はじめに
製薬業界では、近年、早期退職制度の導入が進む中で、人員削減の上限を定めないケースが増えています。この背景には、企業がコスト削減を急ぎ、短期的な生産性向上を優先する傾向があることが挙げられます。特に、営業部門が削減の主な対象となる一方で、本社部門の生産性が問われることは少なく、リソースの配分が偏るケースが見られます。
しかし、ブラックロックやバンガード・グループ、ステート・ストリートのような大手機関投資家の存在を考えると、製薬企業個々の適正な人員数に固執するよりも、むしろ日本国内の医薬品市場全体での適正な人員数が考えられているのではという疑問が浮かび上がります。投資家たちが求めているのは、企業間の競争が生み出す市場全体の成長であり、個別企業の人員数だけに依存しない、市場全体の効率化です。
本コラムでは、人員削減の現状、投資家の視点、そして市場全体での適正人員数について掘り下げ、その結論として3,300人というMR数が導かれるまでの個人的な妄想をお届けします。
1. 人員削減の上限を定めない背景
製薬企業は、厳しい市場環境に対応するため、人員削減の上限を設けずに早期退職制度を導入するケースが増えています。これは、企業が人員削減の規模を柔軟に調整できるようにするための措置ですが、実際には、削減された人員を適切に再配置する視点が欠けていることが問題となっています。特に、営業部門に対する削減が多く、収益に直接影響を与える現場の負担が増加する一方で、本社部門の効率化が進んでいないことが課題として挙げられます。
2. ブラックロックなどの投資家が求めるもの
一方で、製薬企業の株主や投資家の多くは、ブラックロックのような大手機関投資家です。これらの投資家は、個別企業の売上や人員数よりも、市場全体の成長と効率化を重視しています。日本国内の医薬品市場は既にその規模が明らかであり、投資家たちは、どの企業が勝つかよりも、企業間の競争が市場をどれだけ成長させるかに関心を寄せています。これにより、各製薬企業が市場全体にどのように貢献しているかが、投資判断の重要な要素となっています。
3. 個別企業の適正人員数ではなく市場全体の適正人数
こうした投資家の視点を踏まえると、製薬企業ごとの適正人員数を議論するのではなく、日本の医薬品市場全体での適正な人数の視点が必要です。市場全体の効率性や競争力を高めるためには、過剰な人員削減や一部の過剰な負担を避け、全体としてバランスの取れたリソース配分が必要です。ブラックロックのような機関投資家にとっては、個別の企業の最適化よりも、市場全体で最適化されたリソース配分が、長期的な投資リターンのカギとなります。
4. MR数は3,300人が適正?
この市場全体での適正な人員数を考える上で、営業部門、特にMR(医薬情報担当者)の適正人数が重要な要素となります。日本国内の臨床医師数は約33万人とされており、1人のMRが100人の医師をカバーすると仮定した場合、必要なMR数は単純計算で3,300人となります。
この3,300人という数字は、あくまで仮説に基づくものですが、日本全体での適正な人員数を考えるための重要な指標となり得ます。つまり、企業単位での人員数調整ではなく、市場全体でのバランスを考えたリソース配分が重要であり、それが3,300人のMR体制という形で具現化される可能性があるのです。国内MRの総数は49,682人であることを考えると、上限を設定しない理由にも頷けます。
まとめ:市場全体で考えるべき適正なリソース配分
日本の製薬企業が個別に人員削減を進める中で、重要なのは市場全体での適正なリソース配分です。ブラックロックのような投資家が求めるのは、市場全体の効率性と競争力であり、それを実現するためには企業ごとの最適化ではなく、日本の医薬品市場全体の適正な人数を意識することが求められます。
MR数が3,300人というインパクトのある数字は、この議論を考える出発点となり、製薬業界全体でのリソース配分を見直す必要性を示しています。さて、今後のMR数を占ってみましたが皆さんはどのようなご感想を持たれたでしょうか?