1. 背景と課題(現状認識)
フォーミュラリは医療費削減を目的としますが、実務では「安価な薬剤を選ぶ」だけでは成立しません。汎用性、必要性、エビデンス、安全性、供給安定性、運用容易性など選定基準が多く複雑であり、さらに採用・非採用・制限の判断には説明責任(妥当性の根拠提示)が求められます。
一方、平均値ベースの評価や単純なコスト比較では、患者集団の多様性(反応の二峰性、ロングテールの有害事象、特定集団での不利益)を取りこぼし、結果として増悪・再入院・運用破綻により総医療費が逆に増えるリスクがあります。
2. 提案概要
本提案は、フォーミュラリの意思決定を「多基準のまま」扱いつつ、議論の混乱点である基準間の因果関係と、現場で破綻を起こす分布の端(例外・少数集団)を可視化し、合意形成と説明責任を支える枠組みを導入するものです。
- DAG(因果グラフ):
多基準(費用・有効性・安全性・運用性等)が最終成果(総医療費・アウトカム)にどう影響するかを因果経路として整理し、交絡・バイアスを明示します。 - DSA(分布構造分析):
患者反応や有害事象が「平均」ではなく、どのような分布構造(二峰性・ロングテール・層別の偏り)を持つかを把握し、「多数派に最適だが少数派で破綻する」設計を回避します。
3. アウトプット
- 三層フォーミュラリ設計
- A:標準推奨(多数派で妥当、供給・運用も安定)
- B:条件付き推奨(腎機能、併用薬、重症度等で層別ルール化)
- C:例外(裁量を残し、理由をテンプレ記録して次回改定に反映)
- 説明責任パッケージ
- 目的(薬剤費だけでなく総医療費・アウトカム・安全性)
- DAGによる「因果の筋道」
- DSAによる「誰に利益/不利益が出るか」
- 採用ルールと例外運用、見直し指標(KPI)
4. 進め方(最小構成で短期に成果を出す)
- 対象は、費用影響・使用量・代替選択肢が大きい薬効群から開始(例:糖尿病、PPI、脂質、抗菌薬、喘息/COPD 等)
- 最小データ:処方・患者背景(主要項目)・主要イベント(入院等)・コスト近似
- まずは1薬効群×施設運用でプロトタイプを作成し、委員会合意→運用→改定サイクルを確立します。
5. 期待効果(医療費削減を“総医療費”で達成)
- 平均値の罠を回避し、少数の悪化・再入院・有害事象集中によるコスト増を抑制
- 多基準の複雑性をDAGで統一し、委員会の合意形成を迅速化
- 層別ルール化により、現場が回る「守れるフォーミュラリ」を実現
- 説明責任(根拠提示)を標準化し、対外・院内説明の負担を低減
6. 次アクション
- 対象薬効群を1つ選定し、DSA+DAGによる試作(PoC)を実施
- 成果物:三層フォーミュラリ案、層別ルール、説明資料(A4 1枚)
- PoC完了後、適用範囲を薬効群へ段階拡張
DSA+DAG は“複雑な選定基準を、因果の筋と分布構造で一貫したルールにして、説明責任まで自動生成”します。
