患者支援アプリの導入やサポート体制の強化は、製薬企業にとって「CSR(Corporate Social Responsibility)的な施策」の側面と、単なる社会貢献ではなく、売上に直結する“戦略的投資”として実施します。では、なぜ患者支援が有効なのか?そして、どのような企業にとって、それが“勝手”になるのでしょうか。

■ なぜ患者支援が売上につながるのか?
医療用医薬品はガイドラインやエビデンスに基づいて処方されますが、実際の臨床現場では、それだけで処方が決まるわけではありません。特に長期投与や自己管理が必要な薬剤では、患者が治療を継続できるか=アドヒアランスが処方の持続性と処方量に大きな影響を与えます。
ここで、患者向けのアプリケーションや支援サービスが役割を果たします。服薬スケジュールの管理、副作用のセルフチェック、看護師によるフォローアップ、医療機関と連携したサポートなどは、患者の安心感を高め、治療中断のリスクを低下させるのです。
結果として、医師は“継続できる薬=処方しやすい薬”と判断しやすくなり、企業にとっては安定的な売上に結びつきます。


■ ただし、“誰がやっても効く”わけではない
この施策には、明確な「2つの絶対条件」があります。


【条件①】高い市場シェア
患者支援によりアドヒアランスが改善され、継続率が上がっても、シェアが低い企業ではその恩恵のほとんどをシェアトップが吸収してしまうリスクがあります。
つまり、支援の“果実”を自社が最も多く享受できる状態=市場シェアが高いことが前提条件です。


【条件②】市場が成長している
縮小市場では、いかに患者を支援しても、全体のパイが減るため投資対効果が悪化します。
逆に、成長市場では、新たな患者の取り込みや長期的なリピート獲得が可能で、支援が“攻めの投資”として回収しやすくなるのです。


■ 支援とは、強者の戦略である
以上をまとめると、患者支援アプリやサービスの本質は「強者が市場支配を固定化するための戦略」です。
トップシェアを持ち、市場が成長している状況であれば、支援は単なる好印象ではなく、シェア防衛・拡張・競合排除を狙うれっきとした戦略行動になります。
反対に、低シェア企業が縮小市場で支援を広く展開することは、競合の売上に貢献するだけの“善意の罠”になる可能性があることも忘れてはなりません。


■ 最後に
患者支援は感情論ではなく、極めてロジカルな“武器”として使うべき施策です。
自社の市場ポジションと市場のライフサイクルを冷静に見極め、どのタイミングで、どこに、どれだけ投資するのか、そこに戦略の巧拙が問われます。