製薬業界に限らず、多くの企業が毎年発表する中期経営計画ですが、そこには、売上目標や利益目標、研究開発投資額などが明確に記されています。
一方で、「営業戦略」や「市場選択」、「ターゲットの絞り込み」といった、戦略的意思決定に関する記述がほとんど見られないというのが現状です。

「公表していないだけ」なのか?

戦略とは“敵には明かせない情報”です。市場でのポジショニング、ターゲティングの方針、資源配分の意思決定など、競合に知られることは企業にとってリスクです。
そのため、「あえて戦略は書かない」という判断自体は、合理的に見えます。

しかし問題は、それが“非公開の意図”によるものなのか、“未整理”によるものなのかが見えない点です。多くの中計を読んでいて感じるのは、

  • 「抽象的な表現に終始している」
  • 「戦術レベルの取り組みだけが並んでいる」
  • 「“選ばない”という意思決定が見えない」

といった傾向が非常に多いということ。これは単に公表していないのではなく、そもそも戦略そのものが曖昧である可能性を強く示唆しています。


本当に戦略がある企業は、表現の仕方が違う

戦略を外部に漏らさずに、中計としても示している企業は存在します。たとえば以下のような表現です。

  • 「国内市場は守りに徹し、新興国市場に重点投資」
  • 「低収益品群は段階的に撤退し、高シェア製品への集中を進める」
  • 「ターゲット施設数を前年比80%に絞り、単位施設あたり活動密度を2倍にする」

これは一見ぼかしているように見えて、明確な意思決定(選択と集中)が読み取れます。

つまり、戦略を語らずに戦略を示すことは可能なのです。
しかし、多くの中計からはそれらを読み取ることがでいません。


中計は“社内外へのメッセージ”である

戦略を競合に伏せることは合理的ですが、社内や投資家にすら方向性が伝わらないようでは、本来の中計の役割を果たしていないとも言えます。

つまり、

「戦略は語るべきではない」ではなく、「語らずとも伝わるように工夫すべき」
というのが、これからの中期経営計画に求められる姿勢です。


まとめ:語られていない戦略は、存在しないのと同じ

たとえ社内で戦略が存在していたとしても、それが見える形で共有されていなければ、現場は動けず、投資家は納得せず、社外は信頼しません。

本当に“戦略を持っている”というのであれば、それを「見せずに伝える」工夫を、中計という公の文書の中でこそ試されるべきです。