これまでの統計学は、人が理解し、仮説を立て、変数を選び、結果を解釈し、意思決定に活かすことを前提にしています。すなわち判断の主体は、あくまで人間です。
一方で、AI、特に深層学習やLLMは、入力から出力までの過程がブラックボックス化しやすく、判断の主体がシステム側に移りやすい性質を持っています。人間は、なぜその答えに至ったのかを十分に理解できないまま、出力を受け取る立場になりがちです。
つまり、従来統計は「人が理解して実行するための技術」であり、AIは「人が完全には理解できない処理によって答えを出す技術」です。この二つを同じ土台で扱うことには、方法論上のねじれがあります。
「人間が理解して使うための統計」
「人間には十分に理解できない解を出力するAI」
本当に必要なのは、AIに従来統計を単純に組み込むことではありません。AIが扱うデータや判断過程を、人間が検証し、介入し、説明できる形に設計することです。
平均値や要約統計だけに頼れば、個々の違いや構造は見えにくくなります。一方で、AIの出力だけに頼れば、判断の根拠が見えにくくなります。どちらにも限界があります。
これから重要になるのは、AIと人間の間に、分布、構造、因果関係を確認できる中間層を置くことです。ブラックボックス化したAIの出力をそのまま信じるのではなく、人間が理解可能な形でデータ構造を残し、判断の根拠を確認できる仕組みが求められます。
AI時代に必要なのは、AIと統計の単純な融合ではありません。必要なのは、AIの計算能力と、人間の理解・説明・意思決定を接続する、新しいデータ活用の設計思想です。
