私は16歳からバイクに乗り始め、そして還暦を迎える年齢になりました。
長く乗っているからこそ、若い頃とは違います。「まだ大丈夫」と思う一方で、年齢によるリスクを無視して乗り続けるのも違うと思っています。
そんな中、興味深い記事を目にしました。
NEXCO東日本管内では、2026年上半期の交通事故による死亡者23人のうち、7人がバイクだったというものです。
さらに記事では、NEXCO3社が全国47料金所で行った調査で、バイクの利用割合は全体の0.38%だったと紹介されています。
「利用率0.4%なのに、死亡者の約3割がバイク」
こう聞くと、
「やはりバイクは圧倒的に危険だ」
と思いたくなります。
0.4%と30%は、本当に比較できるのか
まず確認すべきなのは「分母」です。
料金所を通過した車両の割合と、死亡者に占める割合は同じ指標ではありません。
走行距離も違います。
走行時間も違います。
季節や曜日による利用状況も違います。
本当にリスクを比較するなら、例えば「走行1億kmあたりの死亡者数」のように、曝露量を揃える必要があります。
数字が大きく違って見えることと、リスクがその倍率で違うことは同じではありません。
「15時台に3件」から「15時台は危険」と言えるか
さらに興味深い記述がありました。
7件の死亡事故のうち3件が、15時20分から15時40分のわずか20分間に発生していたというのです。
確かに気になります。
しかし、
「偏りが見つかった」ことと「危険な時間帯である」ことは必ずしも同じではありません。
その時間に何台のバイクが走っていたのか。
何時間走った後だったのか。
気温はどうだったのか。
事故を起こしたライダーに本当に疲労や眠気があったのか。
そして、この時間帯への集中が別の期間でも再現されるのか。
これらが分からないまま、
「15時は眠くなる」
↓
「3件の事故が起きた」
↓
「15時台は危険だ」
と結論づければ、観察された現象に、もっともらしい物語を付けたことになりかねません。
では、「60歳だから危険」なのか
これは私自身に関係します。
7人の死亡者には、59歳、61歳、67歳、67歳という年齢のライダーも含まれていました。
これを見て、
「高齢ライダーは危険だ」
と結論づけることもできます。
しかし、これも同じ問題を抱えています。
年齢そのものが事故を起こすわけではありません。
加齢によって、
反応速度が変わる。
疲労からの回復が遅くなる。
視覚機能が変化する。
筋力や平衡機能が低下する。
こうした経路を通じてリスクが変化する可能性があります。
一方で、年齢を重ねることはリスクを増やす方向にだけ働くとも限りません。
30年、40年とバイクに乗っていれば、危険を早く察知する経験も蓄積します。
無理な追い越しをしなくなる。
雨なら乗らない。
疲れたら休む。
若い頃ほど速度を出さない。
経験によってリスクを下げる経路もあり得ます。
だとすれば、本当に知りたいことは、
「何歳になったらバイクを降りるべきか」ではありません。
「年齢とともに何が変化し、そのうち何を変えれば安全に乗り続けられるのか」
ではないでしょうか。
データ分析の目的は「怖がらせること」ではない
- 高速道路を使わない。
- 夜間走行を減らす。
- 酷暑の日を避ける。
- 連続走行時間を短くする。
- 車間距離をさらに取る。
- 軽く扱いやすい車両を選ぶ。
こうした条件を一つずつ変えたとき、リスクがどう変化するのか。
ここまで考えて初めて、データは「バイクは危険」という警告から、「どうすればリスクを下げられるか」という意思決定の材料になります。
これはバイクだけの話ではありません。
医療でも、経営でも、AIでも、
- 数字に差がある。
- 特徴的なパターンが見つかった。
- だから原因はこれだ。
という飛躍は頻繁に起こります。
重要なのは、データから何かを見つけることだけではありません。
そのデータから、どこまで言ってよいのか。
そこを区別することだと思います。
16歳からバイクに乗り続けてきたバイクを、
還暦だから降りる。
まだ乗れるから乗る。
その二択ではなく、
「どうすれば、リスクを下げながら乗り続けられるのか」
データが本当に役に立つのは、こういう問いに変換できたときなのかもしれません。
