2020年にデエビゴ錠が登場して以来、オレキシン受容体拮抗薬市場はデエビゴ錠とベルソムラ錠の2者間競争という、非常に厳しい構図となっています。
2者間競争は市場環境において最も厳しい競争市場です。なぜなら全リソースを目の前の敵にぶつける極めて単純な総力戦になるからです。一般的には消耗戦の末、経営資源に勝る側が勝つことになります。そのため全体市場ではなく、市場細分化による戦略プランが必要です。

マトリクス分析の結果、現時点でデエビゴ錠は全都道府県でベルソムラ錠を上回るシェアを獲得しています。
しかし、まだ“圧倒的”と言えるほどのシェア差は築けていません。安定的な独走状態に至っていないのです。
今後、塩野義製薬のクービビック錠が市場に参入すれば、この状況はさらに変化する可能性があります。
だからこそ、デエビゴ錠は今のうちにベルソムラ錠のシェアを奪い切ることが不可欠です。

試算では、マトリクスのAbフレームに位置する17都道府県のうち、7都道府県をAaフレームへランクアップできれば、デエビゴ錠のシェアは73%に達し、ベルソムラ錠を射程圏外に押し出すことが出来ます。
これは、追撃を許さない盤石なポジショニングを確立する絶好のチャンスです。

また、剤型別のシェア分析からも戦略のヒントが見えてきます。
デエビゴ錠は5mgがシェア1位、2.5mgが3位となっており、通常量で十分な効果が得られていることが示唆されます。
一方、ベルソムラ錠は15mgが2位、20mgが4位であることから、通常量では効果が不十分とされている症例がある可能性も考えられます。

この分析を踏まえ、デエビゴ錠の今後の訴求ポイントは明確です。
「通常量でもしっかり効く」という効果の強さを前面に打ち出すこと。
これこそが、2者間競争を制し、シェア拡大を実現するポイントになるでしょう。

*第9回NDBオープンデータを使用