生成AIの進化をめぐって、「AIに何ができて、人間に何ができるのか」という議論は尽きません。

AIは情報を集められる。しかし判断するのは人間。AIはコードを書ける。しかし設計するのは人間。AIは分析できる。しかし解釈するのは専門家。

確かに今はそうかもしれません。しかし、この境界線を探すこと自体に、あまり意味がなくなってきています。「ここから先は人間にしかできない」と引いた線が、AIの進歩とともに浸食されているからです。

これまで新しい技術を導入するには、まず人を育てる必要がありました。知識を学び、操作を覚え、経験を積み、数年かけて専門家になる。

ところが生成AIは、この順番を変え始めています。

「人間ができるようになってから使う」のではなく、「まずAIにやらせ、人間は使いながら必要な能力を身につける」。

プログラミングが象徴的です。以前なら言語を学ぶところから始めました。今では作りたいものを自然言語で説明すれば、AIがコードを書き、エラーを探し、修正まで支援します。

ここで問題になるのが、AIの進化速度です。

「まず勉強しましょう」「十分理解してから導入しましょう」と準備している間にもAIは進化します。半年後、1年後に使い始めれば、先に始めた人と同じ場所からスタートできるわけではありません。

先に使った人には、試行錯誤という経験が蓄積されています。どこまで任せられるか。どこで疑うべきか。どう指示すればよいか。どの仕事と組み合わせれば価値が生まれるか。

そしてAIがさらに進化すれば、その経験を持つ人は新しい能力をすぐ仕事へ接続できます。

AIの能力向上と、人間側の経験蓄積が掛け合わされ、差は複利的に広がっていく。

だから、「AIを勉強する」だけでは足りません。

まず触る。使う。失敗する。また使う。

理解してから始めるのではなく、始めることで理解する。