Stratify®は、製薬企業の営業戦略・マーケティング戦略において、市場規模、競合ポジション、競争優位性といった定量指標を基に医療機関単位での戦略分析を行う特許取得済みアルゴリズムである。
従来のCRMやBIツールが担う「活動の記録・効率化」に留まらず、「戦うべき市場と施設」を定量的に特定し、人的・情報的リソースの最適再配分を支援する


3. フォーミュラリへの応用可能性

フォーミュラリは、本来「適正使用と費用対効果の観点から、医療機関・地域・保険者が治療に用いる薬剤を選定・管理するための戦略的枠組み」であり、以下のプロセスを内包する:

  • 同効薬比較および優先順位付け
  • 医療資源と疾患構造の地域特性把握
  • 医療機関間での採用方針の整合化
  • 治療標準化と財政負担の抑制

DXS Stratify®は、これらの判断に対して以下のように貢献可能である:

領域応用内容期待される効果
採用薬剤選定支援市場規模や競合状況を定量化し、必要性・合理性の高い薬剤を可視化薬事委員会等での採用理由の裏付け強化
地域フォーミュラリ構築支援地域別の医療機関ニーズ・競合構造を分析「地域最適」の薬剤選定と供給計画を可能に
製薬企業の対応戦略設計採用・非採用病院の構造的差異を分析し、適切なリソース配分を設計営業活動の効率化とアクセスギャップ解消に貢献
政策連携地域偏在・営業空白の可視化による医薬品アクセス政策への応用社会的価値の明確化、レギュラトリー・パブリックアフェア対応にも寄与

4. 社会的意義と波及効果

DXS Stratify®の活用は、企業の業績向上にとどまらず、以下のような社会的課題解決にもつながる:

  • 情報提供が届かない医療機関・地域へのアクセス補完
  • 医療機関の薬剤選定の合理性・説明性の向上
  • 医療提供体制の多様性と持続性の確保
  • 医療費の適正化と治療の標準化支援

これにより、「薬剤の公平な選定」と「情報アクセスの地域格差是正」を同時に実現する構造的ソリューションとして、フォーミュラリ推進における強力な意思決定支援ツールとなり得る。


5. 結論

DXS Stratify®は、単なる営業支援・売上拡大ツールではなく、医薬品の公平かつ持続的なアクセスを支えるための“戦略的インフラ”である
フォーミュラリ運用における分析基盤として応用することで、病院・地域・企業の意思決定を科学的に支援し、結果として医療全体の構造最適化に資するものであると考える。


1985年にマイケル・ポーターが提唱した「バリューチェーン」は、企業が価値を生み出すプロセスを分析する上で、戦略論の基礎となる重要なフレームワークでした。原材料の調達から生産、販売、サービスという一連の流れを「鎖」として捉え、多くの企業がコスト削減や効率化を実現してきました。


しかし、現代の市場はポーターの時代とは大きく様変わりしています。顧客ニーズは多様化し、製品やサービスの開発は自社だけでは完結せず、サプライヤー、顧客、業界を超えたパートナー、時には競合他社との「共創」が不可欠になっています。価値はもはや一方通行の「鎖」ではなく、多様な関係者が関わるダイナミックな「ネットワーク」の中で、共に創り上げ、進化するものへと変化しているのです。このような変化の中で、従来のバリューチェーンは限界を迎えています。

チェーン思考の限界
バリューチェーンは、内部最適化、垂直統合、そして自社完結型のビジネスモデルを前提としています。そのため、オープンイノベーション、アライアンス、外部パートナーとの協業といった、現代ビジネスの重要な要素に対応することが難しいのです。また、価値が「企業→顧客」という一方向に流れるという考え方では、顧客との交流、SNSでの評判、ユーザーエクスペリエンス(UX)といった、目に見えない価値を捉えることができません。


「バリューネットワーク」という新たな視点
そこで、バリューチェーンの時代に終止符を打ち、「バリューネットワーク」という新たなフレームワークを取り入れるべきです。
バリューネットワークとは、価値が単一の企業内にとどまらず、複数の関係者の間で「分散・共創」されるネットワーク構造を前提とした考え方です。サプライヤーだけでなく、顧客、技術パートナー、プラットフォーマー、さらには競合他社もネットワークの構成員となり、価値の起点と終点が固定されない、流動的なエコシステムを形成します。
この考え方では、従来の「自社が中心」「プロセス効率の最大化」という内向きの視点から、「誰とどのように連携するか」「どこで価値を生み出すための触媒となるか」という、外部との相互作用を重視した設計が求められます。


バリューネットワーク思考で戦略を再考する
例えば、製薬業界では、バイオベンチャーとの共同開発、大学との知的財産提携、患者コミュニティからのフィードバック活用など、製品の開発から普及に至るまでを「共創の場」として捉えることができます。サプライチェーンの効率性だけでなく、「どの接点で誰と価値を共創するか」という連携戦略が、競争の鍵を握るのです。
また、マーケティングにおいても、SNSや口コミなど「顧客による価値の拡散」は、ネットワークとして捉えることで初めて戦略に組み込むことができます。顧客はもはや「価値を届けられる対象」ではなく、「価値を共に創造し、広げるパートナー」なのです。


戦略の中心は、企業から「つながり」へ
これからの戦略思考は、「自社の強みは何か」ではなく、「誰とどのように連携し、どこで価値を生み出すか」を中心に据える必要があります。従来のチェーンの発想では、複雑化した顧客価値全体を捉えることは不可能です。 私たちは、「管理する鎖」から「つながりをデザインする網」へと発想を転換しなければなりません。バリューチェーンからバリューネットワークへ—それは、単なるフレームワークの変更ではなく、企業の思考様式そのものを変革することなのです。

マーケティングの教科書に必ず登場する「STP」。
Segmentation(市場細分化)→ Targeting(狙う市場の選定)→ Positioning(差別化戦略の構築)という、マーケティング活動の設計図ともいえるフレームワークです。


しかし、その“基本”が、実務においては空回りするケースが目立ちます。
たとえば、STPのS(セグメンテーション)で「性別」「年齢」「職業」などのデモグラフィック属性を切ったものの、実際の購買行動と乖離していた。T(ターゲティング)でボリュームゾーンを狙って疲弊し、P(ポジショニング)で「安さ」や「安心感」といった抽象的な差別化に落ち着いた、、こんな“見覚えのある失敗”は、現場に山ほどあります。


なぜSTPはうまく機能しなくなったのか?
理由は明快です。顧客の可視化手段が進化したのに、STPの使い方が古いままだからです。
現代は、SNS、サブスク、1on1マーケティング、D2Cといった“個”を起点とする消費活動が主流です。属性だけで区切るのではなく、「文脈」「価値観」「瞬間の課題」で切り取らなければ、ターゲットは見えません。


つまり、STPは今、“定義の仕方”を再構築する時期に来ているのです。
たとえばこうです。


• Segmentation:属性ではなく、ニーズ文脈/カスタマージャーニー起点での分類
• Targeting:LTV(顧客生涯価値)や共有可能価値を重視した“拡張性ある狙い”
• Positioning:スペック比較ではなく、“選ばれる理由”を体験として再構成


STPは「順番にやればうまくいく」手順書ではありません。
それは“顧客との接点”を論理的に捉えるための設計思想です。


フレームワークを生かすも殺すも、使い手次第。
時代に合わせて再定義すれば、STPは今なお強力な武器となりえます。

「市場成長率」と「自社の相対シェア」で製品や事業を分類し、資源配分の優先順位を決める。
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)は、1970年代にボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が提唱した、経営戦略上の金字塔ともいえるフレームワークです。


当時は、成長市場に資源を集中投下すれば“スター事業”が育ち、いずれ“金のなる木”となって企業全体を支える、そんなシンプルなロジックが成立していました。しかし現代において、その前提が次々と崩れています。


たとえば、


• 市場成長率という指標自体が曖昧になり、成長市場=成功とは言い切れない
• 相対シェアの優位性は、デジタル化によってネットワーク効果やエコシステムの支配に変わっている
• そもそも「花形商品」や「金のなる木」という構図が成立するまでに市場の入れ替わりが早すぎる


さらに近年はサブスクリプション、D2C、リカーリングモデルといった新しいビジネスモデルが主流となり、「単体の事業でどれだけ利益を出すか」よりも、「LTV(顧客生涯価値)」「CAC(顧客獲得コスト)」といった顧客指標が資源配分の軸になりつつあります。


では、現代においてPPMはもう不要なのか?


答えはNOです。ただし“再定義”が必要です。
たとえば以下のような形で再構築することで、PPMは今なお有効な戦略思考ツールとなり得ます。


• X軸:市場成長率 → 収益性 or 顧客LTV
• Y軸:シェア → 競争優位性 or ブランドポジション
• 象限名も「スター」「問題児」ではなく、「集中」「育成」「維持」「撤退」と実務に即した表現に変える


PPMは、本来「意思決定の補助ツール」です。
フレームが古くなったのではなく、“意思決定の基準”が変化したのです。


だからこそ、我々に必要なのは「使える形でアップデートする力」、
クラシックフレームワークは、リブートすれば再び武器になるのです。

経済(Economy)、政治(Politics)、社会(Society)、技術(Technology)。この4象限で外部環境を俯瞰する「PEST分析」は、マクロトレンドを可視化する定番フレームワークとして広く知られています。製品開発や事業進出を考える上で、“自社ではコントロールできない環境要因”を把握するのに役立つものでした。


しかし、現代はPESTの想定を大きく超えた“環境の変化スピード”と“不確実性”の時代です。たとえばAIや生成技術の進化は、T(技術)領域の変化というより、むしろS(社会)やE(経済)の構造すら書き換える破壊力を持ちます。また、社会不安や分断、パンデミック、気候変動などは、それぞれが複数のPEST領域にまたがって連動し、静的な整理枠では到底読み切れません。


本来、PESTは「何が外部から影響を与えるか」を整理するためのフレームですが、今や「何が外部か」の定義すら揺らいでいるのです。SNSや口コミ、個人の発信が企業の評判を左右する時代に、“外部”と“内部”を明確に切り分ける意味はどこまであるのでしょうか。
そこで必要なのが、“PESTの再構築”です。


たとえば、


• 静的な分類ではなく、トレンドの勢力図・影響度・変化速度の三軸で評価する
• 領域の再定義として「P→Power」「E→Economy」「S→Sentiment」「T→Technology」などに読み替え、感情・認知・影響力を含める
• 最終的には、自社のKFS(Key Factor for Success)にどう接続するかという実務視点の接着が求められる


つまり、PESTとは「答えを出すための型」ではなく、「問いを広げるための地図」として使うべきなのです。
時代がフレームの寿命を超えたとき、私たちにできることはただ一つ。再定義し、再接続し、再起動(REBOOT)することです。

かつて高度経済成長の渦中にあった1960年代、アンゾフの成長マトリクスは“企業成長”を論じるうえで画期的な戦略フレームでした。既存市場×既存製品での「市場浸透」から、新市場×新製品の「多角化」まで、市場が拡大し続けることを前提とした成長の4象限は、多くの企業にとって明確な方向性を示しました。


しかし、令和の今、その前提はもはや幻想です。人口減少、成熟産業の飽和、コモディティ化、そしてゼロサムゲーム化。もはや「どこで拡大するか」ではなく、「どこで勝ち残るか」が問われる時代に入りました。つまり、アンゾフが前提とした“成長余地の存在”そのものが、現在では希少なものになってきているのです。


このような現代において、アンゾフのマトリクスを単体で用いるのは危険です。例えば、成長マトリクスに従って「新市場開拓」を選んだとしても、その新市場に需要が本当に存在するか、競合優位を築けるかの検証がなければ、単なる“迷走”になりかねません。


本来、アンゾフのマトリクスは外部環境分析(PEST、5フォース)や内部資源分析(SWOT、VRIO)などの前提分析を経た“戦略選択の地図”に過ぎません。市場ライフサイクルや競争構造を踏まえずに“成長”を描こうとすれば、資源配分を誤り、むしろ競争力を損なうリスクが高まります。


では、この古典フレームを現代の戦略にどう活かすか?
ひとつの答えが、“縮小市場適応型アンゾフ”の発想です。例えば、


• 市場浸透: 自社のシェア維持ではなく「競合のシェア奪取」に重点を置く
• 市場開拓: 新市場というより「既存市場の再定義」や「隣接市場の深掘り」
• 製品開発: 差別化ではなく「選ばれる理由」の再構築(コスト、UX、サポートなど)
• 多角化: 不況耐性を高める“リスク分散”よりも、“強みの応用”による近接展開


つまり、“成長=拡大”ではなく、“成長=生存可能性の強化”として読み替えるのです。


フレームワークに時代が追いつかなくなったとき、私たちがやるべきは捨てることではなく、問いの立て直しと意味の再定義です。
縮小市場を生き抜くために、いまこそ「アンゾフの再構築」が求められています。

■ MRのモヤモヤ
「訪問の優先順位に“意味と根拠”が持てない」ことで生まれる感情

• 「指示通りにちゃんと頑張ってるのに、手応えがない」
• 「上司から『なぜその活動が必要なの?』と聞かれると、自分でもはっきり説明できない」
• 「“成果が偶然だったのか、自分の戦略が当たったのか”がわからない」
→ 結果、行動に対する自信が持てず、“成果に再現性がない”ことが不安になっている


■ 所長・マネージャーのモヤモヤ
「戦略的なリソース配分や支援ができない」ことで生まれる感情

• 「この判断で正しいのか?と、常にどこかに迷いが残る」
• 「感覚で指示を出しているのでは?と自分でも思ってしまう」
• 「メンバーからの『それ、根拠あるんですか?』という目線が怖い」
→ 結果、マネジメントの納得感が薄く、“指導に対する自信の欠如”を感じている


■ マーケティング・本社企画のモヤモヤ
「現場と“同じ地図”で戦略を描けない」ことで生まれる感情

• 「現場の反応が薄いとき、どこかで“自分たちの戦略はズレてるのかもしれない”と感じる」
• 「データをもとに根拠を示しているのに、現場には『机上の空論』と言われてしまう」
• 「“誰のための戦略なのか”が分からなくなる瞬間がある」
→ 結果、企画の説得力に自信が持てず、“現場との距離感”に焦燥を感じている


■ 教育・研修部門のモヤモヤ
「“考える営業人材”を育てる実効性が持てない」ことで生まれる感情

• 「知識としては教えているが、現場で使われている実感がない」
• 「受講者から“現実とは違いますよね”と言われたときに言い返せない」
• 「この研修が本当に役立っているのか、正直よくわからない」
→ 結果、“机上の教育”への限界を感じ、“現場成果につながっていない虚無感”を抱いている


■ デジタル部門のモヤモヤ
「“成果につながるDX”を推進できない」ことで生まれる感情

• 「ツールを入れたのに、『で?』という空気になるのがつらい」
• 「“DX=現場の負担を増やすもの”と思われているような気がする」
• 「自分たちは頑張っているのに、何も変わっていないという空気がある」
→ 結果、“形だけのデジタル化”に陥っている虚しさと、“変化を起こせない無力感”が広がっている


■ 経営者・事業責任者のモヤモヤ
「“勝てる戦い方”が見えない/示せない」ことで生まれる感情

 「人も金も時間も限られている中で、今のリソース配分が本当に最適なのか不安になる」
 「何かを切る、絞るといった意思決定をするたびに、“それでよかったのか”という重みが残る」
 「現場からの報告や提案が“局地的・属人的”すぎて、全体戦略として整合性が取れない」
 「数字は報告されてくるが、“なぜその数字になったのか”を問うと、誰も答えられない」
 「何かが噛み合っていないと感じているが、どこが原因か特定できず、ずっと気持ちが悪い」
→結果、号令や旗振りでしか存在感を示せず、組織力を最大化できていないと感じる


■ 共通する“感情の正体”
こうした感情はすべて、「自分の判断や行動が正しいかどうか、確信が持てない」「動いても結果に結びついているかどうかが見えない」ことから生まれています。
つまり、全社共通の“戦略的な共通地図”が存在しないことが、全員の“自信の不在”を生み出している。
本来なら戦略は、すべての部門が“同じ地図”を共有し、
“同じロジック”で動けるものでなければいけません。


しかし実際は、
• 数字だけのKPIマネジメント
• 勘や経験に頼る現場判断
• 分断された情報と部門
こうした現実が、組織全体の“戦略の迷子化”を生んでいます。


彼らが求めているのは、「情報」ではなく「構造」です。
“判断できる状態”が整っていない限り、どんな資料も、どんな提案も、ただの「報告」にしか見えません。
DXS Stratify®は、その“構造”を数理的に、かつシンプルに可視化する仕組みです。
• 誰が見ても、どこで勝っているか/負けているかがわかる
• 市場性と競争優劣から、合理的に撤退・集中を判断できる
• 「人・金・時間」を、勝てるところに集中させる道筋が描ける


つまり、DXS Stratify®は、
「戦略的判断」に、確信と納得をもたらす武器です。