「質が高い」と言われても伝わらない

最近、AIを用いたアプリケーションの営業を受ける機会がありました。よくある自社製品の機能がいかに優れているかを訴求するものでした。機能自体に目新しさがなく、現在使用しているものとの違いが感じられないと伝えると、「当社の製品は他社より質が高いです」 という応酬をうけました。

しかし、「質が高い」とは具体的に何を指すのでしょうか?
スピードなのか、操作性なのか、正確性なのか、耐久性なのか、それともコストパフォーマンスなのか、、、

このように、何をもって「質」とするのかが明確でないと、結局のところ何が優れているのかが伝わりません。営業担当者が自信を持って「質の高さ」をアピールしても、それが顧客のニーズと一致しなければ価値は伝わらず、購入の決め手にはなりません。

つまり、顧客は「質」ではなく、「自分の課題を解決できるかどうか」、その結果としてROIが得られるかで判断する のです。

したがって、自社製品の質の高さがどのような課題解決につながるのかを明確にし、その価値を適切に伝えられる顧客を見極める必要があります。
そのためには、市場を細分化するおとで勝ちやすいターゲットを選定し、競争優位性を明確に打ち出すSTP戦略が不可欠 です。


営業の精度を高めるSTP戦略

戦略の本質は、限られたリソースをどこに投下するかという意思決定にあります。

  1. セグメンテーション(市場の細分化)
    • 顧客のニーズや特性に応じて市場を分類し、すべての顧客に同じアプローチをするのではなく、適切なグループごとに対応を変える。
    • 例:
      • コスト削減を優先する企業
      • 操作性を重視する企業
      • 品質向上を求める企業
  2. ターゲティング(優先すべき顧客の選定)
    • すべての顧客に売り込むのではなく、最も勝率が高く、競争優位を発揮できるターゲットを選ぶ
    • 判断基準:
      • 競争優位性が活かせるか?
      • 市場規模・収益性は十分か?
      • 競争環境はどうか?
  3. ポジショニング(市場での立ち位置を明確にする)
    • ターゲットが抱える課題に対し、競合製品と比べてどのような価値を提供できるのかを明確にする
    • 例えば、「当社のCRMは競合のA社に比べ、操作が簡単で、トレーニング不要で導入できます」と具体的に伝える。

売り込みではなく、ソリューションを提供する営業へ

「売る」営業から、「顧客の課題を解決する」営業へ。
この視点の転換こそが、営業の成功率を劇的に高めるポイントです。

STPを活用することで、無駄な営業を減らし、最適なターゲットに対して、最も効果的な提案を行うことができます。

最終的に、顧客が求めているのは「質の高さ」ではなく、「課題を解決する最適な手段」。
そのためには、営業担当者自身がSTP戦略を意識し、適切なターゲットに、適切なリソースを投下し、競争優位性を明確に打ち出すことが不可欠なのです。