コロナ禍以降、製薬業界は厳しい減収減益を強いられましたが、最近では復調の兆しが見え始めています。ただし、その回復の原動力は市場成長が続く海外市場であり、国内市場では相変わらず苦戦が続いています。

ここに、大企業に比べて経営資源に劣る中堅~中小企業が注目すべき重要なポイントがあります。大企業は豊富な経営資源を背景に成長市場での規模の経済を追求しますが、縮小市場においては、むしろその資源が足かせとなり、俊敏な対応や戦略的集中が難しくなることがあります。あるいは、縮小市場への明確な戦略を持っていない場合もあります。すなわち、中堅~中小企業は縮小市場における戦略を持つことで競争優位を築くチャンスがあると言えるでしょう。


セグメント集中と顧客密着で競争優位を築く

縮小市場では市場全体の需要が減少する一方で、特定のニッチセグメントや未充足の顧客ニーズが残っています。中小企業は、自社の限られたリソースをこうしたセグメントに集中させることで、大企業と競合せずに独自のポジションを築くことができます。また、大企業が避ける利益率の低いセグメントや地域などの空白地帯を活用すれば、新たな成長の足がかりを得られる可能性があります。

さらに、顧客との信頼関係を基盤にしたきめ細やかな価値提供が重要です。大企業がDX化による営業人員の削減を進める中で、中小企業は顧客密着型の営業活動や特定分野に特化した製品・サービスを通じて顧客満足度を高めることが可能です。実際に、営業人員の増強を進めて顧客密着を強化する中堅内資系製薬企業の例も見られています。


俊敏な戦略実行と縮小市場での競争戦略の活用

中小企業は、組織規模が小さい分、環境変化に迅速に対応する柔軟性を持っています。市場環境の変化に合わせ、地域ごとに迅速に戦略を立案し実行できる能力は、縮小市場において大きなアドバンテージです。一方、大企業は本社一元管理により意思決定が遅くなる傾向があるため、ここに中小企業の強みが際立ちます。

また、縮小市場ではゼロサムゲームの様相が強まり、競争相手のシェアを奪うことが成長の鍵となります。ランチェスター法則に基づく「弱者の戦略」や、STP戦略を活用し、ターゲットを絞った資源配分で競争優位を築くことが可能です。競争相手を明確にし、計画的な資源配分を行うことで、縮小市場でも効果的にシェアを拡大することができます。


縮小市場における競争は確かに厳しいですが、大企業を模倣し、広範囲にリソースを分散させるのではなく、自社の強みを活かした戦略的な集中により、中小企業が成長を実現する余地は十分にあります。縮小市場は、多くの企業にとって試練であると同時に、リソースに制約のある中堅~中小企業にとっては競争環境を再構築する絶好の機会でもあるのです。