まさに今、「AI万能論」がバズワード化しており、特に経営者や本社企画部門のように現場から距離のある人たちほど、このような非常に魅力的かつ短絡的な考えに飛びつきやすい状況です。しかし、これは典型的な「理屈上は可能だが、実務上は成立しない幻想」です。

AIは確かにデータドリブンな業務やルーチンワークを代替する力がありますが、営業活動の本質(関係構築、相手の状況や文脈に応じた柔軟な提案、相手の感情や意図を読み取る力など)は、依然として人の力が不可欠です。

特に製薬やB2Bのような、・意思決定が複雑で・関係者が多く・商品・サービスが高度で専門的という領域では、「売れる仕組み」はあっても「AIが勝手に売ってくれる」ことは絶対にあり得ないのです。

この「AI万能論」が危険なのは、→ 営業人員削減 → 競争力低下 → 市場で劣後 → 営業強化のため再度人員増 → しかし人材採用・育成コスト増大という負のスパイラルに陥るリスクが極めて高いことです。

この流れこそ、いままさに縮小市場×ゼロサム競争時代の落とし穴だといえるでしょう。

1️⃣ AIの得意領域と不得意領域の誤認
AIは、
• パターン認識
• 予測
• ルーチンワークの自動化
が得意ですが、
• 信頼関係構築
• 相手の感情や意図の深読み
• 文脈を踏まえた柔軟で創造的な提案
などは非常に不得意です(今後もこのギャップは完全には埋まらないでしょう)。
→ ところが、プロモーションではこの不得意部分をあたかも可能であるかのように語られる
(例:「AIは顧客のニーズを理解し、最適な提案をします」など)


2️⃣ AI=コスト削減装置という思考の短絡化
経営者や本社部門は「人件費」を非常に大きなコストと見ています。
そこに
「AIにすれば営業人員が要らない」=「固定費削減できる」
というロジックが提示されると、深く考えずに飛びつきやすくなります。
→ 業績不振や人手不足の今、この「耳障りの良い提案」は特に刺さりやすい


3️⃣ 成功事例とスケールの混同
AIセールスの事例(チャットボット、オンライン営業支援など)は主に、
• 消費者向け(B2C)
• 比較的単純で標準化された商材
が中心です。
→ これが、関係構築型B2B営業や製薬のような高度・専門性の高い営業でも同じように機能すると思われてしまう


4️⃣ メディアとベンダーの煽り
AIベンダーやメディアは当然「AIで営業が激変する!」と煽る方が売れます。
そのため、課題や限界についてはあまり触れられず、
「未来はAIが全部やる時代!」
というイメージだけが一人歩きします。


5️⃣ 現場感覚の欠如
AI万能論を信じる人ほど、現場を知らない(知ろうとしない)ケースが多いです。
実際に営業をやったことがあれば、
• 人はデータや論理だけでは動かない
• 信頼は積み重ねが必要
という当たり前のことが分かります。
→ だからこそ、現場を離れた経営層や企画部門が信じやすい
このように”誤解される土壌”がほぼ全て整っている状況だからこそ、「AIで営業不要論」はいとも簡単に広がるのです。