昨今、「データドリブン経営」「データドリブン戦略」という言葉を耳にしない日はありません。医療から製造業、マーケティングに至るまで、「データを基盤に意思決定する」ことはもはや常識となりました。ところが、この潮流には大きな落とし穴があります。
多くの現場では、データを集めること自体が目的化し、肝心の「解析」が旧態依然のままにとどまっています。例えば、p値による有意差検定です。確かに「差が偶然ではない」と示すことはできますが、ビッグデータを扱えば扱うほど、わずかな差でも有意になりやすくなります。結果、「統計的に正しいが、実務的には意味がない結論」が大量に生み出されることになります。
また、平均値による比較も同様です。平均的な顧客、平均的な患者像を描いても、そこから本当に重要な「ハイパフォーマー層」や「リスク群」は見えてきません。多様性を切り捨てた分析は、むしろ意思決定を誤らせる危険すらあります。
真のデータドリブンとは、単にデータを持つことではなく、データから構造を読み解き、戦略に直結させることです。従来の統計手法が「差があるか」を問うのに対し、これから必要なのは「なぜ差が生まれるのか」を明らかにするアプローチです。
データドリブンの本当の価値は、「持つ」から「活かす」への変革にあります。AIにより大量のデータを扱うことができるようになりました。しかし解析の方法論をアップデートしなければ、膨大なデータは宝の持ち腐れです。データが氾濫する時代だからこそ、私たちが見極めるべきは「何を解析するか」ではなく「どう解析するか」です。
パラダイムを従来の「仮説検証型」から「データ駆動型の仮説生成・探索型」へと大きくシフトする必要があります。
