現代の縮小市場では、成長期のような拡大戦略が通用しなくなり、企業は競争相手からシェアを奪うことで生き残りを図る必要があり、結果としてゼロサムゲームの様相を呈しています。
現代の競争市場が「一強多敗」「勝者総どり」の構図になっている背景には、兵站(ロジスティクス)の進化とその役割が深く関係しています。特に、資源や情報の管理、供給体制の強化が勝敗を分ける要因となり、兵站に優れた企業がより一層市場での優位性を確保しやすくなっています。

兵站とは、元々は軍事用語で、戦場に必要な武器や食料などの物資を効率的に供給・管理する仕組みを指します。ビジネスにおいては、製品やサービスの供給・流通だけでなく、必要なリソース(人材、情報、資金、設備など)を計画的に管理・調整し、最適なタイミングで適切な場所に届ける仕組みとして広く使われています。

兵站が重要なのは、いかに優れた戦略があっても、実行のためのリソースが不足していたり、供給が途絶えたりすれば、どんな計画も実現できないからです。つまり、戦略が「どのようにして勝つか」を決定するならば、兵站は「どのように勝ち続けるか」を支える土台となります。

現代のビジネスにおける兵站は、次のような要素から構成されます:

  1. 供給網管理(サプライチェーン)
    必要なリソースが途切れることなく供給されるよう、調達、在庫、配送、流通までを一貫して管理します。特に激しい競争が続く市場では、供給網の柔軟性や迅速さが競争優位を左右する重要な要素となります。
  2. リソースの最適配分
    兵站はリソースを最も効率的に利用することを目的とし、必要な場所に必要な量だけを供給します。これにより、企業は無駄を省き、限られた資源を最大限に活用できます。縮小市場において、限られた資源を効率的に使うことは生き残りに直結します。
  3. コスト管理と最適化
    リソースの調達から供給までのコストを最小限に抑えつつ、効率的にリソースを届けることも兵站の役割です。コストを抑えることで競争力を維持し、価格競争にも対応できるため、特に大手企業が持つ規模の経済が優位性を発揮するポイントでもあります。
  4. 情報のリアルタイム管理
    市場や競合の動きを迅速にキャッチし、供給計画やリソース配分を即座に変更できる能力も現代の兵站には欠かせません。情報技術を駆使することで、企業は適切なタイミングで最適なリソースを届けることができ、柔軟な対応力を持つことが可能になります。

現在の一強多敗、勝者総どりの市場構造は、兵站の力によって成り立っているといえます。市場が縮小し競争が激化する環境では、単に戦略を立てるだけでなく、それを維持するためのリソース管理が決定的な要素になります。大手企業は資本力や人材の面で優位にあるため、中小企業は戦略的な兵站によって限られたリソースを最大限に活かす必要があります。