イノベーションの芽を摘む「質屋化」した金融の構造と、AIによる変革の可能性
近年、医療、AI、データ分析といった新しい成長領域に挑むスタートアップが数多く誕生し、既存の産業構造に変革をもたらす可能性を秘めています。
スタートアップベンチャーには実績や資金がないことが殆どです。しかし、その多くが銀行からの資金調達に苦慮しています。理由は、「新しいビジネスモデルの収益化が見えない」「ITやAIを理解できない」「担保となる目に見える設備投資がない」といったものです。つまり、銀行は事業の将来的な成長可能性ではなく、貸付金を確実に回収できる確率という極めて短期的な視点だけでビジネスを評価していると言えます。
成長分野を支えようとしない銀行に、果たして存在意義と未来はあるのでしょうか。
守りの姿勢に徹する「金融仲介機能」の形骸化
本来、銀行の社会的使命は「将来に向けて資金を流すこと」、すなわち金融仲介機能を通じて、国民の預金という余剰資金を、社会の新しい価値を生み出す事業へと循環させることにあります。
ところが、現実の銀行は「理解できないリスクには関わらない」という、極端な守りの姿勢に徹しています。その背景にあるのは、バブル崩壊以降に根づいた「不良債権恐怖症」と、過度に厳格な金融検査制度です。結果として、現場の銀行員は「貸さない方が安全」と判断せざるを得ない構造に追い込まれています。
「ITやAIは難しいから評価できない」として融資を見送るのは、専門職としての責任放棄にほかなりません。事業を評価し、成長可能性を見抜くことこそが銀行の本業であるはずです。もし、担保や確実な回収のみを重視し、将来性を見ようとしないのであれば、それはもはや「銀行」ではなく、「質屋」と変わらないのではないでしょうか。
この構造が続けば、イノベーションの芽は摘まれ、未来価値を生む分野に資金が流れないことで、経済全体の生産性は深刻に蝕まれていきます。銀行は「社会を安定させる」機能と引き換えに、「社会を成長させる」という最も重要な機能を失いつつあるのです。
リスクを「構造」で理解し、「創る金融」へ進化せよ
重要なのは、リスクを“感覚”で恐れるのではなく、“構造”で理解することです。
ここに、AIとデータ分析技術が決定的な役割を果たします。現在、多くの金融機関で、AIを活用した融資審査の迅速化や不正検知が進んでいますが、これをスタートアップの事業性評価にこそ応用すべきです。
具体的には、非財務情報(事業計画の具体性、市場規模、経営者の資質など)や、入出金履歴、提携企業のデータなど、従来の財務諸表だけでは見えなかった非構造化データをAIで分析し、事業リスクを定量的に評価することが可能です。これにより、「理解できない」と一蹴するのではなく、「データに基づき、この条件であれば貸せる根拠がある」というロジックを構築できます。
金融が科学的に進化すれば、銀行は再び社会の成長エンジンになれるはずです。
成長領域に投資しない銀行は、存在していても機能していません。守る金融から、創る金融へ。いま求められているのは、未来を恐れず、未来に賭ける銀行の姿勢への、根本的な転換です。
