製薬業界に限らず、加速するデジタル顧客エンゲージメント推進のスピードは緩む気配がありません。

これまでMRが担ってきた顧客への情報提供は、情報提供ガイドラインよる規制強化や、顧客との対面営業が困難となったことから、オンラインによるコミニュケーションチャネルとしてITツールの活用にシフトすることは必然と言えます。

では、デジタルによる置き換え戦略は誰にとっても現状を打破するmagic touchとなるでしょうか。

市場が縮小し、顧客の新規獲得が容易ではない現在では、現状の売上を守るために一度獲得した顧客を失わないようにしなければなりません。

そのため、既存顧客へのきめ細やかなフォローが必要になってきます。

ITツールにより顧客の情報を細かく管理・分析することにより受注確度の高いターゲット顧客を導き出すデータドリブンな営業活動の仕組みが構築され、MRにリコメンデーションやサジェスチョンを行うようになりました。

しかし医薬品ビジネスは究極のレッドオーシャンマーケットです。

攻略が容易な受注確度の高い顧客は当然のことながら競合他社のターゲティングでもあります。

成熟期から衰退期にかけて、市場競争は多者間競争から一強型へと変遷します。

つまりレッドオーシャンマーケットでは強者が圧倒的に有利となります。

競合が厳しい市場の中で受注確度の高い顧客から優先的に獲得することを登山の難易度に例えっるなら、世界中から低い山を探してしらみつぶしに登るようなものです。

これは消費財のように薄利多売ビジネスには向いていますが、医薬品ビジネスのようなターゲットマーケティングの場合には向いているとは言えません。

特に新薬の新規採用の際など、攻略困難な顧客であっても何とかして攻略しなければならない、つまり「顧客獲得」だけではなく「顧客攻略」も重要なビジネスだからです。

競合も容易く登れる山は直ぐにコモディティ化してしまい競争力が失われてしまいます。

デジタル顧客エンゲージメントの行き着く先は、既に高いシェアを獲得している強者、あるいはニッチ市場を狙う弱者に二極化するのではと考えています。