義務教育は、誰もが一定水準の知識や技能を身につけられるように設計されています。その意義は大きく、社会の基盤を支える役割を果たしてきました。しかし、その裏側で「苦手な部分を平均水準まで引き上げる」ことに重点が置かれ、得意分野や突出した才能が後回しにされがちです。結果として、個性や尖った能力が削ぎ落とされ、好きなことや得意なこと、興味があることを伸ばすのではなく、無難に整えられた「標準的な人材」が育成されてきました。

統計の世界でも同様の構造が見られます。標本から母集団を推定する際、平均値や分散といった要約統計量に依存することで、データの中心傾向に収束していきます。突出した数値は「外れ値」とされ、分析対象から排除されることも珍しくありません。つまり、ずば抜けた存在は「例外」とされ、体系の中に組み込まれにくいのです。

しかし、今は「ダイバーシティ」と「インディビジュアル」が価値を持つ時代です。均一な能力よりも、多様なバックグラウンドや独自の発想こそがイノベーションを生みます。AIの進展や市場の複雑化により、標準的な人材では解けない問題が増えているからです。イノベーションを生み出すには人と違うことが大切です。

ビジネスの現場でも同じことが言えます。標準化された「平均的な顧客像」に合わせた商品やサービスは埋没しやすいですが、個性的なニーズに応えられる企業は、強烈なファンを獲得し市場で優位に立ちます。人材戦略においても、弱点の補強に終始するより、突出した強みを伸ばし活かす方が、組織全体の競争力を高めます。

スティーブ・ジョブズの「Think Different」というスローガンは有名です。これからの時代に必要なのは、標準化による安心感ではなく、多様性を受け入れた上で、個性を最大限に発揮できる環境づくりです。
外れ値は排除するものではなく、新しい可能性を開く「シグナル」として尊重されるべきでしょう。