1989年10月 に高脂血症治療剤として初のHMG-CoA還元酵素阻害剤であるメバロチンが発売されました。

スタチンの発見は、日本が得意とする微生物創薬の大きな成功例として記憶されています。

そして1995年には国内売上高でトップとなり世界100カ国以上で販売され、ブロックバスターに成長しました。

1991年12月には同じHMG-CoA還元酵素阻害剤のリポバスが登場し、その後リピトールなどストロングスタチンの参入によりスタチン系高脂血症治療薬市場の競合が激しくなりました。

競争環境が激しくなる一方で1997 年には「高脂血症診療ガイドライン」が、2002 年には「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が策定され高脂血症市場は急速に拡大していきました。

日本人の生活習慣の変化等による、糖尿病等の生活習慣病の有病者・予備群の増加を背景に2008年4月から生活習慣病予防のための新しい健診・保健指導として特定健診が始まり高脂血症市場の拡大はさらに加速していきます。

スタチン登場以前では、食事療法やフィブラート系薬剤,コレスチラミンにより総コレステロールで 20%前後の低下率が得られてはいましたが,総死亡は抑制されておらず, コレステロールを低下させることが虚血性心疾患などの動脈硬化性疾患を予防,治療していくうえで本当にメリットがあるのかという議論が長く続いていました。

しかし製薬企業によるスタチンを用いた大規模臨床試験が相次いで報告され、あっという間に世界中で使われるようになりました。

今ではスタチンを主力製品としていた製薬企業の多くがオンコロジー領域に主軸を移しています。

がんによる死亡を防ぐために早期発見・早期治療を掲げ、2018年にはがん対策推進基本計画が閣議決定されました。

がん検診によりスクリーニングが進めば、スタチン同様に潜在的な患者が発掘されることで市場は拡大することでしょう。

PCR検査による陽性者のスクリーニングも同様に、ワクチン接種を推進する大きな追い風と言えるでしょう。

競合製品の存在は市場を奪い合う競争相手としてだけではなく、市場を形成する協力の関係であることがあります。

多くの製品が参入することでそれまで顕在化していなかった市場が短期間で認知されるようになるからです。

通常、医薬品の開発はシーズの探索から臨床試験を経て発売されるまで10年以上かかると言われていますが実際には同じクラスの薬剤が短期間に競合他社から相次いで登場してきます。

多くの大手製薬企業の筆頭株主が同じ機関投資家であることも興味深いのではないでしょうか。