― 構造分析(DSA)と因果推論(DAG)で読む“勝てる設計図”
大谷翔平のマンダラチャートが世界のデータサイエンティストに分析されているそうです。なぜなら、あの1枚は“努力のチェックリスト”ではなく、成果を生み出す構造そのものを描いた「設計図」だからです。
1. まず前提:目標は「分解」ではなく「構造化」する
多くの目標設定は、こうなりがちです。
- 目標を決める
- 行動を増やす
- 頑張る
- 結果が出たら正解、出なければ根性不足
これだと、結果が出ても出なくても、説明が“後付け”になります。
つまり再現できません。
一方、マンダラチャートの中心には「ドラフト8球団」が置かれ、その周囲に「球速160km/h」「コントロール」「キレ」「体づくり」「メンタル」「人間性」「運」などが並びます。
ここで起きているのは、分解ではなく構造化です。
言い換えるなら、
「結果を生む要因の仮説を、全体構造として配置している」
2. 構造分析(DSA):成果は“能力”ではなく“構造”で決まる
構造分析で見るポイントは、「項目の良し悪し」ではありません。配置と階層です。
マンダラは三層構造になっています。
- 中心(成果):ドラフト8球団
- 第一層(直接要因):球速、コントロール、キレ、メンタル等
- 第二層(基盤要因):食事・睡眠・体幹・下半身・習慣・人間性
この三層はビジネスで言えばこうです。
- 売上(成果)
- 価格・品質・営業力(直接要因)
- 組織文化・採用・仕組み・習慣(基盤要因)
多くの会社が「売上が伸びない」と言いながら、第一層だけをいじります。
施策(広告、営業、キャンペーン)です。
でも本当は、成果を押し上げるのは第二層、つまり基盤構造です。大谷チャートが面白いのは、球速と同じ盤面に「ゴミ拾い」「あいさつ」「感謝」「信頼される人間」といった“基盤”を置いている点です。
これは精神論ではありません。構造分析的には、
「成果を決めるのはパフォーマンスだけでなく、パフォーマンスが生まれる土台構造である」
という意思表示です。
3. 因果推論(DAG):なぜ「ゴミ拾い」がドラフトに繋がるのか
ここからが因果推論(DAG)の出番です。
「ゴミ拾いがドラフトに関係あるの?」
普通はそう思います。
しかしDAG的には、直接効果でなく間接経路(媒介)や環境経路を疑います。
たとえば因果の経路はこう描けます。
- ゴミ拾い → 人間性の評価 → 指導者の信頼 → 練習機会・推薦 → ドラフト
- あいさつ → チーム内関係 → 情報や助言の流入 → 成長速度 → パフォーマンス → ドラフト
- 感謝 → 支援者の増加 → 環境の改善 → 継続性 → パフォーマンス → ドラフト
つまり「ゴミ拾い」は、球速を上げる薬ではありません。環境と支援の因果構造を設計する介入なのです。
ビジネスに置き換えると分かりやすいです。
- 5S(整理整頓)
- 挨拶
- 報連相
- 期限厳守
- 誠実な対応
これらも売上を“直接”作りません。
でも、信頼・協力・紹介・継続という因果経路を通じて、結果的に売上に効きます。
DAGで読むと、マンダラは
「見えない因果経路まで含めて、勝ち筋を設計している」
ということになります。
4. この1枚が“データサイエンティスト向き”な理由
データサイエンティストが興奮するのは、ここが揃っているからです。
- 目的(アウトカム)が中心に固定されている
- 要因(説明変数候補)が網羅されている
- 階層(直接要因/基盤要因)が分かれている
- 因果(媒介・環境・評価の経路)が暗黙に含まれている
これは統計の世界で言えば、
- KPIツリー
- 因果ループ
- ベイジアンネットワーク
- 介入設計(policy design)
の“手書き版”です。
5. ビジネスへの教訓:成果を出す人は「努力」ではなく「構造」を作る
結論はシンプルです。努力とは“量”ではありません。努力とは“構造への投資”です。
大谷チャートが示しているのは、
- 何をやるか(施策)ではなく
- どういう構造なら勝つか(設計)
です。
だからこそ、これは目標管理シートではなく、成果を再現するための構造モデルなのです。
そして、構造分析(DSA)と因果推論(DAG)を使えば、私たちはこの1枚を
①感動話でも、②根性論でもなく、③再現可能な意思決定の言語
として読み解けます。
まとめ:マンダラは「意思決定の可視化」である
「目標を立てる」のではなく、「成果が生まれる構造を定義する」。
さらに、「その構造を因果でつなぐ」。
この2つが揃ったとき、初めて目標は“達成可能な設計”になります。
大谷翔平マンダラの価値は、ここにあります。
