最近のニュースでは、インフルエンザが猛威をふるっているニュースを毎日のようにみかけます。「インフルエンザ患者数が各県あたりで〇〇人」というランキングが紹介されていました。今日のニュースでは宮城県が1位と強調されていました。では、本当に宮城だけ突出してインフルが多いのでしょうか?
ここで使われているのは、「1医療機関あたりの患者数」という指標です。これは、インフルエンザの定点医療機関が1週間に何人の患者を診たか、その平均値を表しています。つまり本来は、「その地域の医療機関がどれくらい“混んでいるか”」をざっくり見るための数字です。
ところが、ニュースの時間帯では、その前提がほとんど説明されません。「インフルエンザ患者数が多い県ランキング」と聞くと、視聴者はつい「この県はインフル患者そのものが全国で一番多い」「この県は特別に危険だ」と受け取ってしまいます。しかし実際には、人口規模も医療機関数も県ごとに違いますし、定点として選ばれている医療機関の配置や偏りもあります。「1医療機関あたり1位」=「人口あたりの患者数が1位」とは限らないのです。
ビジネスの世界でも、よく似た誤解が起こります。
1店舗あたり売上、1人あたり生産性、案件あたり利益――どれも便利な指標ですが、「分母」が違えば数字の意味は大きく変わります。客数が少ないエリアで「1店舗あたり売上」が高く見えても、そもそも市場規模が小さければ、事業全体としての伸びしろは限られます。逆に、大きな市場で競合が多いエリアでは、1店舗あたりの数字は平凡に見えても、シェアの取り方次第で大きな成長余地があるかもしれません。
つまり、「指標そのものは正しいが、その指標から“何を読み取れるか”を間違える」と、判断を誤ります。ニュースを観るときも、ビジネスの数字を見るときも、本当に問うべきは次のようなことです。
「この数字は、何を分子にして、何を分母にしているのか」
「この分母の取り方は、比較したい対象に対して妥当か」
「自分が知りたいのは“負担の重さ”なのか、“人口あたりのリスク”なのか、それとも“市場全体の大きさ”なのか」
インフルエンザであれば、「1医療機関あたり」は医療機関の負担を示す指標です。一方で、「10万人あたりの患者数」は、その地域の住民がどれくらい感染しやすい状況にあるかという“リスク”を表します。目的によって、見るべき数字は本来、使い分ける必要があります。
テレビやネットの見出しは、どうしても「〇〇が全国1位」「前週比×倍」といった、インパクトのある表現になりがちです。しかし、私たちがそれをそのまま鵜呑みにしてしまうと、数字の“ストーリー”だけを受け取り、“構造”を見落としてしまいます。
ランキングや「1人あたり」「1件あたり」といった数字を目にしたときは、「へえ、そうなんだ」で終わらせず、心の中で一言だけ付け加えてみてください。
「で、その分母は何?」と。
その一言が、ニュースに惑わされず、ビジネスでも冷静に数字を読み解くための、小さくて大きなフィルターになるはずです。
