マーケティングは時代とともに「製品中心」から「精神的な満足」を求める顧客のニーズに沿って、その主眼を変化させて来ました。

松下電器産業(現パナソニック)創業者である松下幸之助氏の「水道哲学」のように、「良いものを、安く、たくさん作って流通させる」ことが企業成功の鉄則であった、大量生産/大量消費の時代は終わり、「いいものを、安く、たくさん作って流通」させても顧客に買ってもらえるとは限らない時代です。

また機能的価値を高めようとしても多くの分野で一定の機能を超えており、顧客のニーズは既に満たされているという事実もあるかと思います。

とはいえ、依然として「機能的価値」の方が「情緒的価値」よりも圧倒的に重要であることは変わりません。

製造業の本質は製品そのもののにあるからです。

さらに、市場競争が厳しい状況では、良い物を作り、「機能的価値」高めるだけではなく、競合他社の商品やサービスと比較して、「自社商品が優れている所はどこなのか」ということを明確にする差別化がますます重要になってきました。

しかし、さまざまな商品やサービスが溢れている昨今では、「機能的価値」だけで差別化を図ることはかなり難しくなってきました。

技術格差と情報格差が小さくなっており、さらに様々な規制・保護により同一化を避けられない医薬品ビジネスでは、競合に優位性を示す差別化を生み出すことが困難な状況です。

そのため、カスタマーセントリックやカスタマーエクスペリエンスなど、「情緒的価値」に着目したマーケティングが主流となってきました。

「情緒的価値」は、主観的な要因が強く、個々人によって感じ方が違うために定量化や客観性が難しい側面があります。

MA(マーケティングオートメーション)が進歩していますが、この領域ではまだMRによるone to oneマーケティングに一日の長があるのではないでしょうか。