製薬企業が戦略的意思決定を行う際、何の指標を基準に判断すべきか。その答えの一つが「売上高」です。売上高は単なる成果ではなく、企業活動全体の実行力と市場からの評価を集約した結果であり、戦略の妥当性を可視化する指標でもあります。
たとえば、IQVIA社が提供するDDDなどの医薬品販売データベースを活用することで、顧客単位での納入推移が詳細に把握でき、自社・顧客・競合という「3C」視点での状況分析が可能になります。これにより、戦略立案から修正までの意思決定サイクルにおいて、売上高は中心的な役割を果たします。
もちろん、売上高はMR活動、処方権を持つ医師の行動、流通網、薬価、市場環境、製品ライフサイクル、ガイドライン、競合動向など、極めて多くの変数によって決まるため、予測は簡単ではありません。したがって単一のKPIや施策との因果関係を明確にすることは困難です。だからこそ最終的に「結果」として現れる売上高に注目する価値があります。
実際のデータ分析でも、売上高は主要な経営資源との間に強い相関を示しています。国内企業では、MR数と売上高の相関係数が0.831と非常に高く、世界の製薬企業においては、売上高と研究開発費で0.808、販管費では0.914という極めて高い相関が確認されています。売上高は、ヒト・モノ・カネの投資成果を最も正確に反映する“包括的な指標”と言えるのです。
売上高の変化は単なる数字の上下ではありません。市場での競争力、顧客からの評価、戦略の適否、現場の実行力など、あらゆる要素が反映された複合的な結果です。ゆえに、売上高を起点として考えることは、部分最適ではなく全体最適の視点から戦略を見直すうえでも、ゼロサムのゲーム型競争市場では非常に重要です。
製薬企業が今後も社会的使命を果たしつつ、持続的に競争力を維持・強化していくためには、この自社だけではなく、競合も同じデータを保有している現実をリスクではなくチャンスに変えるため、売上高という“戦略の成績表”をいかに活用するかが問われています。

