~勝敗を分ける要因と戦略に必要な視点とは~
企業活動において、「戦略」とは単なる計画や施策の羅列ではありません。どの市場で、誰と、どのように戦うか。つまり、ターゲティングとリソース配分の意思決定そのものです。そしてこの「戦い方」は、市場のライフサイクル、特に「成長期」と「縮小期」とでは大きく異なります。
今回は、企業がこの違いを正しく理解し、それぞれのフェーズに適応した戦略を立てるために、どのような視点と指標が求められるのかを整理してみます。
■ 成長期の戦い方:スピードと供給力が勝敗を決める
市場が拡大している成長期は、基本的に“みんなが勝てる”時期です。プレイヤーが増えても市場のパイが膨らんでいるため、競合と正面からぶつからなくても成長が可能です。このフェーズでは、「誰よりも早く市場に乗る」「需要に応えられる供給体制を築く」「リスクを恐れず先行投資をする」といった、“自社の努力”が成果に直結しやすい特徴があります。
勝敗を分けるのは、自社の戦略精度というよりも、「機会を逃さず、成長に乗れるかどうか」です。
有効な指標例:
- 自社売上成長率
- 顧客数・アカウント数の増加
- プロモーション接触数(SOV)
- サービス提供数や出荷量
- 社内KPIの達成率(PDCA)
これらはすべて「絶対的な成長」を測る指標であり、社内データ(インハウスデータ)だけでも十分に可視化可能です。
■ 縮小期の戦い方:相対的な競争優位性がすべてを決める
一方、市場が縮小局面に入ると状況は一変します。市場全体が小さくなれば、もはや“みんなが勝てる”環境ではなくなります。企業同士のパイの奪い合い、すなわちゼロサム型の競争が始まります。ここで求められるのは、単なる成長ではなく「他社に対して優位に立つこと」です。
このフェーズでは、ターゲット市場で「競合よりも常に競争優位性を得ること」がより重要になります。競争相手の強さを読み、自社が勝てる市場・ターゲットを選び抜き、リソースを集中させなければ勝ち残ることはできません。
有効な指標例:
- 市場シェア(施設別・エリア別・製品別)
- シェア順位(競合とのポジション差)
- シェアギャップ(相対的な強み/弱み)
- 成長余地(ポテンシャルシェアとのギャップ)
- 競争集中度
- 主要成功要因(KSF)
これらはすべて「相対的なポジション」を可視化する指標であり、インハウスデータだけでは導き出せません。市場全体や競合のデータと照らし合わせることで初めて意味を持つのです。
■ 「敗北の構造」も異なる
成長期の敗因は、主に自社内のミスや意思決定の遅れ、機会損失による“自滅型”が多く見られます。「出遅れた」「供給が間に合わなかった」といった理由で、競合に負けたというより、チャンスを生かせなかったことが失敗の本質です。
一方、縮小期の敗因は、明確に「競合に負けた」ことが根本です。相対的にシェアを奪われ、競争力が低下する中で、戦略の甘さやリソース配分の誤りが直接的に業績悪化に結びつきます。
■ 縮小市場では「俯瞰×相対」視点が不可欠
こうした縮小市場では、もはや「自社の内側だけを見ていても」成果には結びつきません。自社の成績が上がったとしても、それ以上に競合が伸びていれば、市場でのポジションはむしろ低下しているということもあり得ます。
縮小市場では以下の3つが不可欠です。
- 俯瞰的に市場全体を捉える
- 競合との戦力差を定量的に把握する
- 勝てる場所を見極めて選択と集中を行う
まさにこの領域で、「Lanchesterの法則」や「シェア理論」「相対ポジション分析」といった、数学的かつ客観的な戦略フレームワークが力を発揮します。
■ まとめ:戦略は「環境に応じて進化」すべき
企業の戦略には「正解」はありませんが、「状況に応じた最適解」は存在します。
- 成長期には、自社の内部データでPDCAを高速に回し、スピードと供給力でチャンスを取りに行く。
- 縮小期には、競争環境を可視化し、他社との相対的な優劣を把握したうえで、戦う場所・相手・手段を選び抜く。
この戦略転換ができない企業は市場淘汰される運命にあります。歴史ある老舗企業には却って難しい局面かもしれません。
縮小市場を“衰退”と捉えるか、“選択と集中による競争優位のチャンス”と捉えるか。今、問われているのは戦略そのものです。
