これまで製薬企業において、本社部門からの営業支援と営業部門の両方に携わる機会がありました。その経験の中で特に感じたのが、「目的が不明確なまま手段だけが一人歩きしている」ことが多いといことです。多くの企業では、営業活動を定量的に管理しようとKPI(重要業績評価指標)を設定します。しかし、そのKPIが具体的な目的や戦略に紐づいていなければ、ただの数字合わせに終始してしまい、本来の成果には繋がらないばかりか、営業現場との乖離を生む原因にもなっています。


KPIの一人歩きがもたらす問題
KPI自体は、営業活動を定量的に把握し、改善点を見出すための有用なツールです。しかし、以下のような状況では、むしろ逆効果になる場合があります:

  1. 目的の不明確さ
    KPIは戦略目標を達成するための手段であるべきですが、戦略自体が不明確な場合、活動の優先順位が曖昧になります。その結果、現場は「とにかく数字を達成する」ことに追われ、意味のある行動が失われるリスクがあります。
  2. 現場との乖離
    本社部門が設定したKPIが、現場の実態や顧客のニーズを十分に反映していない場合、現場の営業担当者にとっては非現実的な目標となり、やらされ感を生む原因になります。特に製薬業界では、顧客の行動変容プロセスの変動が大きく、観察により柔軟な対応が求められますが、単純な数値目標では現場の努力を正当に評価できないことが多くなります。
  3. マイクロマネジメントの増加
    KPIが独り歩きすると、数字の進捗ばかりに注目が集まり、本社部門が現場を細かく管理しようとするマイクロマネジメントに繋がります。これにより、現場の自主性が損なわれ、顧客への視点が失われることも少なくありません。

市場縮小期における戦略の必要性
市場が成長している時期であれば、手段が目的から多少ずれていても、大きな問題にはなりません。しかし、市場縮小期においては状況が大きく変わります。競争がゼロサムゲーム化する中で、限られたリソースを効率的に配分し、戦略的な意思決定を行うことが不可欠です。

具体的には、以下のような変革が必要です:

  • 戦略とKPIの連動:全体戦略を明確化し、それに基づいたKPIを設定することで、活動と成果を一致させる。
  • 現場の声を反映:KPIを設定する際には、現場の実態や顧客のニーズを取り入れ、現実的かつ意義のある目標を設定する。
  • 結果ではなくプロセスを評価:短期的な数字に固執せず、長期的な成果に繋がるプロセスを評価する仕組みを構築する。

例えば、マルチチャネルやオムニチャネルの推進において、本来であれば、顧客が最も情報にリーチしやすいチャネルを自由に選択できることが、個別最適化の目的であるはずです。しかし実際には、それらは製薬企業が顧客に情報を一方的に提供するための手段(エンクロー)と化しています。さらに、KPIで数値評価を行うことが優先されるため、顧客の個別最適化ではなく、営業担当者の活動を測る指標として利用されているのが現状です。

おわりに
目的が不明確なままKPIだけが独り歩きすると、現場と本社部門の信頼関係が損なわれ、最終的には企業全体の競争力が低下する可能性があります。特に市場縮小期には、戦略とKPIを連動させ、現場の力を最大限に活用できる仕組みが求められます。

「世界の上位1%が約40%の富を保有し、上位10%が約90%を保有している」といわれていますが、この主張の信ぴょう性はあるのでしょうか?この主張は一般的に正確であり、いくつかの信頼できる情報源によって裏付けられています。

クレディ・スイスの「グローバル・ウェルス・レポート」 は、富の分布データで最も引用される資料の一つです。数年間にわたり、世界の上位1%の富裕層が世界全体の富の約40〜45%を保有し、上位10%は80〜90%の富を保有していることを示しています。

格差是正に取り組む国際組織 オックスファム も、定期的に富の偏りを強調しています。その調査結果はクレディ・スイスのデータと一致しており、富がごく少数の層に集中していることを示しています。

トマ・ピケティやガブリエル・ズックマンなどの経済学者が率いる 世界不平等レポート でも、世界の富の不平等は極端であることが確認されています。例えば、2021年のレポートでは、上位10%が世界の富の76%を保有し、一方で下位50%はわずか2%しか保有していないことが示されています。

データの出所や測定方法(純資産 vs 所得)によって若干の差異はあるものの、富が上位層に集中する傾向は広く認識されており、厳密に研究されています。IMFや世界銀行、主要な経済調査のデータでも、その信ぴょう性は一貫して確認されています。

富の不平等が生じる要因

富の集中を引き起こす要因には、以下のようなものがあります:

  • 資本の蓄積:富裕層や企業は、資産の価値が平均的な所得成長よりも速く増加する投資を行っています。
  • グローバル化と技術革新:高度なスキルを持つ専門職やビジネスオーナー、投資家の利益が拡大する一方、多くの労働者の賃金は停滞しています。
  • 税の回避:富裕層は合法的な手段で税金を軽減し、さらに富を蓄積する傾向があります。
  • 相続資産:世代間での富の移転が、長期的に富の集中を引き起こします。

では 会社の利益配分 はどうなのでしょうか?経営者と役員、従業員の配分も世界の富の配分と同様なのでしょうか?


1. 利益配分の一般的な構造

会社の利益は通常、以下の3つのグループに配分されます:

  • 経営者・役員:経営判断を行う経営層。給与やボーナス、株式報酬などで利益の大部分を受け取ることが多い。
  • 従業員:日々の業務を担う従業員。基本給やインセンティブ、ボーナスで配分されますが、その割合は少ない。
  • 株主:会社に投資している人々。配当金や株価上昇益(キャピタルゲイン)を通じて利益を受け取ります。

2. 格差の傾向

多くの大企業では、CEOや役員の報酬 は一般従業員の平均給与の数十倍から数百倍に上ることが一般的です。

  • 例えば、米国 ではCEOの報酬は従業員の給与の300倍以上とされています(経済政策研究所, EPI)。

一方で、従業員の給与やボーナスの伸びは緩やかな一方、経営層の報酬や株主への配当は企業利益の大部分を占める傾向があります。

グローバル企業や株式公開企業では、「株主利益の最大化」が重視されます。その結果、利益の多くが配当や株価上昇を通じて株主に還元され、経営層も「株式報酬(ストックオプション)」を受け取ることが多いため、格差が拡大しやすくなります。


3. 世界の富の配分との類似点

会社内の利益配分は、世界の富の分配構造 と似た傾向を示します:

  • 上位層(経営層・役員・株主)が利益の大部分を保有
    世界の富の40%を1%が占めるように、企業内でも経営層や株主が大きな割合の利益を受け取ります。
  • 下位層(一般従業員)は少ない配分
    従業員は利益の一部しか受け取れず、相対的に「格差」が拡大します。

特に、大企業や資本主義の強い国ではこの傾向が顕著です。例えば、米国では株主優先主義が影響し、従業員よりも株主や経営層に利益が集中することが多いです。


4. 日本企業の特徴

日本企業では伝統的に「従業員重視の利益配分」が強調されてきました。例えば:

  • 年功序列ボーナス制度 により、従業員にも利益が比較的手厚く分配されていました。
    しかし、グローバル化株主重視の経営方針 の影響で、経営層と従業員の報酬格差は近年、拡大傾向にあります。

結論

企業の利益配分は、世界の富の分配構造に類似しており、上位層に利益が集中しやすい傾向 があります。

やはり、「金持ち父さん、貧乏父さん」は本当だったのかもしれません。

ビジネスの現場では、課題に直面すると、つい「じゃあ、どう解決するか」と手早く解決策を考えがちです。しかし、ここで立ち止まって考えてみてください。本当にその解決策は課題を解決するものでしょうか?

解決策を考える前にやるべきことがあります。それは、なぜ困っているのかという原因と、そこに至った経緯を明確にすることです。このプロセスを経ずに手を打っても、表面的な症状にしか対処できず、根本的な解決には至りません。

解決策は「手段」、目的が先にあるべき

解決策はあくまで手段です。手段は目的を達成するために存在します。目的が曖昧なまま動き始めるとどうなるでしょうか?
・解決策が的外れになる
・時間やリソースが無駄になる
・新たな問題が発生する

例えば、売上が伸び悩んでいるときに「広告を増やそう」と考えたとします。しかし、その原因が「顧客層の変化」や「競争力低下」にあるなら、広告だけでは効果は限定的です。むしろ原因分析をしっかり行い、目的を「新しいターゲット層へのアプローチ」と明確にすれば、手段(解決策)も最適化されるでしょう。

解決すべきは「真の課題」

ビジネスにおいて最も重要なのは、「真の課題を見極めること」です。そのためには、現状を冷静に分析し、なぜ問題が起きているのか、どうして今の状況に至ったのかを徹底的に掘り下げることが必要です。

手段に飛びつかず、まずは目的を明確にする。このシンプルな原則を意識するだけで、ビジネスの精度と成果は大きく変わるはずです。

『ドラゴンボール』や『ドラえもん』のような作品の違いは、ビジネス競争を考える上でのアナロジーになります。『ドラゴンボール』では、強さという一つの評価軸が中心となり、それに基づいて必ず勝者と敗者が生まれます。勝利が最重要であり、差別化の余地は「強さ」という一面に限られます。

一方で、『ドラえもん』の世界では、勉強、スポーツ、創造力、未来の道具の活用法など、評価軸が多岐にわたります。この多様な環境では、必ずしも勝敗が絶対ではなく、それぞれのキャラクターが自分の得意分野で輝くことができます。例えば、のび太は勉強やスポーツが苦手でも、情緒的な繋がりや道具の創意工夫で才能を発揮します。普段は脅威であるジャイアンも時には協力して、より強大な敵と戦うこともあります。

例えば、のび太が『ガリバートンネル』を使って弱点を克服したり、しずかちゃんとの友情を武器に難局を乗り越えたりするエピソードは、まさに多軸戦略の象徴です。このような多次元的な評価軸のおかげで、共存しながら各々が成功を収めることが可能となります。「『ドラゴンボール』もまた、単一軸の強さに見えて、時には仲間と協力しながら敵に立ち向かう側面もあります。しかし、その協力も最終的には『強さ』という一軸に集約されている点が特徴です。」

ビジネス競争におけるパラレル

多くの企業は、『ドラゴンボール』のように、価格や市場シェア、製品品質といった単一の評価軸で競争しています。この単一軸の競争は、しばしばコモディティ化や激しい競争を招き、中小企業が活躍できる余地を奪ってしまいます。特に、コモディティ商品や差別化が難しい製薬業界では、資源を多く持つ企業が勝つ消耗戦に陥りやすい傾向があります。

しかし、『ドラえもん』のようなアプローチを採用することで、企業の競争力を大きく変えることができます。例えば、製品特性の優劣に固執するのではなく、顧客サービス、ニッチ市場の開拓、技術革新、ブランド価値など、複数の評価軸を導入することで、競争の枠組みを変えることが可能です。たとえば、物流会社であれば、単なる価格競争から脱却し、サステナビリティやラストワンマイル配送の質で差別化することができます。

ビジネス戦略のポイント

  1. 評価軸を多様化する
    『ドラえもん』のキャラクターがそれぞれの得意分野を活かしているように、企業も価値を生み出す評価軸を複数設定するべきです。例えば、製薬会社であれば、製品の有効性だけでなく、患者教育や医療従事者とのデジタル連携を強化することも競争力になります。
  2. ゼロサム思考を避ける
    『ドラゴンボール』のように単一の指標で競争する業界では、勝者と敗者が明確になります。一方、多軸戦略を採用することで、協調的な成長や相互の成功を実現することが可能です。
  3. 個々の強みを活かす
    『ドラえもん』が「弱い」キャラクターでも道具次第で活躍できることを示しているように、中小企業はニッチ市場を見つけ、大企業が見過ごしている分野で優位性を発揮することで勝利を目指すべきです。
  4. 評価軸の進化に適応する
    市場が成熟するにつれ、競争の評価軸は変化します。企業は、競争力を維持するために自社のポジショニングを定期的に見直す必要があります。

まとめ マンガの世界はエンターテイメントにとどまらず、ビジネス戦略を考える上でのヒントを与えてくれます。競争が激化し、資源が限られる時代において、単一の評価軸に依存する企業はゼロサムゲームの罠に陥りやすくなります。競争が激しい時代こそ、勝ち筋は一つではありません。

後発医薬品のシェア拡大
医薬品市場において、後発医薬品(ジェネリック)のシェアは着実に増加しています。数量ベースでは 80% を超え、金額ベースでも 56.7% に達し、政府の医療費削減政策と後押しによる成果が見えています。後発医薬品は主に生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)などの プライマリー領域 で浸透しており、製薬企業は価格競争力を武器に市場シェアを確保してきました。

しかし、この「後発医薬品の普及」が医薬品市場全体の医療費抑制に直結しているかというと、必ずしもそうではありません。


高額医薬品の急成長と市場圧迫
その一方で、抗がん剤や免疫疾患治療薬などの 高額医薬品 が市場を牽引し、医療費全体を押し上げています。例えば、がん治療薬市場は年平均成長率 12.5% で拡大し、2023年には医薬品市場の 26.8% を占めるまでになっています。免疫疾患治療薬も成長が著しく、高額な生物学的製剤やバイオ医薬品が中心となっています。

この高額医薬品は少量であっても医療費への影響が大きく、結果として 後発医薬品の普及 による医療費削減効果が相殺されている現状があります。


医薬品市場の現状が示す二極化

後発医薬品が普及し、プライマリー領域の薬剤費が圧縮される一方で、高額医薬品の増加が医療費全体に重くのしかかっています。この 「高額医薬品 vs 後発医薬品」 の構図は、製薬企業の今後の戦略にも大きな影響を与えます。


製薬企業がとるべき戦略

大手製薬企業:成長領域への集中と革新

大手製薬企業は 高額医薬品 のポートフォリオを強化し、がん・免疫疾患などの スペシャリティ領域 に集中投資することが求められます。

  • 革新的医薬品の開発:抗体医薬、遺伝子治療薬、バイオ医薬品への研究開発投資を加速。
  • バイオシミラー市場の活用:特許切れの高額医薬品に対し、バイオシミラーを導入し、市場シェアを確保。
  • 新規事業領域の展開:デジタルヘルスや予防医療など、医療費抑制と患者アウトカム向上に貢献する事業への投資。

中小製薬企業:ニッチ市場と効率化

中小企業は大手と競合せず、ニッチ市場 での強み発揮が重要です。

  • 特定疾患・希少疾患向け医薬品:市場規模は小さいが、競合が少なく、高収益の分野に特化。
  • バイオシミラー参入:高額医薬品の市場拡大を背景に、特許切れ製品の後発品を展開。
  • 後発医薬品の効率化:製造コストを徹底的に削減し、価格競争力を強化。

今後の医薬品市場:高額と後発の共存へ

高額医薬品の市場拡大と後発医薬品の普及は、二極化が進む医薬品市場の新たな常態(ニューノーマル)です。大手は 革新と高付加価値化 に集中し、中小は ニッチ市場効率化 で競争力を確保する――これが、持続的な成長を目指す製薬企業にとって欠かせない戦略となるでしょう。


医療費の最適化と患者への価値提供。これを両立させるために、製薬企業は自社の強みと市場の変化を見極めた戦略転換が必要です。

企業経営において、売上と利益は切り離して考えられない重要な指標です。しかし、売上がどれだけ高くても、適切な利益を生み出せなければ、事業の継続性は大きな危機にさらされます。一方で、市場における競争環境を測るうえで「利益」という指標はあまり適切ではありません。競争力や市場でのポジションを考える際、やはり売上が優先的な指標として重要視されます。

売上が競争力の象徴である理由

売上は、市場シェアや競争優位性を測る最も直接的な指標です。市場における自社の存在感を示すだけでなく、売上の規模は資金調達力や投資余力にも直結します。そのため、多くの企業が売上の最大化を目指し、競争戦略を構築します。しかし、売上は外部要因に強く影響されるのが実情です。市場の需要動向、顧客の選択、そして競合他社の戦略など、自社でコントロールしにくい変数が多く絡んでいます。

利益のコントロール可能性と経営者の裁量

一方で、利益は内部的な取り組みによってコントロール可能な範囲が広い点が特徴です。原材料費の削減、業務効率化、固定費の見直し、販売チャネルの最適化など、経営者の采配次第で直接的な改善が可能です。これは、特に市場が停滞している状況では顕著です。市場全体が成長期であれば、売上を伸ばす戦略でカバーできる部分が多いですが、停滞期や縮小期には利益の確保が企業存続の鍵を握ることになります。

売上と利益のバランスを見極める重要性

しかし、この売上と利益のジレンマは単純な二項対立ではありません。売上が低迷すれば当然、利益を確保する余地も狭まります。一方で、利益を優先するあまりコスト削減に注力しすぎると、事業の成長性が失われ、将来的な競争力に悪影響を及ぼす可能性があります。経営者が求められるのは、このバランスを見極める力です。

たとえば、市場が縮小している場合、競合他社の撤退によって一部の顧客を獲得できる可能性があります。その際に重要なのは、どれだけのリソースを売上確保に割り当てるか、そしてその投資がどれだけの利益を生むかを慎重に判断することです。さらに、利益を確保するためのコスト削減策も短期的なものに留めず、中長期的な成長につながる効率化や事業再構築を進める必要があります。

市場停滞期における経営者の挑戦

特に市場が停滞期に入ると、この売上と利益のジレンマはより顕著になります。全体の市場規模が伸び悩む中で、他社との差別化や効率的なリソース配分が求められる一方で、収益基盤を支える利益率の維持が経営の最大の課題となります。競争が激化する中で、単純に価格を下げて売上を追求するのではなく、顧客価値を高め、利益を生み出す仕組みを構築する必要があります。

経営者には、市場環境の変化に即した柔軟な発想と、長期的な視野を持った意思決定が求められます。売上は市場でのポジションを守るための武器であり、利益は事業を継続するための防御手段とも言えます。この両者のバランスをいかに取りながら企業価値を最大化するか——これが経営者に課された永遠のテーマなのです。

結論

売上と利益の関係性を理解し、このジレンマに挑むことは、経営者にとって避けて通れない課題です。短期的な利益追求に偏ることなく、売上を成長させる戦略と利益を守る方策をバランスよく組み合わせることが、持続可能な経営を実現する鍵となります。市場停滞期においても、この課題に真摯に向き合い、最適な判断を下す経営者こそが、企業の未来を切り開くことができるのです。

2014年と2023年の、国内医薬品メーカー上位5社のデータから競争環境の変化を検証してみましょう。およそ10年間で製薬業界では企業間の売上格差が大きく拡大しています。特に、武田薬品工業のような大手企業が圧倒的な存在感を示す「一強多弱」の構図が鮮明になりました。

2014年 vs. 2023年:売上データの比較

順位企業名2014年売上高(億円)2023年売上高(億円)増加額(億円)
1武田薬品工業15,00040,275+25,275
2大塚ホールディングス12,00017,380+5,380
3アステラス製薬11,00015,186+4,186
4第一三共10,00012,785+2,785
5エーザイ8,00010,000+2,000

この表から、武田薬品が他社を圧倒する成長を遂げたことが分かります。2014年に2位の大塚ホールディングスとの差は3,000億円でしたが、2023年には22,895億円にまで広がりました。

一方、トップ10内の他の企業の成長率は武田に比べて緩やかであり、売上規模の格差が顕著になっています。


データが示す「一強化」の背景

  1. 武田薬品の圧倒的なグローバル展開
    武田薬品は、2014年以降にシャイアーをはじめとする複数の大規模M&Aを実施。これにより、売上高が大幅に拡大しました。武田の売上増加額(25,275億円)は、同期間における他の上位企業全体の増加額を上回っています。
  2. 国内市場の停滞と他社の成長限界
    国内市場は人口減少や医療費抑制政策の影響で縮小傾向にあります。この結果、多くの企業が国内市場依存型のビジネスモデルに限界を感じ、新しい収益源の開拓に苦慮しています。特に中堅企業は、海外展開のためのリソースやノウハウが不足しており、成長が停滞しています。
  3. ゼロサムゲーム化による競争激化
    国内市場が縮小する中で、企業間の競争はゼロサムゲーム化しています。リソースを豊富に持つ大手企業が優位に立つ一方で、中堅企業は新たな成長機会を見いだすのに苦労しています。

市場縮小が企業戦略に与える影響

データが示すのは、国内市場が成長期から停滞・縮小期に移行する中で、従来のビジネスモデルでは十分に対応できなくなったという事実です。縮小市場では、新薬開発や差別化戦略の実行がより重要になりますが、リソースが限られる中堅企業にとっては難しい課題となっています。

データから見える今後の方向性

このデータは、縮小市場の中で「変化への対応力」が企業間の競争力に直結することを示しています。武田薬品のように、迅速な戦略転換を行い、成長市場を海外に見いだした企業が成功を収めています。一方で、他の企業にとっては以下が重要な課題となります:

  1. 縮小市場における集中戦略
    リソースを特定の分野やニッチ市場に集中させ、競争優位を確立する。
  2. グローバル展開と新薬開発力の強化
    海外市場をターゲットにするための基盤づくりが必要です。
  3. デジタル技術の活用
    DXによる効率化や、エビデンスベースの営業活動で差別化を図る。

海外へ販路を広げることで活路を見出すのか、あるいは縮小市場の中で、新たなビジネスモデルを確立し、ゲームチェンジャーとなるのか、各社の戦略が大きな岐路となりそうです。

VEEAのCRMと同様に、製薬業界ではIQVIA社の医薬品販売データベースが多くの企業で導入されています。医薬品販売データベースは市場/顧客と競合、そして自社の3Cデータであり、市場競争を定量化し、戦略的な意思決定のための重要なデータです。一方で多くの製薬企業が同じデータを所有するということは、お互いの競争状況が丸裸とも言えます。これはVEEVAと同様に、非常に有効なツールでありながら、同時にリスクを内包していると言えます。特に市場縮小期のゼロサムのゲーム型競争では脅威となります。

IQVIAデータベースとVEEVA CRMの利点

  1. データの一貫性と精度:
    • IQVIAの医薬品販売データベースは、市場、顧客、競合、そして自社の情報を3C視点で網羅しており、販売動向の把握や市場競争の定量化に非常に有効です。
    • VEEVA CRMは、これらのデータを活用しながら、MRの活動を管理し、顧客関係を効率的に構築するツールとして機能します。
  2. 迅速な意思決定支援:
    • 同じデータセットを利用することで、製薬企業間での市場理解が標準化され、競争環境を迅速に把握することが可能です。
    • 特に市場規模やシェア、競合の強み・弱みなどの情報を基に、戦略を柔軟に調整できます。

リスクと課題

  1. 競争状況の透明性が高すぎる:
    • 多くの製薬企業が同一のIQVIAデータを所有する状況では、競争状況が「丸裸」になるというリスクがあります。
    • 競合他社のシェアや成長率、ターゲット顧客などが容易に推測できるため、独自戦略が模倣される危険性が高まります。
  2. 差別化の困難さ:
    • 同じデータを基にした戦略では、企業ごとの活動が均質化し、競争優位性を確立することが難しくなる傾向があります。
    • 特に市場縮小期では、シェアの奪い合いが激化し、データ活用だけでは優位性を確保しにくくなります。
  3. 市場縮小期でのリスク増大:
    • 市場が成長している場合、同じデータを使っても全体の売上が拡大するため、リスクは相対的に低いです。
    • しかし市場縮小期では、ゼロサムゲーム的な競争が強まり、IQVIAデータやVEEVA CRMの使い方次第で勝者と敗者が明確に分かれます。

対策と補完ツールの必要性

  1. 独自分析ツールの導入:
    • IQVIAやVEEVAのデータを基に、独自の分析アルゴリズムを用いることで、差別化された戦略を構築する必要があります。
    • 例えば、DXS Stratify®のようなツールを活用して、市場シェア理論や競争優位性を数値化・可視化し、戦略的な意思決定をサポートすることが有効です。
  2. 戦略的資源配分の強化:
    • 競合の活動を考慮したうえで、リソースを効率的に配分する必要があります。
    • 例えば、IQVIAデータを補完する形で、競合の隙間市場や新たな顧客セグメントを見つけることが重要です。
  3. オリジナリティの確保:
    • 顧客ターゲティングや情報提供の質を高めるために、企業独自のデータやインサイトを加える必要があります。
    • これにより、競合との差別化が可能になり、同じデータを使っていても異なる結果を得られます。

まとめ

IQVIAの医薬品販売データベースやVEEVA CRMは非常に強力なツールであり、製薬業界の競争において不可欠な存在です。しかし、それらを利用する企業が増えるほど、競争環境が透明化し、差別化が困難になるリスクが高まります。

特に市場縮小期では、これらのツールをそのまま利用するだけでは競争優位性を確保できない可能性があります。DXS Stratify®のような独自の補完ツールを導入し、戦略の差別化と市場縮小に対するリスクヘッジを図ることが、必要となるでしょう。


1. VEEVA CRMの限界

医薬品業界では、製薬企業がMRを通じて適切な情報提供を行うことが法的・倫理的に求められています。そのため、企業がMRの行動目標をCRMで管理することにより、科学的根拠に基づく情報提供活動を可能にしています。VEEVA社のCRMは顧客関係管理のプラットフォームとして優れた機能を提供していますが、売上に結び付けるためには以下の点で限界があると考えられます。

  1. 分析視点の不足:
    • VEEVAは顧客とのエンゲージメントやKPI管理を効率化するツールであり、競争環境や市場データを基にした戦略的な分析は含まれていません。
    • 特に競合状況や市場シェアの動向を可視化する機能はなく、競合対策を立てる際に十分な情報が得られない。
  2. 標準化されたアプローチ:
    • VEEVAは多くの製薬企業で採用されており、同様の機能やデータの使用により、各企業のMR活動が均質化(同一化)しやすい。
    • これにより、差別化が困難となり、競争優位性を失うリスクが高まります。
  3. ターゲティングの限界:
    • 顧客の行動履歴やエンゲージメントデータを活用しますが、顧客の競争環境におけるポジション(例:競合のロイヤルカスタマーなど)や市場規模を考慮した細分化されたターゲティングが難しい。

2. DXS Stratify®の必要性と価値

DXS Stratify®は、VEEVA CRMにはない戦略的分析と競争力の可視化を提供します。

(1) 市場と競争環境の可視化

DXS Stratify®は、製薬業界における以下のデータを基に分析を行います:

  • 市場規模: どの顧客セグメントが大きな売上ポテンシャルを持つかを把握。
  • 競合のポジション: 顧客が自社・競合のどちらに近いか(ロイヤルカスタマー・ニュートラル・競合のロイヤルカスタマー)。
  • 競争優位性: シェア理論を基に、自社が競合に対して優位に立てる分野を特定。

これにより、VEEVAが提供するエンゲージメントデータを補完し、顧客ターゲティングとリソース配分を戦略的に行うことが可能です。

(2) 差別化戦略の構築

DXS Stratify®は、競争環境を数値で可視化し、以下のような差別化された戦略を導きます:

  • 競争優位な市場の攻略:
    • 自社の競争優位な市場や、競合が劣位なターゲットを特定し、効率的にリソースを投入。
  • 顧客タイプごとの戦略:
    • 顧客を市場規模と競争優位性で分類し、それぞれに適したアプローチ(ニッチ・集中戦略、差別化戦略など)を設計。

(3) KPIだけでなくKSFに基づく戦略実行

VEEVAのKPI管理だけでは、成功の要因(KSF)を把握しにくいですが、DXS Stratify®は以下を提供します:

  • KSFの特定: 競争環境で成果を上げるために必要な行動や条件を明確化。
  • 戦略的KPI設定: KPIを単なる活動量ではなく、戦力量として換算し競争優位性を高めるため有効なチャネルと結びつけます。

(4) 長期的視点での戦略支援

  • DXS Stratify®は短期的な行動管理だけでなく、長期的な市場シェア拡大や競争優位性の強化に向けた戦略をサポートします。

3. 競争環境の中での必要性

製薬業界は現在、縮小市場ゼロサムゲームに直面しており、競合他社との差別化がますます重要になっています。VEEVAのようなCRMだけでは、以下の課題を解決するのが難しいです:

  • 競合の動向を踏まえた戦略的リソース配分。
  • 顧客との関係性の強化に加え、市場での優位性の確立。
  • データを基にした明確なターゲット設定。

DXS Stratify®はこれらの課題を解決し、企業が競争環境で勝ち残るための「競争力の見える化」を提供します。


まとめ

VEEVA CRMが普及している製薬業界においても、競争優位性を高めるにはVEEVAだけでは十分とは言えません。DXS Stratify®は、競争環境の可視化、戦略的なターゲティング、差別化戦略の実行を可能にするため、製薬企業にとって必要不可欠なツールとなります。VEEVAと併用することで、CRMのデータを最大限に活用しつつ、戦略的な意思決定をサポートすることができます。

*このコラムでは、筆者の個人的な見解を述べています。そのため、内容によっては誤った情報や誤解を招く表現が含まれている可能性があります。そのような場合には、ぜひコメントをお寄せください。皆さまからのフィードバックを基に、さらに有益な情報を提供できるよう努めてまいります。どうぞお気軽にご意見をお聞かせください。

製薬業界ではVEEVA社のCRMが採用されています。同じクラスの薬剤の場合、ターゲット顧客は同じになりますが、例えば、その顧客がA社にとってはロイヤルカスタマー、B社にとっては競合と拮抗する顧客、C社にとっては競合のロイヤルカスタマーだとします。その場合、CRMのサジェスチョンはC社にとって競争優位性を得ことにつながるでしょうか?

同じターゲット顧客が会社ごとに異なる関係性(例:A社にとってはロイヤルカスタマー、B社にとっては競合と拮抗する顧客、C社にとっては競合のロイヤルカスタマー)を持つ場合、CRMシステムは、特にC社の競合攻略戦略に特化したサジェスチョンを提供するわけではありません。これは、システムの設定に依存することになります。

主なポイント

  1. 標準的なCRMの機能:
    • CRMシステムは、主に顧客とのやり取りを効率化し、エンゲージメントを追跡するために設計されていますが、競合分析ツールそのものではありません。これらのシステムは、企業が入力するデータ(顧客セグメンテーション、エンゲージメント履歴、市場データ)に基づいて動作します。
  2. 戦略的な設定:
    • C社がCRMを設定して、競合が強い影響を持つ顧客を特定し、ターゲットにするようカスタマイズすれば、そのシステムはその顧客に対する優先順位を高めるサジェスチョンを提供できます。この場合、外部データ(競合の顧客データなど)や社内分析(市場シェアの洞察など)を統合する必要があります。
    • こうしたカスタマイズがなければ、CRMのサジェスチョンは競合状況を明確に考慮せず、一般的なエンゲージメント戦略に基づくものとなります。
  3. 競合分析レイヤー:
    • 競合のロイヤルカスタマーを攻略するためにCRMを活用するには、追加のツールや手法を統合する必要があります。例えば:
      • DXS Stratify®や類似の分析ツールをCRMと併用することで、競争環境を可視化し、特定の顧客セグメントをターゲットにする戦略を提案することができます。
      • 市場シェア理論やランチェスターの法則を組み込んだアルゴリズムを使用すれば、競争上重要なターゲットを優先的に選定できます。
  4. 戦略的意図:
    • CRMシステムの提案内容は、そのシステムに組み込まれた戦略に依存します。C社が競合から市場シェアを奪取することを目指すのであれば、システムは現在の顧客関係を維持するだけでなく、競合攻略に向けた高インパクトのターゲットを特定する方向に設定される必要があります。

結論として、CRMは、競合の顧客を攻略する戦略を明確に設定しない限り、そのようなサジェスチョンを自動的に提供するわけではないことは知っておく必要があるでしょう。

*このコラムでは、筆者の個人的な見解を述べています。そのため、内容によっては誤った情報や誤解を招く表現が含まれている可能性があります。そのような場合には、ぜひコメントをお寄せください。皆さまからのフィードバックを基に、さらに有益な情報を提供できるよう努めてまいります。どうぞお気軽にご意見をお聞かせください。