ここ数年間で飛躍的にビジネス現場に浸透してきたAIですが、近年、「AIによる未来予測は不可能だ」とする議論も出てきています。その理由の一つは、予測のベースとなるデータに過度に依存している点です。AIは過去のデータからパターンを抽出し、それをもとに未来を推測しますが、現代の急速な環境変化には追いつきにくいという側面があります。経済や社会の動きは複雑かつ多様な要因に左右されるため、AIの予測精度にも限界があります。特に、現代は予測不能な「VUCAの時代」とも言われます。

さらに、未来予測を妨げる要因として、突発的で予測困難な「ブラックスワン」と呼ばれる事象も挙げられます。例えば、パンデミックや金融危機など、過去のデータにはほとんど見られない予期せぬ出来事に対して、AIは対応しにくいのです。また、人間の行動や意思決定は必ずしも合理的ではなく、多くの不確定要素が含まれるため、これもAIによる予測を難しくしています。

そのため、AIは未来の可能性を探るサポート役にはなりますが、確実な未来予測は難しいのが現実です。この背景から、現状をしっかりと分析し、変化に柔軟に対応することが一層重要とされています。

一方で、AIによる未来予測が不確実であっても、企業としては中長期的な戦略を立てる必要があります。特に、変化のスピードが速いVUCAの時代では、その変化に柔軟かつ俊敏に対応することが求められます。そして、この変化を敏感に察知し、状況に応じて迅速に修正できるのは、顧客と直接対面する営業担当者です。しかし、デジタル化の進展により、営業担当者の存在意義が問われつつあります。

VUCAの時代においては、中長期的な戦略を立てつつも、変化に応じた柔軟な対応が欠かせません。特に営業担当者は、顧客との対面を通じて「現場の肌感覚」で状況を察知し、リアルタイムで情報を共有するという重要な役割を担っています。営業担当者のインサイトは、デジタルデータでは得られない独自の視点です。例えば、顧客の微妙な反応や非公式なフィードバック、予期せぬ問題や新たなニーズなど、数値に現れにくい情報を感じ取る力は、営業担当者ならではの強みといえるでしょう。この情報は企業にとって貴重で、戦略や対応策の微調整に欠かせません。

デジタル化の進展により「営業担当者が不要になる」という意見もありますが、実際にはデジタル技術が営業活動を補完し、営業担当者の役割をより高度化する可能性もあります。デジタルツールによって日々の業務負担が軽減されることで、営業担当者は顧客理解や関係構築により多くの時間を割くことができるようになります。デジタルツールで得たデータを活用しつつも、人間らしい対応や柔軟な判断を加味することで、営業の価値は一層高まるでしょう。

また、営業担当者が現場の変化をリアルタイムで捉え、柔軟に対応できるような組織設計や意思決定プロセスも重要です。デジタル技術と営業担当者が連携し、データと人間の洞察を組み合わせた、人を中心としたアプローチを取ることで、企業は変化に強い体制を構築できるはずです。