新規市場参入やロンチ後の初動実績はとても重要です。

しかし売上実績を焦るあまりに、顧客に使ってもらえる症例なら何でも良いという姿勢で、新患や切替、追加投与など手当たり次第に処方をさせてしまうと製品のブランディングが薄れ、差別化戦略が無効化されてしまいます。

その結果、特に特徴の無い製品との印象が付いてしまい、初動の勢いを失い、やがて市場から消えてしまいます。

すなわちロンチに失敗し、一つの製品を消滅させてしまうことになります。

過去に武田薬品とMSDから週一回のDPP-4阻害薬が発売されましたが、両社とも既に自社での販売を止めています。

当時、インフォームドチョイスという言葉が学会を中心に流行っており、両社も患者のライフスタイルに合わせてデイリー製剤と週一製剤を患者に選ばせるというプロモーションを行っていました。

まだまだSGLT2阻害薬が浸透しておらず、DPP-4阻害薬が主流でおよそ70%の糖尿病患者が服用するブロックバスター製剤でした。

既に市場内で絶対的なシェアを獲得している強者に市場参入したばかりの、認知すらされていない製品が真っ向から勝負を挑んだわけです。

当然のことながら顧客は従来のデイリー製剤を選択することになります。

なぜ、様々な分析からマーケティング戦略を策定し、セグメント設定、ターゲット設定、ポジショニング設定を行ったはずなのに、いきなり全体市場を同時に狙うような事をしてしまったのでしょうか?

イノベーター理論のベルカーブであれ、ライフスタイルのSカーブであれ、初動は低調でも途中から2字曲線を描いて成長しています。

つまり導入期はランディングのための助走期間、攻略のための地固めの期間、春を待つ我慢の期間です。

ここで我慢しきれず結果を急いではせっかくの戦略が台無しになり、やり直しが効かない状況に陥ります。

一度付いてしまった製品イメージをリブランディングすることは容易ではありません。

戦略の意味をしっかりと考える必要があります。